マギーからの予言染みた忠告の意味は、ルウがリィの元へ戻ってくるのは大変だとかそういうことだったのだろう。以前にルウ本人に以ってして『白い闇』と称された訳だし、シルビとルウは性質も似ており、だから意識の共存が一時的にとはいえ出来た。混じる云々はその辺か。
当然そこまで来れば、もう『一般人』に拘っているとかそういう話ですらなくなって、それ以上にそもそも『人』なのか怪しいという話である。だから『出来うる限り異端性を露見させたくなかった』というのが、『人』に固執していた理由だ。
全員一致で強制的に健康診断を受けさせられ、シェラが作った手料理を片っ端から片付けていくリィの斜め前で溜息を吐く。シルビも相伴に預かり目の前にはスープが置かれていた。

「努力しなけりゃ『一般人』どころか『人』でいられねぇのかなぁ……」
「そんなことは無いだろう。でも異世界のラー一族みたいなものの時点で難しいだろうな」
「あんたそんなに変わってたのか」

レティシアの何気ない一言が刺さる。

「ですがシルビ、あなたのお陰でルウの意識は早く集まったのでしょう？」
「どうだろぉなぁ。俺なんて居なくても変わらなかったと思うぜぇ」

行儀が悪いがスープをグルグルとかき混ぜながら頬杖を突いた。作ってくれたシェラに対して礼儀が無いが、スープが熱かったのもある。
『ジャック』と『サブジェイ』へ会うにあたって、『一般人』然として会って平穏に問題なく生きていけるのだと教えて安心させたかった。その為にはシルビは元が『異常』過ぎたのだ。
ケリーやレティシアよりも死んで生き返っている回数は多いし、リィよりも身体能力や身体維持の為の色々が異常で、シェラの様に異世界からも来ていて、ジャスミンよりも若返っている。ついでに言うとルウのような自分の能力を使うのに制限さえない。
こう見直してみれば自分が一番『異常』である。

「……もう、『ジャック』と『サブジェイ』に会うことだけを目標にするしか無ぇよなぁ」
「それは外さないのだな」

ジャスミンが何気なく言うが、コレだけはシルビも外せない。何せこの一生はその為に生きているのだ。それを外したら何の為に生きているのか分からなくなる。
パンを咀嚼して飲み込んだリィが、少し困ったような顔でシルビを見た。

「悪いな。おれが巻き込んだせいだ」
「誘拐された時に怪我を治してやれなかったんだし、お相子だぁ。それにキングのほうが先に巻き込んでる」
「悪かったな」

もう一度溜息を吐いて、結局スープを飲まずにスプーンを置く。

「もう『ジャック』と『サブジェイ』に会えたら土下座しよう……キングが」

ケリーが噴き出した。