オンタロスの剣
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「……?」
分解炉へ向かって走っている最中、頭へかすかな違和感を覚えた。
また超能力による攻撃かとも思ったが、そんな無機質で攻撃的な感じはしない。例えるなら『×××』を利用した時の頭痛に良く似た、しかし脳を守る為の防衛本能とは違うものであることは確かだ。
痛い訳ではないが不思議な感覚。自分の意識へ重なるようにきたと思うと、いきなり視界が二重にぶれた。
正確にはぶれたというより他の誰かの視界が重なったというべきか。驚きこそすれ声も出さず足も止めなかったのは、それに全く恐怖も害意も感じられなかったからである。
視界は二重になっているが走り続けることに問題は無い。分解炉へ辿り着く頃にはその視界へも慣れていた。
天井の拡声器からは興奮のし過ぎで甲高くさえある老人の声が喚いている。レティシアがゲンナリと途中で男達から奪った機関銃で天井を撃てば、破壊されたのかそれも聞こえなくなった。
「とっとと済ませてここから逃げよう」
「けどよ、外は外でどんぱちやってるみたいだぜ」
リィとレティシアが脱出の算段を話し合っているのを聞きながら、シルビは自分の目を手で押さえて塞いでみる。暗くなるはずの目蓋の裏へは、目を閉じる前に見えていたものが二重にならずに視えていた。
「とうとう俺にも超能力が……阿呆かぁ」
下らない冗談を呟き両目を閉じる。それでもハッキリと見える視界は、リィが床へ置いた死体だけが黒ずんだ色になって映し出されていた。
分解炉へとリィが死体を放り込む。人間一人分の質量はあっけないほど短い時間で分解され、次は脱出艇を探した。
後ろ暗い事を行なっていた施設でも脱出艇は目立つ場所へ設置されており、ダイアナや『サブジェイ』に比べれば玩具の録音機にも等しい感応頭脳が、人数の確認をする。
「三人だ。おれは残ってあいつらを片付ける」
「それなら私も残ります!」
「無茶言うな。相手は超能力を使ってくるんだぞ。残ったところでおまえの戦える場所じゃない」
「あなただってあの指輪がないのに!」
指輪の有無は此処まで来るとあまり意味の無いものなのではと思ったが黙っていた。シルビだって腕輪やウォレットチェーンが奪われたら困る。
シェラを何とか諦めさせて、リィが脱出艇の扉の向こうへ見えなくなった。シルビの視界はまだ二重に映っていて、だんだんと自分の視界ではないほうが明瞭になってきている。
それが“誰の視界”なのかを悟って、シルビは脱出艇の中の椅子へと腰を降ろした。
「人を勝手に臨時避難容器にしねぇで欲しいなぁ。今はいいけどよぉ」
分解炉へ向かって走っている最中、頭へかすかな違和感を覚えた。
また超能力による攻撃かとも思ったが、そんな無機質で攻撃的な感じはしない。例えるなら『×××』を利用した時の頭痛に良く似た、しかし脳を守る為の防衛本能とは違うものであることは確かだ。
痛い訳ではないが不思議な感覚。自分の意識へ重なるようにきたと思うと、いきなり視界が二重にぶれた。
正確にはぶれたというより他の誰かの視界が重なったというべきか。驚きこそすれ声も出さず足も止めなかったのは、それに全く恐怖も害意も感じられなかったからである。
視界は二重になっているが走り続けることに問題は無い。分解炉へ辿り着く頃にはその視界へも慣れていた。
天井の拡声器からは興奮のし過ぎで甲高くさえある老人の声が喚いている。レティシアがゲンナリと途中で男達から奪った機関銃で天井を撃てば、破壊されたのかそれも聞こえなくなった。
「とっとと済ませてここから逃げよう」
「けどよ、外は外でどんぱちやってるみたいだぜ」
リィとレティシアが脱出の算段を話し合っているのを聞きながら、シルビは自分の目を手で押さえて塞いでみる。暗くなるはずの目蓋の裏へは、目を閉じる前に見えていたものが二重にならずに視えていた。
「とうとう俺にも超能力が……阿呆かぁ」
下らない冗談を呟き両目を閉じる。それでもハッキリと見える視界は、リィが床へ置いた死体だけが黒ずんだ色になって映し出されていた。
分解炉へとリィが死体を放り込む。人間一人分の質量はあっけないほど短い時間で分解され、次は脱出艇を探した。
後ろ暗い事を行なっていた施設でも脱出艇は目立つ場所へ設置されており、ダイアナや『サブジェイ』に比べれば玩具の録音機にも等しい感応頭脳が、人数の確認をする。
「三人だ。おれは残ってあいつらを片付ける」
「それなら私も残ります!」
「無茶言うな。相手は超能力を使ってくるんだぞ。残ったところでおまえの戦える場所じゃない」
「あなただってあの指輪がないのに!」
指輪の有無は此処まで来るとあまり意味の無いものなのではと思ったが黙っていた。シルビだって腕輪やウォレットチェーンが奪われたら困る。
シェラを何とか諦めさせて、リィが脱出艇の扉の向こうへ見えなくなった。シルビの視界はまだ二重に映っていて、だんだんと自分の視界ではないほうが明瞭になってきている。
それが“誰の視界”なのかを悟って、シルビは脱出艇の中の椅子へと腰を降ろした。
「人を勝手に臨時避難容器にしねぇで欲しいなぁ。今はいいけどよぉ」