オンタロスの剣
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「僕に相談なんて珍しいと思ったら……君もやっぱり学生なんだね」
「……メンタル弱ぇんだよ」
寮長という役職故に他の生徒よりも僅かに広いハンスの部屋で、シルビはうな垂れて借りたクッションを抱える。落ち込んでいる理由のうちに、他に相談出来そうなほど親しい相手が居なかったのも混じっているが、ハンスはおそらく気付かないだろう。
「で、約束を破ってしまって、その約束をした相手にはばれていないんだけれど、どうしようか困っているんだっけ?」
「……約束っていうか、俺が勝手にしていた決意だけど」
ケリーが巻き込んだせいで誘拐されて、自分で決めていた制限を破って帰ってきて早数日。リィとシェラに謝ろうと思いながらも思考がまとまらず、仕方無しに考え続けて煮詰まって、シルビが相談した相手はハンスだった。
この大学惑星で一番付き合いが長いし、シルビの入寮当初からシルビのことを知っている相手で、尚且つシルビの『異常性』も少なからず知っている。だというのにこちらの意を汲んで深く踏み込む真似もしてこない。シルビが考える『一般人』としては理想系な相手だ。
ハンスはシルビが色々な部分を暈かしたり故意に省いたりした説明を丁寧に聞いて、それからやんわりと腕組みをする。
「相手の為になると思ってシルビはしていたんだろう? なら僕は今までその決意を守り続けていた事を、『その人』は咎めたりしないと思うな」
「……でも」
「むしろ、その決意を破ってでもやらなくちゃいけないことがあったとして、シルビがそれをやったって事を、『その人』は褒めてくれるとも思うよ。だってシルビ。君が『その人の為に』って決意をするような人だもの。『その人』はきっとシルビのことを分かってくれているはずだ」
いつだったか、『善人の傍には善人が集まる』という言葉を聞いたことを思い出す。ハンスは善人だからそう思えるんだと言いそうになって、喉でその言葉を留めた。
言ったらそれはただの皮肉でハンスを不快にさせるだけだ。相談しておいて相手を不快にさせるなど言語道断である。
自分は『善人ではない』と理解しているからこそ、そうであればいいなと思うものの確証は持てない。
シルビも『彼等』も決して善人とは言い切れない『海賊』だった。それでも『もう一度会いたい』と願うほどには、シルビにとって大切な人だけれど。
少なくとも、恩人ではある。
「……ハンス寮長は、俺を善人だと思ってるよなぁ」
「君は自分が善人だとは思わない?」
「うん」
「でも普通、善人は自分のことを善人だと思ったりしないよ」
「……メンタル弱ぇんだよ」
寮長という役職故に他の生徒よりも僅かに広いハンスの部屋で、シルビはうな垂れて借りたクッションを抱える。落ち込んでいる理由のうちに、他に相談出来そうなほど親しい相手が居なかったのも混じっているが、ハンスはおそらく気付かないだろう。
「で、約束を破ってしまって、その約束をした相手にはばれていないんだけれど、どうしようか困っているんだっけ?」
「……約束っていうか、俺が勝手にしていた決意だけど」
ケリーが巻き込んだせいで誘拐されて、自分で決めていた制限を破って帰ってきて早数日。リィとシェラに謝ろうと思いながらも思考がまとまらず、仕方無しに考え続けて煮詰まって、シルビが相談した相手はハンスだった。
この大学惑星で一番付き合いが長いし、シルビの入寮当初からシルビのことを知っている相手で、尚且つシルビの『異常性』も少なからず知っている。だというのにこちらの意を汲んで深く踏み込む真似もしてこない。シルビが考える『一般人』としては理想系な相手だ。
ハンスはシルビが色々な部分を暈かしたり故意に省いたりした説明を丁寧に聞いて、それからやんわりと腕組みをする。
「相手の為になると思ってシルビはしていたんだろう? なら僕は今までその決意を守り続けていた事を、『その人』は咎めたりしないと思うな」
「……でも」
「むしろ、その決意を破ってでもやらなくちゃいけないことがあったとして、シルビがそれをやったって事を、『その人』は褒めてくれるとも思うよ。だってシルビ。君が『その人の為に』って決意をするような人だもの。『その人』はきっとシルビのことを分かってくれているはずだ」
いつだったか、『善人の傍には善人が集まる』という言葉を聞いたことを思い出す。ハンスは善人だからそう思えるんだと言いそうになって、喉でその言葉を留めた。
言ったらそれはただの皮肉でハンスを不快にさせるだけだ。相談しておいて相手を不快にさせるなど言語道断である。
自分は『善人ではない』と理解しているからこそ、そうであればいいなと思うものの確証は持てない。
シルビも『彼等』も決して善人とは言い切れない『海賊』だった。それでも『もう一度会いたい』と願うほどには、シルビにとって大切な人だけれど。
少なくとも、恩人ではある。
「……ハンス寮長は、俺を善人だと思ってるよなぁ」
「君は自分が善人だとは思わない?」
「うん」
「でも普通、善人は自分のことを善人だと思ったりしないよ」