パンドラの檻
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「なんでお前そんなに落ち込んでんの?」
「……俺は、この十六年間『一般人』であり続けてたんだよぉ」
「それは災難だったな」
どうでも良さ気に言ってヴァンツァーが捕獲へ向かってきた警備員を切り伏せる。怯んだもう一人に今度はレティシアが鋼索鋸でバラバラに切断した。手際が良過ぎてシルビにはやる事がないのが、果たして良いことなのか悪いことなのか。
通路を逆走する形で走っていて合流した二人は、少し見ない間で随分と落ち込んでいるシルビを不思議がっていた。それに答えて溜め息を吐く。
「だいたいよ、お前なんで『一般人』のフリしてたんだ?」
「それはオレも聞きたいな」
「恩人、が、海賊だったんだけど、たまに俺を見る目が申し訳無さそうだったから『普通に暮らす事も出来るんだから気にするな』って見せてやりたかったんだぁ」
「……それだけか?」
レティシアが切断して飛んできた腕をかわしたヴァンツァーが、目を丸くして振り返る。そんなに驚くことだっただろうかと不思議に思ったが、彼等には恩人的な存在がいるのかどうか知らないので何とも言えなかった。
少なくともシルビにとっては『それだけ』でも充分理由になるのだ。
「でもそれだけであんなに『一般人』らしくしてられるってのはスゲェな」
「お褒め預かり光栄至極。でもそれも今日で終わりだぁ。あぁあああああ……」
話している間も三人の手は着実に死体を増やし続けている。とは言え返り血を浴びる事も無ければ怪我をすることも無い。
シルビは二人の実力を知らなかったものの『暗殺者』だった事は分かっていたのであまり驚かなかったが、二人はシルビの実力に少なからず驚いているようだった。だがそれを見て尚更シルビは悔しく思う。
「さよなら『ジャック』に『サブジェイ』……。俺はもう顔向け出来ねぇ」
「まだやり直しが利くだろう? そんなに落ち込むなって」
「ありがとうレティシア……でも頼むからコッチに切断した腕とか飛ばさねぇでくれぇ」
「わがままだなあ!」
それでも一応は切断された部位がシルビの居る方へ飛んでくることはなくなった。
不意に走っていた通路が盛大に揺れる。強い衝撃を受けた事によるものだと思われるそれに、三人の前方にあった扉が開放されるのを見て何が起こったのかを理解した。
迎えが来たのだ。
通信室を探して飛び込んだレティシアが《パラス・アテナ》へと通信を繋げる。
「船の姐さん、聞こえるかい?」
「ええ。感度良好よ。連絡してくれてよかったわ。こちらから掛けようと思っていたところよ」
「呑気なもんだな」
かく言うレティシアだって呑気だと思った。
「……俺は、この十六年間『一般人』であり続けてたんだよぉ」
「それは災難だったな」
どうでも良さ気に言ってヴァンツァーが捕獲へ向かってきた警備員を切り伏せる。怯んだもう一人に今度はレティシアが鋼索鋸でバラバラに切断した。手際が良過ぎてシルビにはやる事がないのが、果たして良いことなのか悪いことなのか。
通路を逆走する形で走っていて合流した二人は、少し見ない間で随分と落ち込んでいるシルビを不思議がっていた。それに答えて溜め息を吐く。
「だいたいよ、お前なんで『一般人』のフリしてたんだ?」
「それはオレも聞きたいな」
「恩人、が、海賊だったんだけど、たまに俺を見る目が申し訳無さそうだったから『普通に暮らす事も出来るんだから気にするな』って見せてやりたかったんだぁ」
「……それだけか?」
レティシアが切断して飛んできた腕をかわしたヴァンツァーが、目を丸くして振り返る。そんなに驚くことだっただろうかと不思議に思ったが、彼等には恩人的な存在がいるのかどうか知らないので何とも言えなかった。
少なくともシルビにとっては『それだけ』でも充分理由になるのだ。
「でもそれだけであんなに『一般人』らしくしてられるってのはスゲェな」
「お褒め預かり光栄至極。でもそれも今日で終わりだぁ。あぁあああああ……」
話している間も三人の手は着実に死体を増やし続けている。とは言え返り血を浴びる事も無ければ怪我をすることも無い。
シルビは二人の実力を知らなかったものの『暗殺者』だった事は分かっていたのであまり驚かなかったが、二人はシルビの実力に少なからず驚いているようだった。だがそれを見て尚更シルビは悔しく思う。
「さよなら『ジャック』に『サブジェイ』……。俺はもう顔向け出来ねぇ」
「まだやり直しが利くだろう? そんなに落ち込むなって」
「ありがとうレティシア……でも頼むからコッチに切断した腕とか飛ばさねぇでくれぇ」
「わがままだなあ!」
それでも一応は切断された部位がシルビの居る方へ飛んでくることはなくなった。
不意に走っていた通路が盛大に揺れる。強い衝撃を受けた事によるものだと思われるそれに、三人の前方にあった扉が開放されるのを見て何が起こったのかを理解した。
迎えが来たのだ。
通信室を探して飛び込んだレティシアが《パラス・アテナ》へと通信を繋げる。
「船の姐さん、聞こえるかい?」
「ええ。感度良好よ。連絡してくれてよかったわ。こちらから掛けようと思っていたところよ」
「呑気なもんだな」
かく言うレティシアだって呑気だと思った。