パンドラの檻
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一度死んでおきながら、再び生を得たと老人は言う。
「老いと死は人類にとって最後の脅威じゃった。その災難を克服したというのならば、おまえたちだけにそんな奇跡が許されてよいわけがない」
その後に続いた自分にこそという言葉はともかく、シルビは腕組みをしながら老人を見つめ内心首を傾げる。
シルビは『死にたい』と思ったこともあるし『死んではいけない』と思ってもいるが、『死』を怖いと思ったことは無かった。寿命での大往生もしたことがあるが、老人になってもそれに怯えたことは無い。
自分が人類代表とは言わないが、同時に目の前の老人も人類代表という訳ではなく、よって『人類にとって』という言葉には異論を覚える。老いる事の何が怖いか。
それにシルビにとって、何度も生まれ変わることは奇跡ではなかった。
聞き出すことが難しいと悟ったのか、老人の意識は眼の前にある四人の身体へと移される。
部屋の扉が開いて屈強な男達が入ってきた。無言でケリー以外の三人を取り囲んで部屋の外へと促すのに、ケリーが軽く手を上げて声を掛ける。
「じゃあな」
「ああ、こっちはこっちで適当にやる」
「その後はどうする?」
「まあ、なるようになるだろうさ」
「……キング?」
促されて部屋を出る寸前、思わずケリーを見返した。あまり親しいといえる関係ではないだろうが、他の二人に比べればまだ付き合いは長い。だがその付き合いの短い二人もシルビと同じ様に、ケリーの異変に気付いているようだった。
男達が無言で促してくる。再び歩き出すとレティシアが舌打ちした。
「長引かせたくねえ。さっさと片付けるぜ」
レティシアを挟んで向こう側では、ヴァンツァーが静かにレティシアを見下ろしている。
シルビは二人の技量を詳しくは知らない。ケリーと同じ様にリィから少し聞いているだけで、二人の実力を目の前で見たことは無かったし、見たいと思ったことも無かった。
二人は出会ってから今までの間だけで、むしろ初対面の時から、シルビが普通ではない事を見抜き同類として扱っている。レティシアなどそれでわざわざ『一般人のフリをして長い』シルビへ相談してきた事もあったのだから、互いに何も言わないうちに知っていた。
ただ、レティシアとヴァンツァーの二人と、シルビの戦い方は恐らく違う。文化も経験も実力も一緒ではないと理解していながら、それでもレティシアはシルビへも『片付けるぜ』と言った。
シルビとヴァンツァーは無言でレティシアの横顔を見つめ、それからちょっとだけ笑う。
「オレも早く帰りたいな。授業に遅れるのは困る」
「同感」
「二人とも学生の鑑だねえ」
「老いと死は人類にとって最後の脅威じゃった。その災難を克服したというのならば、おまえたちだけにそんな奇跡が許されてよいわけがない」
その後に続いた自分にこそという言葉はともかく、シルビは腕組みをしながら老人を見つめ内心首を傾げる。
シルビは『死にたい』と思ったこともあるし『死んではいけない』と思ってもいるが、『死』を怖いと思ったことは無かった。寿命での大往生もしたことがあるが、老人になってもそれに怯えたことは無い。
自分が人類代表とは言わないが、同時に目の前の老人も人類代表という訳ではなく、よって『人類にとって』という言葉には異論を覚える。老いる事の何が怖いか。
それにシルビにとって、何度も生まれ変わることは奇跡ではなかった。
聞き出すことが難しいと悟ったのか、老人の意識は眼の前にある四人の身体へと移される。
部屋の扉が開いて屈強な男達が入ってきた。無言でケリー以外の三人を取り囲んで部屋の外へと促すのに、ケリーが軽く手を上げて声を掛ける。
「じゃあな」
「ああ、こっちはこっちで適当にやる」
「その後はどうする?」
「まあ、なるようになるだろうさ」
「……キング?」
促されて部屋を出る寸前、思わずケリーを見返した。あまり親しいといえる関係ではないだろうが、他の二人に比べればまだ付き合いは長い。だがその付き合いの短い二人もシルビと同じ様に、ケリーの異変に気付いているようだった。
男達が無言で促してくる。再び歩き出すとレティシアが舌打ちした。
「長引かせたくねえ。さっさと片付けるぜ」
レティシアを挟んで向こう側では、ヴァンツァーが静かにレティシアを見下ろしている。
シルビは二人の技量を詳しくは知らない。ケリーと同じ様にリィから少し聞いているだけで、二人の実力を目の前で見たことは無かったし、見たいと思ったことも無かった。
二人は出会ってから今までの間だけで、むしろ初対面の時から、シルビが普通ではない事を見抜き同類として扱っている。レティシアなどそれでわざわざ『一般人のフリをして長い』シルビへ相談してきた事もあったのだから、互いに何も言わないうちに知っていた。
ただ、レティシアとヴァンツァーの二人と、シルビの戦い方は恐らく違う。文化も経験も実力も一緒ではないと理解していながら、それでもレティシアはシルビへも『片付けるぜ』と言った。
シルビとヴァンツァーは無言でレティシアの横顔を見つめ、それからちょっとだけ笑う。
「オレも早く帰りたいな。授業に遅れるのは困る」
「同感」
「二人とも学生の鑑だねえ」