パンドラの檻
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「今のオレ達を見て死体だとは誰も言わんだろうな。――一度死んだのは確かだとしても」
「何じゃと? 今、何と言った?」
老人がヴァンツァーの言葉へ目を剥いた。その熱心さを違うものへ向けろとシルビは思わなくも無い。
「では、おまえたちの実年齢は何歳じゃ?」
「オレは自分の歳なんざ知らねえよ」
「オレも知らん」
「俺は途中で数えるのを止めたなぁ」
大体にしてシルビが死ぬ時の年齢は、その人生によって違う。
「では、死んだ時はどのくらいの年齢だったのじゃ?」
「どのくらいって言われてもなあ?」
「いわゆる成人男性だったのは間違いない。おかげで身長がだいぶ低くなった」
「え、二人とももっと伸びんのかぁ?」
驚いて二人を、特にヴァンツァーを見た。ヴァンツァーは既にシルビよりも背が高い。
シルビが成人して身長が止まるのが今までの人生で一貫して百七十七センチなので、最低それまでは伸びると確定しているとしても、ヴァンツァーへ勝てると思えなかった。
「おまえは伸びないのかよ」
「伸びて十センチぐらい……だと思う」
「へえ。こいつは十五センチぐらい縮んでるんじゃねぇ? これからまだ伸びるって事だよな」
「おまえはあまり変わらないようだがな」
「そうでもないぜ。死ぬ前の身体だったらさすがに高校生っていうのはきつかっただろうよ」
ということは、レティシアは多分シルビとあまり変わらないかシルビより低いくらいだろう。現段階でもレティシアとシルビは数センチしか変わらない。
「わしが知りたいのはおまえたちのその身体が――以前の身体がどこにあるかじゃ」
目を丸くする二人とは裏腹に、シルビは目を細めて老人を見た。身長の話という本題から逸れた話で盛り上がっていたが、そういえばこの老人が求めているのはおそらく『死者蘇生の方法』である。
シルビ達が本当に蘇生したのか、更には蘇生するにあたって元の身体が何か普通とは違う要素を持ってはいなかったか。そういうことを調べる為に以前の身体が欲しいのだろう。
多少腐っていても燃やされて灰になっていても構わないと言う老人に、ヴァンツァーとレティシアは老人の思考が理解出来ないとばかりに肩をすくめた。
「教えてやってもいいけどさ。オレたちより先に来たのっぽの兄さんがいるだろう」
「確かにおるが、それがどうした?」
「どうしたじゃねえよ。会わせてくれっての。そのくらいの融通を利かせてくれてもいいだろう。何しろオレ達はこの世で四人しかいない『いっぺん死んだ組』なんだからよ」
ケリーには会いたかったのでレティシアの交渉はタイミングが良かったが、シルビまで『いっぺん死んだ組』などという括りには入れないで欲しかった。しかし此処へ呼ばれている以上、ケリーもそう考えているのだろう。
「何じゃと? 今、何と言った?」
老人がヴァンツァーの言葉へ目を剥いた。その熱心さを違うものへ向けろとシルビは思わなくも無い。
「では、おまえたちの実年齢は何歳じゃ?」
「オレは自分の歳なんざ知らねえよ」
「オレも知らん」
「俺は途中で数えるのを止めたなぁ」
大体にしてシルビが死ぬ時の年齢は、その人生によって違う。
「では、死んだ時はどのくらいの年齢だったのじゃ?」
「どのくらいって言われてもなあ?」
「いわゆる成人男性だったのは間違いない。おかげで身長がだいぶ低くなった」
「え、二人とももっと伸びんのかぁ?」
驚いて二人を、特にヴァンツァーを見た。ヴァンツァーは既にシルビよりも背が高い。
シルビが成人して身長が止まるのが今までの人生で一貫して百七十七センチなので、最低それまでは伸びると確定しているとしても、ヴァンツァーへ勝てると思えなかった。
「おまえは伸びないのかよ」
「伸びて十センチぐらい……だと思う」
「へえ。こいつは十五センチぐらい縮んでるんじゃねぇ? これからまだ伸びるって事だよな」
「おまえはあまり変わらないようだがな」
「そうでもないぜ。死ぬ前の身体だったらさすがに高校生っていうのはきつかっただろうよ」
ということは、レティシアは多分シルビとあまり変わらないかシルビより低いくらいだろう。現段階でもレティシアとシルビは数センチしか変わらない。
「わしが知りたいのはおまえたちのその身体が――以前の身体がどこにあるかじゃ」
目を丸くする二人とは裏腹に、シルビは目を細めて老人を見た。身長の話という本題から逸れた話で盛り上がっていたが、そういえばこの老人が求めているのはおそらく『死者蘇生の方法』である。
シルビ達が本当に蘇生したのか、更には蘇生するにあたって元の身体が何か普通とは違う要素を持ってはいなかったか。そういうことを調べる為に以前の身体が欲しいのだろう。
多少腐っていても燃やされて灰になっていても構わないと言う老人に、ヴァンツァーとレティシアは老人の思考が理解出来ないとばかりに肩をすくめた。
「教えてやってもいいけどさ。オレたちより先に来たのっぽの兄さんがいるだろう」
「確かにおるが、それがどうした?」
「どうしたじゃねえよ。会わせてくれっての。そのくらいの融通を利かせてくれてもいいだろう。何しろオレ達はこの世で四人しかいない『いっぺん死んだ組』なんだからよ」
ケリーには会いたかったのでレティシアの交渉はタイミングが良かったが、シルビまで『いっぺん死んだ組』などという括りには入れないで欲しかった。しかし此処へ呼ばれている以上、ケリーもそう考えているのだろう。