車で宇宙港へ行きそこで送迎船へ乗り換え、更に宇宙空間で三十万トン級の大型船へと乗り移った。船を航行させるだけの必要最低限しか乗っていないらしいその船内で、出迎えてきた医療器械に採血をされる。
採られたって困るものでもないので素直に腕を出して採血を済ませると、シルビを連れて来た男達へ囲まれて船室へと案内された。
その船室で出会った二人に、シルビが何ともいえない顔をしたのは仕方が無い。ヴァンツァーとレティシアも、憮然としているか苦笑しているだけだった。
この三人の共通点は、シルビは微妙に違うが一つだけだろう。となるとシルビを含めてこの三人を誘拐『させた』人物にも、一人しか心当たりが無い。
ケリーだ。
この場合人質としてでもジェームズが誘拐されなくて良かったと安堵するべきなのか、面倒臭い事に巻き込みやがってと怒るべきなのか判断が難しい。それとも息子や孫へ目を付けさせない為のスケープゴートか。それが理由ならばまぁ、シルビは許せる。
とりあえずは腕輪とウォレットチェーンだけは、没収されないように気を付けなければと結論を出して、目的地へ着くまで七時間後。暇つぶしになるような本やゲーム機といった娯楽くらい置いておけよと思う。
三人揃って無言のまま船から降ろされ、移動している先はどうも宇宙航行をする者の憩いの場であるオアシスの内部のようだった。シルビが『イブリス』だった頃は『ガーディアン』と呼ばれていた宇宙要塞も、今となってこうも居住性を重視した造りに変わっているのかと思うと、世の中は平和だと思う。
そのオアシスで行なわれている事は、決して平和でも何でもないが。

「特殊軍兵士ではないらしいが、何者じゃ？」

連れて来られた円筒形の部屋の、強化硝子の向こうで車椅子へ座っている老人に、シルビは見覚えがない。ということは『海賊』ではないのだろう。
レティシアとヴァンツァーがとぼけて答えてみせるが、老人はそれをあまり気にせず自分の知っていることへ照らし合わせて考えているようだった。
『西ウィノア特殊軍』とか『東ウィノア軍兵士』とか、シルビが『イブリス』であった頃には既に無くなっていたし、惑星ウィノア自体崩壊していて殆ど噂の様にしか聞いていない。
そんな昔の話を持ち出す老人は、ニンマリと笑う。

「おまえたちはとっくに死んでおる、いわば生きた死体のようなものじゃと聞いたが、本当かな？」

話が早いと思ったのは、果たしてシルビだけかそれとも三人か。