パンドラの檻
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早朝、まだ起きてきた生徒の数も少ない寮で朝食を摂った後、シルビは鞄を提げて寮を出た。頭の中では昨日リィに聞いた話がぐるぐると回っていて、正直機嫌は良好とは言えない。
普通に平凡に平穏に。そうして生きていることを『ジャック』と『サブジェイ』へ伝えることで、かつて『イブリス』として迷惑を掛けていたシルビはやっと二人への感謝を示せると思っている。
無論二人だけではなく、生きていればもうだいぶ老人となってしまったであろう他の船員達へも、自分は平気だからと、そしてあの一緒に航宙した時間が楽しかったのだと伝えたい。そうしてやっとシルビは唐突に死んでしまった事を許される気がするのだ。
しかし最近になって、それでいいのかとも思う。リィ達に会ってキングと宰妃へ再会して、彼等の異質さを見せられて、自分も異質である事を知られて。
その一線を踏み越えてリィ達の側へ立ったら、二人はシルビに呆れやしないだろうかと不安になる。
「……だから巻き込まれるのは御免被りてぇ」
体格のいい黒ずくめの男達へ取り囲まれ、大人しくしていろという発言と共に銃口を向けられている時点で、既に呆れられているかもしれないが。
向けられた銃口へ怯える事も無いシルビに男達は動揺を隠しきれていなかったが、シルビが抵抗しないことを悟ると銃に怯えていると勘違いしたのか強気になってシルビへ歩けと促す。それにも無抵抗で従いながら、シルビはやっと自分の状況を把握した。
狙われたのはジェームズではなく、何故かシルビだったという話である。
そう把握しておいて何だが、シルビは更に混乱した。自分が拉致される理由が全く分からなかったのである。
拉致される原因自体はおそらくケリーだろう。しかしそこから何故自分まで拉致される破目になっているのかが謎だ。
シルビがかつて『イブリス』であり生き返ったことなどケリー達を除いて誰も居ない。シルビが『やらない』とはいえ『死者蘇生能力』を持っていることとなるとケリー達ですら知らないのだ。
となると怪しい理由は前者の『生き返った』という部分であり、怪しい人物は現在行方不明のケリーである。
「ねぇ、俺以外にも誰か誘拐してるの?」
わざと子供らしい口調で男達へ尋ねた。男達は表面的には何も反応を示さなかったが、シルビだってただの子供ではない。
用意していたらしい車へと乗せられ、走り出した車の中でシルビは腕輪とウォレットチェーンの存在を隠す為に指を鳴らす。
今日は模擬演習だったのになと、何も見えない窓を眺めた。
普通に平凡に平穏に。そうして生きていることを『ジャック』と『サブジェイ』へ伝えることで、かつて『イブリス』として迷惑を掛けていたシルビはやっと二人への感謝を示せると思っている。
無論二人だけではなく、生きていればもうだいぶ老人となってしまったであろう他の船員達へも、自分は平気だからと、そしてあの一緒に航宙した時間が楽しかったのだと伝えたい。そうしてやっとシルビは唐突に死んでしまった事を許される気がするのだ。
しかし最近になって、それでいいのかとも思う。リィ達に会ってキングと宰妃へ再会して、彼等の異質さを見せられて、自分も異質である事を知られて。
その一線を踏み越えてリィ達の側へ立ったら、二人はシルビに呆れやしないだろうかと不安になる。
「……だから巻き込まれるのは御免被りてぇ」
体格のいい黒ずくめの男達へ取り囲まれ、大人しくしていろという発言と共に銃口を向けられている時点で、既に呆れられているかもしれないが。
向けられた銃口へ怯える事も無いシルビに男達は動揺を隠しきれていなかったが、シルビが抵抗しないことを悟ると銃に怯えていると勘違いしたのか強気になってシルビへ歩けと促す。それにも無抵抗で従いながら、シルビはやっと自分の状況を把握した。
狙われたのはジェームズではなく、何故かシルビだったという話である。
そう把握しておいて何だが、シルビは更に混乱した。自分が拉致される理由が全く分からなかったのである。
拉致される原因自体はおそらくケリーだろう。しかしそこから何故自分まで拉致される破目になっているのかが謎だ。
シルビがかつて『イブリス』であり生き返ったことなどケリー達を除いて誰も居ない。シルビが『やらない』とはいえ『死者蘇生能力』を持っていることとなるとケリー達ですら知らないのだ。
となると怪しい理由は前者の『生き返った』という部分であり、怪しい人物は現在行方不明のケリーである。
「ねぇ、俺以外にも誰か誘拐してるの?」
わざと子供らしい口調で男達へ尋ねた。男達は表面的には何も反応を示さなかったが、シルビだってただの子供ではない。
用意していたらしい車へと乗せられ、走り出した車の中でシルビは腕輪とウォレットチェーンの存在を隠す為に指を鳴らす。
今日は模擬演習だったのになと、何も見えない窓を眺めた。