ヴェロニカの嵐
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三回目の、シルビが集めた情報やヴェロニカ教の最高指導者、果てには当の誘拐犯まで召喚しての審議は、原告の訴えを棄却というかたちで終焉を向かえた。
その審議の最中ではシルビが考えたのと同じ事を、リィがもっと具体的に発言したのでチャックの父親が名誉毀損だと激怒する場面もあったが、おそらく名誉毀損ではなく事実だろう。シルビの携帯端末の中には、一応そのチャックの父親曰く『事実無根』の『教義上食べてはいけないものを食べている』場面を映した静止画もあったのだが、結局出さなかった。
出したところで、父親よりチャックが打ちひしがれてしまう事が見ていて分かったからだ。
あの父親は利己的な性質の持ち主なのだろう。場合によっては臨機応変ともとれなくも無いが、その性質は運良く息子へは受け継がれなかった。
だからチャックはあんなに苦しんでいる訳だが、その苦しみに気付けない父親は父親失格だろう。
「だいたい、『父親』って嫌いなんだよなぁ」
「そうなの?」
「……最初の父親がいい奴じゃなかったから、それ以来『父親』にいい印象が無ぇんだよ。認識の仕方の問題だからあまり気にしねぇけど」
「君のお父さんなら、優しそうな人って感じがするのにね」
「最初以外は一応……でも無ぇなぁ。大体捨てられたり俺が若いうちに逝去したりするから、あんまり記憶に無ぇ?」
「今のお父さんは?」
「今の両親は病弱だから少し心配かなぁ。マギー達がせっかくだからと世話を焼いてくれてるけど、あいつ等も普通じゃねぇから」
宇宙港から船が飛び立つ光を眺める。
「そういえばあのお姉さん、何者なのか聞いてもいいかな」
「本人達は『番人』って言うけど、『管理者』って言ったほうがいい気がする。俺の古い知り合いで、まぁ……人じゃねぇんだろうけど正体も知らねぇ」
「なのに付き合ってるの?」
「互助関係? 圧倒的に俺が助けられてる事のほうが多いし、迷惑ばっかり掛けてるけど。……それでも、リズとは少なくとも目的が一緒だから」
隣に立っていたルウが、ふうんと興味の無さそうな相槌を打った。
「僕が言うのもアレだけど、シルビが目指す『会いたい人に会うまでは一般人』っていうのも、彼女達と一緒に居る時点で難しいんじゃない?」
「分かってる。分かってるけど……『ジャック』と『サブジェイ』には俺がちゃんと普通に生きられているって証明してぇんだよ」
「いいんじゃない?」
シルビがルウを振り向けば、ルウは青い目を細めて微笑んでいる。
「でも、シルビはきっと難しく考えすぎだとも思う。シルビの葛藤は分かるけどね」
窓の外で何隻目になるか分からない宇宙船が飛び立っていく。目的の船が飛び立つのは既に確認した。だから後はルウに任せればいい。
「手出しはしないでね」
「俺はルウを止め『られない』。一般人だからなぁ」
「嘘つき」
その審議の最中ではシルビが考えたのと同じ事を、リィがもっと具体的に発言したのでチャックの父親が名誉毀損だと激怒する場面もあったが、おそらく名誉毀損ではなく事実だろう。シルビの携帯端末の中には、一応そのチャックの父親曰く『事実無根』の『教義上食べてはいけないものを食べている』場面を映した静止画もあったのだが、結局出さなかった。
出したところで、父親よりチャックが打ちひしがれてしまう事が見ていて分かったからだ。
あの父親は利己的な性質の持ち主なのだろう。場合によっては臨機応変ともとれなくも無いが、その性質は運良く息子へは受け継がれなかった。
だからチャックはあんなに苦しんでいる訳だが、その苦しみに気付けない父親は父親失格だろう。
「だいたい、『父親』って嫌いなんだよなぁ」
「そうなの?」
「……最初の父親がいい奴じゃなかったから、それ以来『父親』にいい印象が無ぇんだよ。認識の仕方の問題だからあまり気にしねぇけど」
「君のお父さんなら、優しそうな人って感じがするのにね」
「最初以外は一応……でも無ぇなぁ。大体捨てられたり俺が若いうちに逝去したりするから、あんまり記憶に無ぇ?」
「今のお父さんは?」
「今の両親は病弱だから少し心配かなぁ。マギー達がせっかくだからと世話を焼いてくれてるけど、あいつ等も普通じゃねぇから」
宇宙港から船が飛び立つ光を眺める。
「そういえばあのお姉さん、何者なのか聞いてもいいかな」
「本人達は『番人』って言うけど、『管理者』って言ったほうがいい気がする。俺の古い知り合いで、まぁ……人じゃねぇんだろうけど正体も知らねぇ」
「なのに付き合ってるの?」
「互助関係? 圧倒的に俺が助けられてる事のほうが多いし、迷惑ばっかり掛けてるけど。……それでも、リズとは少なくとも目的が一緒だから」
隣に立っていたルウが、ふうんと興味の無さそうな相槌を打った。
「僕が言うのもアレだけど、シルビが目指す『会いたい人に会うまでは一般人』っていうのも、彼女達と一緒に居る時点で難しいんじゃない?」
「分かってる。分かってるけど……『ジャック』と『サブジェイ』には俺がちゃんと普通に生きられているって証明してぇんだよ」
「いいんじゃない?」
シルビがルウを振り向けば、ルウは青い目を細めて微笑んでいる。
「でも、シルビはきっと難しく考えすぎだとも思う。シルビの葛藤は分かるけどね」
窓の外で何隻目になるか分からない宇宙船が飛び立っていく。目的の船が飛び立つのは既に確認した。だから後はルウに任せればいい。
「手出しはしないでね」
「俺はルウを止め『られない』。一般人だからなぁ」
「嘘つき」