ヴェロニカの嵐
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「自分はある程度の自給自足は出来ます。それを知って頂いた上で申し上げますが、あのような緊急的非常事態の状況で自分の生命維持を確保する余裕を持って、更に他の生徒の命の保障が出来るかと訊かれたら否と答えます。ですからヴィッキーが居なければ、自分は他の生徒達を何の手出しも出来ずに見殺しにする事になっていたと思います」
後ろの傍聴席から生徒達の声が聞こえた気がしたが無視する。
「そうでなくとも自分は協調性というものが無いので、遭難中も何度も不和を生みました。よってあの惑星から全員が揃って戻ってこられたのは、ヴィッキーが居たからであると断言します」
「――貴方は、チャールズ・レザロの訴えをどう思いますか?」
「決してそんな事をしていないとこの場へ居る全ての方へ宣誓して。もしそういう事をしていたとすれば、可能性があるのはヴィッキーより自分だと思いました」
「可能性がある、とはどういう事ですか」
「宗教で禁じられている物の摂取を勧める、という意味で。そういう余裕は元より自分は持っていませんでした。ヴィッキーへ頼まれたからしなかった。そう取っていただいて構いません」
「では、ミスタ・ヴァレンタインが居なければそうしていただろうと?」
「彼よりは可能性が高いです。なので自分は、自分よりそうした意思の尊重を徹底していたヴィッキーがそのような事をするとは思いません」
結局チャックの召喚の為に再び審議が中断され、部屋から出て廊下で待っていたマギーと合流するとハンスに呼び止められた。
同じく審議に召喚されて証言台へ立った彼は、僅かな緊張による疲れからか、それとも審議の内容に思うところがあってか難しい顔をしている。
マギーに自販機で飲み物でも買っているように言って遠ざけ、ハンスへと向き直った。
「なんであんな事を言ったんだ」
「あんな事?」
「自分の方が可能性があるなんて、もしそうだとしても君は絶対にそんな事しないだろう!」
「うん。しねぇよ。でもやっぱりリィよりは可能性があるだろぉ?」
「無いとは言い切れないけど、君だって、チャックのことをあんなに気遣ってたじゃないか。小屋へ辿り着く前に、自分の分の飲み水を渡してさえいたのを僕は見てるんだぞ」
「元よりあれは生水を飲めねぇチャックの為にそうしてた奴だし、俺自身は川の水が飲めたんだし……」
「それでも水がどんなに貴重か君は分かっていた。むしろだからこそチャックの分を考えていたんだろう? そんな君が誤解されるのはおかしいんだから、もうあんな事は言わない方がいい!」
後ろから傍聴席に居た保護者や関係者が来ていることにハンスは気付いているのだろうか。おそらく気付いていないだろう。むしろ今のハンスの発言のほうが、シルビがまるで『善人』だと誤解されそうで困る。
自分はそんな『善人』ではないのだ。
後ろの傍聴席から生徒達の声が聞こえた気がしたが無視する。
「そうでなくとも自分は協調性というものが無いので、遭難中も何度も不和を生みました。よってあの惑星から全員が揃って戻ってこられたのは、ヴィッキーが居たからであると断言します」
「――貴方は、チャールズ・レザロの訴えをどう思いますか?」
「決してそんな事をしていないとこの場へ居る全ての方へ宣誓して。もしそういう事をしていたとすれば、可能性があるのはヴィッキーより自分だと思いました」
「可能性がある、とはどういう事ですか」
「宗教で禁じられている物の摂取を勧める、という意味で。そういう余裕は元より自分は持っていませんでした。ヴィッキーへ頼まれたからしなかった。そう取っていただいて構いません」
「では、ミスタ・ヴァレンタインが居なければそうしていただろうと?」
「彼よりは可能性が高いです。なので自分は、自分よりそうした意思の尊重を徹底していたヴィッキーがそのような事をするとは思いません」
結局チャックの召喚の為に再び審議が中断され、部屋から出て廊下で待っていたマギーと合流するとハンスに呼び止められた。
同じく審議に召喚されて証言台へ立った彼は、僅かな緊張による疲れからか、それとも審議の内容に思うところがあってか難しい顔をしている。
マギーに自販機で飲み物でも買っているように言って遠ざけ、ハンスへと向き直った。
「なんであんな事を言ったんだ」
「あんな事?」
「自分の方が可能性があるなんて、もしそうだとしても君は絶対にそんな事しないだろう!」
「うん。しねぇよ。でもやっぱりリィよりは可能性があるだろぉ?」
「無いとは言い切れないけど、君だって、チャックのことをあんなに気遣ってたじゃないか。小屋へ辿り着く前に、自分の分の飲み水を渡してさえいたのを僕は見てるんだぞ」
「元よりあれは生水を飲めねぇチャックの為にそうしてた奴だし、俺自身は川の水が飲めたんだし……」
「それでも水がどんなに貴重か君は分かっていた。むしろだからこそチャックの分を考えていたんだろう? そんな君が誤解されるのはおかしいんだから、もうあんな事は言わない方がいい!」
後ろから傍聴席に居た保護者や関係者が来ていることにハンスは気付いているのだろうか。おそらく気付いていないだろう。むしろ今のハンスの発言のほうが、シルビがまるで『善人』だと誤解されそうで困る。
自分はそんな『善人』ではないのだ。