チャックを原告とした人権侵害の審議が行なわれ、その審議会から召喚の届けが来て、シルビはまず自分の携帯端末から『マギー』へと連絡を取った。

「お前等から貰ったウォレットチェーン。何なのあれ」
『あら、今更な質問をするのね』
「単なる装飾品だと思ってたんだぁ」
『あれは【鎖】よ。貴方を留め貴方を縛り貴方と繋ぐもの。もっと詳しい事は我が主に聞いてもらったほうが早いけれど』
「……もういい。この前の誘拐事件の話なんだが」
『犯人は父親よ』
「関係者の殆どが父親だよ。つか推理小説のネタバレみてぇに言うんじゃねぇよ。そうじゃなくて、誘拐された生徒の一人が訴えを起こしてその審議が難航してるらしいから、俺も召喚されるらしいんだぁ」
『大変ね』
「場合によっては保護者としてまた来てもらうことになる。そん時は頼めるかぁ？」
『いいわよ。我が主にも貴方の“ご両親”へも伝えておくわ』

切れた通信に息を吐き出して、シルビは今度は違う相手へと連絡を取る。今頃はリィと一緒に居るであろうその相手は、直ぐに通信へ出た。

『珍しいね。君から連絡なんて』
「さっき審議会から召喚の知らせが届いたんだぁ。行くつもりだけどその前に、幾つか頼みてぇ事があるんだけど」
『僕に？』
「本当はダン船長の様な社会的立場のある人が良かったが、俺にそんな伝手は無ぇ」
『……それ、アーサーじゃ駄目？』
「アーサー？ ……ああ、ヴァレンタイン卿。別に出来るならルウよりはその方がいいと思うけど」
『シルビの考えてることはもう分かってるよ。だからその情報ちょうだい？』

思わず言葉に詰まって、それから相手が『普通の一般人』ではないのだと再認識する。別に互いに知っているし知られているので構わないが、今までの人生において、そういう類の知り合いが少なかったからかどうにも反応し辛い。
同族嫌悪とまでは言わないし言うつもりも無いが、ルウに対してだけはどうにも慣れなかった。

「っ……。有効活用してくれると嬉しい」
『それはアーサー次第かな。アーサーには僕から渡すから、僕に送ってくれればいいよ』
「……ルウ。分かってはいるんだけど、そうも息をするように自然じゃねぇことをするなよぉ」
『自然じゃなかった？』

ダン船長の苦労が少し分かった気がする。これに慣れたらシルビもお終いか。
せめて『二人』に会うまでは慣れないでいたいところだが、既に難しい気もしているのは何故だろう。ともあれ一度通信を切って情報を送る。
チャックがリィを選んだ理由は分からないが、リィが居なかったらシルビが選ばれていたのだろう。だとしたらそう他人事ともとれない事案だ。