ヴェロニカの嵐
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リィが入院して一週間。無人惑星から保護後の健康診断も問題なくやり過ごし、予定通りの惰眠も満足いくまで貪ったシルビは、返されたウォレットチェーンを身に着けて知り合いの船である《パラス・アテナ》の中へ居た。
そこでダイアナへ頼み、誘拐されている間に生徒の保護者が見せられたという誘拐犯からの映像記録媒体や、警察が捜査して手に入れた情報を見せてもらっていたのである。ちなみに船長であるケリーとその妻であるジャスミンは、リィの見舞いへ行っていた。
「……殺された息子の復讐、ねぇ。じゃあ少なくとも俺とシェラ、ダン船長とヴァレンタイン卿は除いてもいいと俺は思う」
「他の生徒の親の情報も出す?」
「そうしてくれると嬉しい。……あとヴェロニカ教の教義もついでに出しといてくれねぇ?」
「どうして?」
「気になる事があるから。聞きてぇならそれは確認しながら話す」
映像の中で微笑んだダイアナが瞬きの間も無く、シルビが望んだデータを表示させていく。それにお礼を言って視線は画面へ集中させるも、殆どが関連の無さそうな情報だった為、面倒になって先にヴェロニカ教の確認をする事にした。
画面の中でダイアナが頬杖を突く。教義の半分ほどを読み進めたところで、シルビの横へ自動機械がココアを運んできた。
「何故ココア」
「あら? 甘い物は嫌い?」
「嫌いじゃねぇけど……今好きになったよ」
「アラ嬉しい」
宇宙船の中だしと舐めてかかっていたら予想以上に美味しかったココアを飲み干し、シルビは教義内の一文をコピーする。説明するといったからかダイアナが待っていた。
「無人惑星で過ごしてる間にリィが動物を狩ってきて、それをシェラが捌いて食うって事が何度か有ったんだぁ。俺も狩りは出来るし。で、初めて肉を食った日、確か小屋へ行く前の滝のとこだったかなぁ。肉を焼いたんだよ」
「肉を焼くのは普通ではなくて?」
「リィは生でも少し食ってたぜぇ宰妃。まぁ普通は焼くよなぁ。当然肉を焼く匂いってのは、肉の味を知ってる奴にとってもごく普通で、それが死骸を焼いている匂いだという認識を持つ者はあまり居ねぇ」
「その言い方は嫌だわ。死骸を焼くだなんて」
「でも火葬はそういうことだろぉ。当然肉を焼く匂いってのは同時に人が死んで焼ける時の匂いとも同じな訳で、その印象の方が強い人は肉が焼ける匂いを嫌がるよなぁ」
「そうね。同じ事でも印象はだいぶ違うわ。でもそれが?」
背凭れに寄り掛かって背筋を伸ばす。背中のミミズ腫れは既によく見なければ気付けないほどにまで消えていた。当然痛みも無い。
そういえばそちらの話も聞きに行かなければと思い出した。
「チャックは、なんで肉の焼ける匂いを嗅いで嫌がらなかったんだと思ってなぁ」
そこでダイアナへ頼み、誘拐されている間に生徒の保護者が見せられたという誘拐犯からの映像記録媒体や、警察が捜査して手に入れた情報を見せてもらっていたのである。ちなみに船長であるケリーとその妻であるジャスミンは、リィの見舞いへ行っていた。
「……殺された息子の復讐、ねぇ。じゃあ少なくとも俺とシェラ、ダン船長とヴァレンタイン卿は除いてもいいと俺は思う」
「他の生徒の親の情報も出す?」
「そうしてくれると嬉しい。……あとヴェロニカ教の教義もついでに出しといてくれねぇ?」
「どうして?」
「気になる事があるから。聞きてぇならそれは確認しながら話す」
映像の中で微笑んだダイアナが瞬きの間も無く、シルビが望んだデータを表示させていく。それにお礼を言って視線は画面へ集中させるも、殆どが関連の無さそうな情報だった為、面倒になって先にヴェロニカ教の確認をする事にした。
画面の中でダイアナが頬杖を突く。教義の半分ほどを読み進めたところで、シルビの横へ自動機械がココアを運んできた。
「何故ココア」
「あら? 甘い物は嫌い?」
「嫌いじゃねぇけど……今好きになったよ」
「アラ嬉しい」
宇宙船の中だしと舐めてかかっていたら予想以上に美味しかったココアを飲み干し、シルビは教義内の一文をコピーする。説明するといったからかダイアナが待っていた。
「無人惑星で過ごしてる間にリィが動物を狩ってきて、それをシェラが捌いて食うって事が何度か有ったんだぁ。俺も狩りは出来るし。で、初めて肉を食った日、確か小屋へ行く前の滝のとこだったかなぁ。肉を焼いたんだよ」
「肉を焼くのは普通ではなくて?」
「リィは生でも少し食ってたぜぇ宰妃。まぁ普通は焼くよなぁ。当然肉を焼く匂いってのは、肉の味を知ってる奴にとってもごく普通で、それが死骸を焼いている匂いだという認識を持つ者はあまり居ねぇ」
「その言い方は嫌だわ。死骸を焼くだなんて」
「でも火葬はそういうことだろぉ。当然肉を焼く匂いってのは同時に人が死んで焼ける時の匂いとも同じな訳で、その印象の方が強い人は肉が焼ける匂いを嫌がるよなぁ」
「そうね。同じ事でも印象はだいぶ違うわ。でもそれが?」
背凭れに寄り掛かって背筋を伸ばす。背中のミミズ腫れは既によく見なければ気付けないほどにまで消えていた。当然痛みも無い。
そういえばそちらの話も聞きに行かなければと思い出した。
「チャックは、なんで肉の焼ける匂いを嗅いで嫌がらなかったんだと思ってなぁ」