ヴェロニカの嵐
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ひんやりとした感覚が痛む箇所へ触れられるのに、シルビはそっと息を吐いた。冷やすと多少は痛みが鈍くなる。
シェラの手が腫れへ何度も触れて確かめているが、別に実際に撃たれた訳でも、体内へ銃弾が残っている訳でもない。本当にただのミミズ腫れでしかないそれを、シェラは訝しげに見つめている。
「原因は何なんでしょう? こんな傷が出来るようなことがここで起きるとは思えません」
「……多分、リィが関係してるんじゃねぇかと思う」
リィの名前を出すのには度胸が言った。案の定シェラの手が反応して、シルビの背中の腫れを無意識にだろうが強く押す。
「っ、……俺、ウォレットチェーンをリィに貸してたんだぁ。今までに誰かへ貸したことってあまり無ぇしこんな事初めてだけど、もしかしたらリィが怪我したかも知れねぇ」
「あの人が、負傷したかもしれないと」
シェラの手が震えながら離れるのに服を戻して振り返れば、シェラの顔は青褪めている。シルビはそのシェラの手を掴んで目を覗き込んだ。
まだそうだと決まった訳じゃない。そもそもこんな事シルビだって初めてなので、もしかしたら単にシルビ自身の何かに反応しただけのことだという可能性もある。
「俺のことは俺自身でも良く分かんねぇから、この腫れだってそういう類かも知れねぇ。リィが怪我したかもって言ったのは俺が悪かったぁ」
「……いえ。ですがシルビ」
「これは俺の背中がちょっと腫れただけ。それにホラ、俺に痛みが来てるってことはリィの痛みが半減されてるかも知れねぇし、そう考えれば悪いことじゃねぇだろぉ?」
「怪我をしている時点で悪いことだと思うのですが」
「シェラ、頼むから」
頼むから、そう不安がらないでくれとは流石に言えない。シェラとリィは主従関係が出来上がっているし、それに口を挟む事もシルビには出来やしないしその権利も無かろう。
そう不安がられると分かっていたから腫れのことを隠そうとした。誰かに悲しまれたり不安がられたり困られたり、そういった負の感情を抱かれるのがシルビは苦手だ。
シェラは髪の色が『弟』と同じだから尚更そう思ってしまう。そう思う必要の無い相手だと分かっていても。
「……痛い、ですか?」
ややあって口を開いたシェラから聞こえたのは、リィではなくシルビを心配するもので。それでもシルビは困ってしまう訳だが、自分を誤魔化すのは楽なので少し笑う。
「このくらいの痛みなら」
それから数時間後、空から降りてきた《ピグマリオンⅡ》によってシルビ達は無人惑星から救出された。
シェラの手が腫れへ何度も触れて確かめているが、別に実際に撃たれた訳でも、体内へ銃弾が残っている訳でもない。本当にただのミミズ腫れでしかないそれを、シェラは訝しげに見つめている。
「原因は何なんでしょう? こんな傷が出来るようなことがここで起きるとは思えません」
「……多分、リィが関係してるんじゃねぇかと思う」
リィの名前を出すのには度胸が言った。案の定シェラの手が反応して、シルビの背中の腫れを無意識にだろうが強く押す。
「っ、……俺、ウォレットチェーンをリィに貸してたんだぁ。今までに誰かへ貸したことってあまり無ぇしこんな事初めてだけど、もしかしたらリィが怪我したかも知れねぇ」
「あの人が、負傷したかもしれないと」
シェラの手が震えながら離れるのに服を戻して振り返れば、シェラの顔は青褪めている。シルビはそのシェラの手を掴んで目を覗き込んだ。
まだそうだと決まった訳じゃない。そもそもこんな事シルビだって初めてなので、もしかしたら単にシルビ自身の何かに反応しただけのことだという可能性もある。
「俺のことは俺自身でも良く分かんねぇから、この腫れだってそういう類かも知れねぇ。リィが怪我したかもって言ったのは俺が悪かったぁ」
「……いえ。ですがシルビ」
「これは俺の背中がちょっと腫れただけ。それにホラ、俺に痛みが来てるってことはリィの痛みが半減されてるかも知れねぇし、そう考えれば悪いことじゃねぇだろぉ?」
「怪我をしている時点で悪いことだと思うのですが」
「シェラ、頼むから」
頼むから、そう不安がらないでくれとは流石に言えない。シェラとリィは主従関係が出来上がっているし、それに口を挟む事もシルビには出来やしないしその権利も無かろう。
そう不安がられると分かっていたから腫れのことを隠そうとした。誰かに悲しまれたり不安がられたり困られたり、そういった負の感情を抱かれるのがシルビは苦手だ。
シェラは髪の色が『弟』と同じだから尚更そう思ってしまう。そう思う必要の無い相手だと分かっていても。
「……痛い、ですか?」
ややあって口を開いたシェラから聞こえたのは、リィではなくシルビを心配するもので。それでもシルビは困ってしまう訳だが、自分を誤魔化すのは楽なので少し笑う。
「このくらいの痛みなら」
それから数時間後、空から降りてきた《ピグマリオンⅡ》によってシルビ達は無人惑星から救出された。