ヴェロニカの嵐
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
仕度をする為にジェームズが二階へ駆け上がっていってから、シルビは腰に着けていたウォレットチェーンを外しながらリィへ近付いた。
「リィ」
重苦しい顔をしたシェラと話をしていたリィへ声を掛ければ振り返り、シルビの手にあるウォレットチェーンを見て小さく笑う。
「付けていきなさい。持ってくだけでもいい。邪魔だと思ってもコレだけは俺は譲らねぇ」
笑いを封じ込めるように真剣な声色で言いつける。本当はそんな言いつけるなんて事はしたくなかったが、こうでもしなければリィは受け取らないと思った。
リィが崖から落ちた際に痛めたであろう足首はいまだ治っていない。あれからも一人だけ安静に休んでいるなんて事をしなかったのだからそれも当然で、医療機器の無いここではそれがどれだけ悪化しているのかも、最初はどの程度のものだったのかも分からなかった。
ただ、治っていないということだけはおそらく確定している。だからシルビは心配するのだ。
「そんな足で長時間歩くのさえ本当はさせたくねぇ。でもお前は行くんだろぉ? だったら、少しでも俺が肩代わりするから」
「そんな事も出来るのか?」
「肩代わりは出来ねぇけど、痛みの緩和と症状の悪化は多分防げる。ぶっちゃけ何が出来るのか分からねぇんだけど、分からねぇから付けていって欲しい」
いっその事肩代わりが出来れば良いものを。しかしコレはそんな目的で貰ったものでもない為、そんな芸当はおそらく無理だろう。ただコレは、リィやルウ、そしてシルビには確実に効果のあるものだ。
リィは受け取ったウォレットチェーンを腰に装着する。出来るだけ邪魔にならないように身に着けられたそれに、シルビは少しだけ目を細めた。
本当はシルビも一緒に行くべきなのだろう。だがリィが何も言わないのは残る生徒達をシェラと一緒に見守っていて欲しいと言う考えと、シルビがまだ『一般人然』としているからか。二百キロ近い鹿を一人で運んでいる時点で結構それもおかしい話だが、リィはまだシルビへ気を使うしシルビだってリィ達へ遠慮している。
最低限の荷物だけ持ったジェームズとリィを沢へ通じる森の入口へまで見送って、シルビは二人の姿が森の奥へ見えなくなってから左手首の腕輪へ手を添えた。やはり一緒に行けば良かったとか、自分の非常識性などいくらでも誤魔化しが利くだろうにと思ってしまう。
でもそれでは多分駄目なのだ。シルビは『二人』に会いたい。
『二人』に会うまでは普通であろうと決めたのだから。
「リィ」
重苦しい顔をしたシェラと話をしていたリィへ声を掛ければ振り返り、シルビの手にあるウォレットチェーンを見て小さく笑う。
「付けていきなさい。持ってくだけでもいい。邪魔だと思ってもコレだけは俺は譲らねぇ」
笑いを封じ込めるように真剣な声色で言いつける。本当はそんな言いつけるなんて事はしたくなかったが、こうでもしなければリィは受け取らないと思った。
リィが崖から落ちた際に痛めたであろう足首はいまだ治っていない。あれからも一人だけ安静に休んでいるなんて事をしなかったのだからそれも当然で、医療機器の無いここではそれがどれだけ悪化しているのかも、最初はどの程度のものだったのかも分からなかった。
ただ、治っていないということだけはおそらく確定している。だからシルビは心配するのだ。
「そんな足で長時間歩くのさえ本当はさせたくねぇ。でもお前は行くんだろぉ? だったら、少しでも俺が肩代わりするから」
「そんな事も出来るのか?」
「肩代わりは出来ねぇけど、痛みの緩和と症状の悪化は多分防げる。ぶっちゃけ何が出来るのか分からねぇんだけど、分からねぇから付けていって欲しい」
いっその事肩代わりが出来れば良いものを。しかしコレはそんな目的で貰ったものでもない為、そんな芸当はおそらく無理だろう。ただコレは、リィやルウ、そしてシルビには確実に効果のあるものだ。
リィは受け取ったウォレットチェーンを腰に装着する。出来るだけ邪魔にならないように身に着けられたそれに、シルビは少しだけ目を細めた。
本当はシルビも一緒に行くべきなのだろう。だがリィが何も言わないのは残る生徒達をシェラと一緒に見守っていて欲しいと言う考えと、シルビがまだ『一般人然』としているからか。二百キロ近い鹿を一人で運んでいる時点で結構それもおかしい話だが、リィはまだシルビへ気を使うしシルビだってリィ達へ遠慮している。
最低限の荷物だけ持ったジェームズとリィを沢へ通じる森の入口へまで見送って、シルビは二人の姿が森の奥へ見えなくなってから左手首の腕輪へ手を添えた。やはり一緒に行けば良かったとか、自分の非常識性などいくらでも誤魔化しが利くだろうにと思ってしまう。
でもそれでは多分駄目なのだ。シルビは『二人』に会いたい。
『二人』に会うまでは普通であろうと決めたのだから。