炎のゴブレッド
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「それは墓石か?」
「そう見えるんならそうなんじゃねぇの? 何か用かぁ?」
「君の親友の兄君がパッドフットのことを洗おうとする。申し訳ないが逃げてきたんだ」
屋敷の中庭に、ひっそりと造られて以来長い年月を経た墓石を、枕にして寝そべっていたシルビは、近付いてきた男が傍へ腰を降ろすことを許す。
シルビ達が学校から夏季休暇の為に帰ってくる少し前から、この屋敷に隠れ住んでいる居候兼冤罪の逃亡者は、シルビの頭上にある墓石へ彫られた名前を読もうとしていたが、その前にシルビが身体を起こした事で諦めた。
シリウス・ブラック。十二年前から囚人として投獄されており、つい一年前に脱獄した男だ。
十二年前、親友の居場所を悪役へ密告したという罪をもう一人の親友へ被せられ服役。去年になってその裏切り者を見つけたことで脱獄し、殺そうとするも寸でのところでそれは叶わなかった。
今は逃亡者としての生活を余儀なくされ、シルビの協力を持ってこの屋敷で暮らしている。
魔法界は今のところ、彼が冤罪である事もここへ隠れている事も気付いていない。
魔法より強力な幻覚を張り、実力のある者が揃うこの屋敷は、例え魔法界の誰かがシリウスが此処へいることに気付いて追ってきても、入る事すら叶わないだろう。
夏季休暇に入ってからは、シルビや二世が加わって更に隠蔽は強固なものとなっていた。
夏の日差しを遮る木立の葉が風に揺れる。
敷地内でなら人の姿でも犬の姿でも許されているシリウスは、持っていた封筒をシルビヘと渡した。
「グレンジャーだったか。彼女からだ」
「……クィディッチ・ワールドカップに行くから今年のダイアゴン横丁じゃ会えないかも、だとぉ」
「クィディッチ・ワールドカップ! 彼女は見に行くのか?」
「ロンの親御さんがチケットを手に入れたらしいなぁ。……気になんのかぁ?」
「そりゃあ、もちろん」
「残念だが、ここにはチケット無ぇからなぁ。あとで結果の載ってる新聞だけ買ってやるよぉ」
意地悪く笑えばシリウスが恨めしそうにシルビを見る。
声に出して文句まで言わないのは、ここにいる間の衣食住に関する費用が、シルビによって出されていると知っているからだろう。
住処と食事は厳密に言えばシルビですら居候の立場だが。
ともあれ細かい諸経費はシルビが出している。
「ではハリーに手紙を出してもいいか?」
「この前ケーキを送っただろぉ。んな頻繁に送ってて、居場所ばれたらどうすんだぁ?」
「ここは安全だと君たちが言ったんだ」
「それにも限度はあんだぁ。お茶にしようぜぇ。アンタはもう少し食って栄養を取り戻したほうがいい」
立ち上がったシルビヘ従うように、シリウスは黒犬の姿になって後を付いて来た。
「そう見えるんならそうなんじゃねぇの? 何か用かぁ?」
「君の親友の兄君がパッドフットのことを洗おうとする。申し訳ないが逃げてきたんだ」
屋敷の中庭に、ひっそりと造られて以来長い年月を経た墓石を、枕にして寝そべっていたシルビは、近付いてきた男が傍へ腰を降ろすことを許す。
シルビ達が学校から夏季休暇の為に帰ってくる少し前から、この屋敷に隠れ住んでいる居候兼冤罪の逃亡者は、シルビの頭上にある墓石へ彫られた名前を読もうとしていたが、その前にシルビが身体を起こした事で諦めた。
シリウス・ブラック。十二年前から囚人として投獄されており、つい一年前に脱獄した男だ。
十二年前、親友の居場所を悪役へ密告したという罪をもう一人の親友へ被せられ服役。去年になってその裏切り者を見つけたことで脱獄し、殺そうとするも寸でのところでそれは叶わなかった。
今は逃亡者としての生活を余儀なくされ、シルビの協力を持ってこの屋敷で暮らしている。
魔法界は今のところ、彼が冤罪である事もここへ隠れている事も気付いていない。
魔法より強力な幻覚を張り、実力のある者が揃うこの屋敷は、例え魔法界の誰かがシリウスが此処へいることに気付いて追ってきても、入る事すら叶わないだろう。
夏季休暇に入ってからは、シルビや二世が加わって更に隠蔽は強固なものとなっていた。
夏の日差しを遮る木立の葉が風に揺れる。
敷地内でなら人の姿でも犬の姿でも許されているシリウスは、持っていた封筒をシルビヘと渡した。
「グレンジャーだったか。彼女からだ」
「……クィディッチ・ワールドカップに行くから今年のダイアゴン横丁じゃ会えないかも、だとぉ」
「クィディッチ・ワールドカップ! 彼女は見に行くのか?」
「ロンの親御さんがチケットを手に入れたらしいなぁ。……気になんのかぁ?」
「そりゃあ、もちろん」
「残念だが、ここにはチケット無ぇからなぁ。あとで結果の載ってる新聞だけ買ってやるよぉ」
意地悪く笑えばシリウスが恨めしそうにシルビを見る。
声に出して文句まで言わないのは、ここにいる間の衣食住に関する費用が、シルビによって出されていると知っているからだろう。
住処と食事は厳密に言えばシルビですら居候の立場だが。
ともあれ細かい諸経費はシルビが出している。
「ではハリーに手紙を出してもいいか?」
「この前ケーキを送っただろぉ。んな頻繁に送ってて、居場所ばれたらどうすんだぁ?」
「ここは安全だと君たちが言ったんだ」
「それにも限度はあんだぁ。お茶にしようぜぇ。アンタはもう少し食って栄養を取り戻したほうがいい」
立ち上がったシルビヘ従うように、シリウスは黒犬の姿になって後を付いて来た。