秘密の部屋
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一年近い寮生活からの、つかの間の開放。
二世共々屋敷へ帰ってきたシルビを待っていたのは、シルビにしてみればとてつもなく甘美で贅沢な時間だった。
妹が居て親友が居て友人達が居て、日当たりのいいソファで昼寝をしたり気まぐれに料理をしたり、時には殺伐とした運動をしてみたり。あのふざけた魔法学校の事など最初の一週間で忘れ去る事すら出来そうな日々。
唐突にそれが終わったのは、一通の手紙が原因だった。
「兄貴ぃ、ボスぅ?」
「こっちにいるぜぇ。コディー」
書庫で二人が頼まれた書類の整理をしていると、友人の一人とゲームをしていたはずの『妹』がやってきたので、作業の手を止めて顔を上げる。本棚の森から姿を現したココディーロは、シルビと二世の姿を見つけると嬉しげに駆け寄ってきた。
「一度休憩してお茶にしようってナックルが」
「もうそんな時間か」
昼食後からずっと書庫に篭りきりだった事に気付いて、二世が腕時計を確認する。ココディーロは整理途中の散らばった書類を覗き込み、それがつまらない内容であることを確かめてからシルビへと抱きついた。
「今日はアラウディが買ってきたんだぁ。シュークリーム!」
「そっかぁ」
古い紙にも触れていたことで汚れている手では、綺麗な銀髪に手を伸ばすのが躊躇われ、シルビは抱きついている妹を腕を使って抱えあげる。そのまま二世と一緒に書庫を後にして、お茶の仕度がされているであろう中庭へと向かった。
全くもって、シルビにとっては平和で幸せな時間である。
中庭に着いて抱えていた妹を降ろせば、妹は中庭でお茶の仕度をしていたナックルへと向かって駆けて行った。ナックルの横では既にアラウディが座っていて、ココディーロに何か話しかけている。
「……スゲェ幸せ」
「幸せなのは結構なことだが、オレは現実を直視することも大切だと思うがな」
「……おう」
アラウディの手には、見覚えのある蝋印のされた封筒。
どう考えてもホグワーツからの手紙であるそれに、シルビと二世は殆ど同時に溜息を吐いた。
二人して近付いていけばアラウディがつまらなそうに振り返って、シルビへとその封筒を差し出す。
「はい。君は『家族』だから見る権利があるんじゃない」
「……家族?」
自分宛てではないらしいそれに、アラウディの言葉でハッとして慌てて封筒の宛名を見た。
「……畜生。俺がそうなんだからコディーも可能性があったって忘れてたぜぇ」
一年前にも見た、ホグワーツ入学許可証という名の強制入学指令。隣から覗き込む二世へ手紙を渡して、シルビは妹を見る。
「……コディー。俺等と同じ学校行くかぁ?」
「兄貴とボスが居るとこだろぉ? 行くに決まってるぜぇ?」
言うと思った。
二世共々屋敷へ帰ってきたシルビを待っていたのは、シルビにしてみればとてつもなく甘美で贅沢な時間だった。
妹が居て親友が居て友人達が居て、日当たりのいいソファで昼寝をしたり気まぐれに料理をしたり、時には殺伐とした運動をしてみたり。あのふざけた魔法学校の事など最初の一週間で忘れ去る事すら出来そうな日々。
唐突にそれが終わったのは、一通の手紙が原因だった。
「兄貴ぃ、ボスぅ?」
「こっちにいるぜぇ。コディー」
書庫で二人が頼まれた書類の整理をしていると、友人の一人とゲームをしていたはずの『妹』がやってきたので、作業の手を止めて顔を上げる。本棚の森から姿を現したココディーロは、シルビと二世の姿を見つけると嬉しげに駆け寄ってきた。
「一度休憩してお茶にしようってナックルが」
「もうそんな時間か」
昼食後からずっと書庫に篭りきりだった事に気付いて、二世が腕時計を確認する。ココディーロは整理途中の散らばった書類を覗き込み、それがつまらない内容であることを確かめてからシルビへと抱きついた。
「今日はアラウディが買ってきたんだぁ。シュークリーム!」
「そっかぁ」
古い紙にも触れていたことで汚れている手では、綺麗な銀髪に手を伸ばすのが躊躇われ、シルビは抱きついている妹を腕を使って抱えあげる。そのまま二世と一緒に書庫を後にして、お茶の仕度がされているであろう中庭へと向かった。
全くもって、シルビにとっては平和で幸せな時間である。
中庭に着いて抱えていた妹を降ろせば、妹は中庭でお茶の仕度をしていたナックルへと向かって駆けて行った。ナックルの横では既にアラウディが座っていて、ココディーロに何か話しかけている。
「……スゲェ幸せ」
「幸せなのは結構なことだが、オレは現実を直視することも大切だと思うがな」
「……おう」
アラウディの手には、見覚えのある蝋印のされた封筒。
どう考えてもホグワーツからの手紙であるそれに、シルビと二世は殆ど同時に溜息を吐いた。
二人して近付いていけばアラウディがつまらなそうに振り返って、シルビへとその封筒を差し出す。
「はい。君は『家族』だから見る権利があるんじゃない」
「……家族?」
自分宛てではないらしいそれに、アラウディの言葉でハッとして慌てて封筒の宛名を見た。
「……畜生。俺がそうなんだからコディーも可能性があったって忘れてたぜぇ」
一年前にも見た、ホグワーツ入学許可証という名の強制入学指令。隣から覗き込む二世へ手紙を渡して、シルビは妹を見る。
「……コディー。俺等と同じ学校行くかぁ?」
「兄貴とボスが居るとこだろぉ? 行くに決まってるぜぇ?」
言うと思った。