賢者の石
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何度目か分からない生誕をしたシルビがまだその生に何の意味も見出だせなかった頃、母親が妊娠した。
今生は兄弟が出来るのか、とシルビが内心で他人事の様に考えていたなか、産まれた妹は『弟』だった。
シルビの愛すべき最初にして唯一の弟。
シルビと同じ様に生まれ変わったのだと分かったのは母親に良く似た容姿もさる事ながら、目を開けてシルビを見たその銀色の瞳を見てシルビが間違える訳が無い。
成長すればやがてそれはハッキリと分かり、『弟』は女の身体で生まれた事を受け入れながらシルビの事を昔の様に『兄貴』と呼んだ。
次に再会したのは親友だった。
妹となった『弟』が生まれて数年後、街中で雑踏の中を互いに見付けた。妹も母親もその場にいなかった為、シルビは親友に抱き着きながら憚る事なく泣いた。
親友から親友の兄、その仲間達も生まれ変わった事を知り、妹を連れて会いに行って泣いて泣かれて。
数年後、両親が亡くなりシルビと妹は成人していた親友の兄の好意により、親友達の住む屋敷で世話になる事になった。
それが来たのは平穏な日々の矢先。親友の二世と話していたシルビの元へ、二世の兄であるジョットが二人宛の手紙を持ってきた。
『ホグワーツ魔法学校入学祝い』
覚えが無いので燃やした。
次の日シルビがキッチンでお菓子を作っているとランポウが手紙を二つ持ってくる。両方宛名はシルビ。
『ホグワーツ魔法学校入学祝い』
燃やしてランポウに出来立てのお菓子を与えた。
次の日妹となって弟だった時とはまた違う愛らしさを持つココディーロとボードゲームをしていたら、窓がいきなり開いて手紙が入ってくる。
『ホグワーツ魔法学校入学祝い』
至福の時を壊されたので全て燃やした。
珍しく皆揃っての昼食の時間、今は使っていない暖炉から手紙が溢れ出す。まだ料理が運ばれていなかったから良いものの、連日の手紙にシルビと昼食の時間を台無しにされたジョットと騒がしいのは好かないアラウディの三人が爆発する寸前で、デイモンが手紙の一枚を手に取った。
「ホグワーツからですか。また懐かしい場所から」
「知っているのか?」
「知ってるの?」
「知ってんのかぁ?」
「……ええ。魔法使いや魔女の為の学校ですよ」
「魔法使い?」
「魔力のある子供が魔力の暴走をさせない様、その魔力でいわゆる魔法界の発展の為に学ばせる学校です」
「それがどうして二世とシルビ宛てに来たんだ?」
「魔力があるからでは?」
まるで当然の様にそう口にしたデイモンに、ランポウが手を上げる。昔から皆の集まった場所では挙手しなければ自分の意見を聞いてもらえないと染み付いてしまっているのだ。
「こんなにたくさん手紙を寄越してまでその学校に二人を通わせたいの?」
「というより、確か魔力のある者は義務だったと思います」
「ザケンなぁ! んな阿呆な学校俺は行かねぇぞぉ!」
「俺は行っても構わないと思うがな」
「……なら行く」
二世の言葉にすぐ主張をひっくり返したシルビは、それでも嫌そうに顔をしかめながら足下の手紙を一つ拾い上げる。拾わなかった手紙を靴底でグリグリと踏みつぶしながら封を切ると、隣からココディーロが覗き込んできた。
いつもであれば頭を撫でたりするところだが今回は仕方無く悪戯無しで文面に目を通す。
「……なんて言うか、ろくな事を学べる気がしねぇ」
「だが魔法界という社会は気になるな。こんな気狂いの手紙を毎日大量に増やしつつ送る常識も」
「アチラに常識なんてありませんよ二世。文化も遅れているくせにコチラを馬鹿にしていて、微塵も進歩しようという精神がありませんから」
「やけに詳しいな。デイモン」
「行ってましたから。ホグワーツ」
皆の目がデイモンに集まった。当の本人はその視線に驚いているが、周りからすればこちらのほうが驚きだ。
「通ってたのか?」
「ええ。皆さんと再会する前ですが」
「って事はデイモンも魔法が使えんのかよ」
「はい。ああでも幻術のほうがだいぶ使い勝手が良いですし、使えるのを忘れるくらい必要無いですね」
絶句するシルビやジョット達とは裏腹に、ココディーロだけがデイモンを凄い凄いと褒めそやす。
シルビは黙って持っていた手紙を燃やした。
今生は兄弟が出来るのか、とシルビが内心で他人事の様に考えていたなか、産まれた妹は『弟』だった。
シルビの愛すべき最初にして唯一の弟。
シルビと同じ様に生まれ変わったのだと分かったのは母親に良く似た容姿もさる事ながら、目を開けてシルビを見たその銀色の瞳を見てシルビが間違える訳が無い。
成長すればやがてそれはハッキリと分かり、『弟』は女の身体で生まれた事を受け入れながらシルビの事を昔の様に『兄貴』と呼んだ。
次に再会したのは親友だった。
妹となった『弟』が生まれて数年後、街中で雑踏の中を互いに見付けた。妹も母親もその場にいなかった為、シルビは親友に抱き着きながら憚る事なく泣いた。
親友から親友の兄、その仲間達も生まれ変わった事を知り、妹を連れて会いに行って泣いて泣かれて。
数年後、両親が亡くなりシルビと妹は成人していた親友の兄の好意により、親友達の住む屋敷で世話になる事になった。
それが来たのは平穏な日々の矢先。親友の二世と話していたシルビの元へ、二世の兄であるジョットが二人宛の手紙を持ってきた。
『ホグワーツ魔法学校入学祝い』
覚えが無いので燃やした。
次の日シルビがキッチンでお菓子を作っているとランポウが手紙を二つ持ってくる。両方宛名はシルビ。
『ホグワーツ魔法学校入学祝い』
燃やしてランポウに出来立てのお菓子を与えた。
次の日妹となって弟だった時とはまた違う愛らしさを持つココディーロとボードゲームをしていたら、窓がいきなり開いて手紙が入ってくる。
『ホグワーツ魔法学校入学祝い』
至福の時を壊されたので全て燃やした。
珍しく皆揃っての昼食の時間、今は使っていない暖炉から手紙が溢れ出す。まだ料理が運ばれていなかったから良いものの、連日の手紙にシルビと昼食の時間を台無しにされたジョットと騒がしいのは好かないアラウディの三人が爆発する寸前で、デイモンが手紙の一枚を手に取った。
「ホグワーツからですか。また懐かしい場所から」
「知っているのか?」
「知ってるの?」
「知ってんのかぁ?」
「……ええ。魔法使いや魔女の為の学校ですよ」
「魔法使い?」
「魔力のある子供が魔力の暴走をさせない様、その魔力でいわゆる魔法界の発展の為に学ばせる学校です」
「それがどうして二世とシルビ宛てに来たんだ?」
「魔力があるからでは?」
まるで当然の様にそう口にしたデイモンに、ランポウが手を上げる。昔から皆の集まった場所では挙手しなければ自分の意見を聞いてもらえないと染み付いてしまっているのだ。
「こんなにたくさん手紙を寄越してまでその学校に二人を通わせたいの?」
「というより、確か魔力のある者は義務だったと思います」
「ザケンなぁ! んな阿呆な学校俺は行かねぇぞぉ!」
「俺は行っても構わないと思うがな」
「……なら行く」
二世の言葉にすぐ主張をひっくり返したシルビは、それでも嫌そうに顔をしかめながら足下の手紙を一つ拾い上げる。拾わなかった手紙を靴底でグリグリと踏みつぶしながら封を切ると、隣からココディーロが覗き込んできた。
いつもであれば頭を撫でたりするところだが今回は仕方無く悪戯無しで文面に目を通す。
「……なんて言うか、ろくな事を学べる気がしねぇ」
「だが魔法界という社会は気になるな。こんな気狂いの手紙を毎日大量に増やしつつ送る常識も」
「アチラに常識なんてありませんよ二世。文化も遅れているくせにコチラを馬鹿にしていて、微塵も進歩しようという精神がありませんから」
「やけに詳しいな。デイモン」
「行ってましたから。ホグワーツ」
皆の目がデイモンに集まった。当の本人はその視線に驚いているが、周りからすればこちらのほうが驚きだ。
「通ってたのか?」
「ええ。皆さんと再会する前ですが」
「って事はデイモンも魔法が使えんのかよ」
「はい。ああでも幻術のほうがだいぶ使い勝手が良いですし、使えるのを忘れるくらい必要無いですね」
絶句するシルビやジョット達とは裏腹に、ココディーロだけがデイモンを凄い凄いと褒めそやす。
シルビは黙って持っていた手紙を燃やした。
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