死の秘宝
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巨大な扉の前だった。
「貴方はどうしてオレの『弟』にあんなことをさせようとするのですか?」
「機械仕掛けの神へ頼るにしては、これはきっと些細な事じゃ」
「あの子は神じゃない」
「そうじゃろう。ワシの守るべき生徒の一人で、多大な迷惑をこの老いぼれへ掛けられている二人目の哀れな子供じゃ」
「貴方は哀れだなんて思ってない」
「……そうじゃな。そうかも知れん」
「あの子はきっと怒るし泣くでしょう。でもオレはあの子を慰める事も出来ない」
「恨まれるべき、と?」
「あの子は誰も恨まない。貴方もオレも、自分自身以外は誰も」
青い蝶が羽ばたく。
「オレはあの子が、あの子達が幸せに生きてからここへ来る事を望んでるだけなのに」
「誰だってそうじゃ」
「死ぬ為に生まれる者はオレだけで充分」
「死んでおらぬ」
「そうかもしれない。だからあの子は諦めない」
「やはり些細な事じゃ」
「貴方はオレの『弟』に酷いことをさせる」
「……怒っておられるのかな?」
「うん」
巨大な扉の『前』だった。
「……兄さん」
朝日の差し込む自室のベッドの上でシルビは呟く。枕元へ置いていたウォレットチェーンが、触ってもいないのにチャリ、と音を立てる。
起き上がってそれと腕輪を手に取り、左手首に腕輪を嵌めてベッドから降りた。初夏の終わる夏の日差しが、まだ早い時間であっても眩く部屋を照らしている。
青い蝶の姿が傍にあるかと思ったが、そう思い通りにはいかないらしく見当たらなかった。シルビが昨日テーブルへ置いた白い尾羽が、紅い石の飾りが付いた杖と一緒に放置されている。
髪を梳かして結わえ、着替えて部屋を出た。
「貴方はどうしてオレの『弟』にあんなことをさせようとするのですか?」
「機械仕掛けの神へ頼るにしては、これはきっと些細な事じゃ」
「あの子は神じゃない」
「そうじゃろう。ワシの守るべき生徒の一人で、多大な迷惑をこの老いぼれへ掛けられている二人目の哀れな子供じゃ」
「貴方は哀れだなんて思ってない」
「……そうじゃな。そうかも知れん」
「あの子はきっと怒るし泣くでしょう。でもオレはあの子を慰める事も出来ない」
「恨まれるべき、と?」
「あの子は誰も恨まない。貴方もオレも、自分自身以外は誰も」
青い蝶が羽ばたく。
「オレはあの子が、あの子達が幸せに生きてからここへ来る事を望んでるだけなのに」
「誰だってそうじゃ」
「死ぬ為に生まれる者はオレだけで充分」
「死んでおらぬ」
「そうかもしれない。だからあの子は諦めない」
「やはり些細な事じゃ」
「貴方はオレの『弟』に酷いことをさせる」
「……怒っておられるのかな?」
「うん」
巨大な扉の『前』だった。
「……兄さん」
朝日の差し込む自室のベッドの上でシルビは呟く。枕元へ置いていたウォレットチェーンが、触ってもいないのにチャリ、と音を立てる。
起き上がってそれと腕輪を手に取り、左手首に腕輪を嵌めてベッドから降りた。初夏の終わる夏の日差しが、まだ早い時間であっても眩く部屋を照らしている。
青い蝶の姿が傍にあるかと思ったが、そう思い通りにはいかないらしく見当たらなかった。シルビが昨日テーブルへ置いた白い尾羽が、紅い石の飾りが付いた杖と一緒に放置されている。
髪を梳かして結わえ、着替えて部屋を出た。