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ーほどける香りー
地区予選大会を終え、日本一の称号を目指す決意を新たにした俺たちダチ高相撲部の課題は山積みだった。
個々人のレベルアップは勿論だが、急務はやはり部員の確保だろう。小関が言っていたが、夏のインターハイ団体戦は五人制……つまり最低あと二人はいないと話にならねえ。
そんな俺たちにちょうどいいイベントがやってきた。文化祭だ。相撲と言えばちゃんこ鍋。それで人を集め、勧誘をしようと言う算段だ。
ちなみにこの作戦は火ノ丸と小関の二人だけで練っていたらしい。俺の立場は一体……。
明日の文化祭に備えて練習はいつもより早く終わったが、ちゃんこ鍋の仕込みで結局普段と大して変わらない時間に学校を出ることになった。
オレンジ色だった空が少しずつ暗くなり、校内の灯りがともる。あちこちにテントや屋台がすでに設置され、立て看板や大きなゲートも準備されていた。祭り前特有の浮ついた空気に、柄にもなく少し気分が上向く。
「明日はたくさん人が来るといいのう!」
練習の疲れなど全く感じさせないくらい弾んだ声をあげるのは火ノ丸だ。まったく、気楽なもんだぜ。確かに俺の作った鍋は美味いし、人が集まるのは確かだろう。だがそれが部員確保に繋がるとはあまり思えなかった。
小関も何か言ってやれよ、というつもりで視線を移したがこいつも浮かれているようで、うっとりしたような面持ちを見せた。なんだ?こいつらの頭の中はどうなってんだ。
「あれ、門の近くに誰かいる。誰かを待ってるのかな」
のんびりとした様子で小関が口を開く。校門のそばに立っていたのは俺にとって馴染みのある女だった。
「……久尾津」
俺に名前を呼ばれたそいつは、薄暗い中でもわかるくらい。ぱぁっと花が開くような可憐な笑顔をこちらへ向けた。
「あれ、久尾津さん?なんで?」
「なんじゃ、知り合いか?部長」
「知り合いってわけじゃないけど……俺やユーマさんと同じ三年で、成績優秀だからよく名前も聞くんだよ。
っていうか、ユーマさんも久尾津さんのこと知ってたんですね」
「へえ……よくわからんが、ユーマを待っとったんか?」
何気なく火ノ丸がつぶやいたその言葉に、俺はどきりとする。
なんでこいつがこんな時間に一人でいるんだ。
部活なら部員がいるだろうし、今日は自習室は使えないって確か教室に貼り出されていた。明日の準備か?いや、三年はそこまで気合い入った出し物じゃねえし、尚のこと一人でいるのは妙だ。
ふと、そこで一つの考えが浮かんだ。だがそれは俺にとってあまりにも都合が良すぎるもので、いくらなんでもそれはねえだろと頭を振った。
「小関、火ノ丸、悪いけど先帰っててくんねえか?」
「え、いいですけど」
小関は眉を下げ心配そうな表情を浮かべながら俺と久尾津を交互に見る。俺は小さく、あいつと話したいことがあるだけだ、と告げると得心したように小関は息を吐いた。
「あんまり遅くならないでくださいね、明日は勧誘も頑張らないとですから」
快活にそう告げ、小関は俺の頼んだ通り火ノ丸を連れて学校の外へ向かう。久尾津とすれ違うときに、流石に無視は良くないと思ったのか。軽く頭を下げながら小走りで駆けて行ったのは、少しだけ面白く感じた。
そんな二人の背中が小さくなるまで見送っていると、揶揄うような声音で久尾津が声をかけてきた。
「相撲部に入ったんだね、五條」
「……悪いか?」
「良し悪しをわたしが決めるものじゃないでしょ。
五條が選んで進んだ道なんだから」
「……」
校門近くに設置された街灯があるとはいえ流石に薄暗さが勝る。俺との身長差も相俟って、少し久尾津が俯いただけで暗い影が落ち、その表情を見ることが叶わなくなる。
顔が見えねえだけで、必要以上に不安な気持ちが煽られるみたいだ。
「立ち話もなんだからよ。
どっかで座ろうぜ。近くの公園でいいか?」
こんな暗いところじゃなく、ちゃんと顔を見てゆっくり話がしたい。そう思っての提案だったが、意外とすんなり受け入れられ、日が沈み夜の気配が増してきた道を並んで歩き始めた。
——
今の時期を初夏と表現するが、それでも日が落ちれば冷んやりするものだ。長袖の制服とはいえ、油断はできねーだろ。
街灯に近いベンチの場所をちらりと確認して、久尾津に飲み物の好みを尋ねた。少し悩んだ様子を見せたのち、彼女は「あたたかい紅茶があればそれがいいな」と答える。
俺は軽く手を振って答え、近くの自販機へ走る。二人分の飲み物を手早く買い、腰を下ろしていた久尾津に希望していた紅茶を手渡した。
財布を取り出す素振りを見せたので、いらねえよと制して俺も隣に座る。
久尾津とこうして並ぶのは一ヶ月ぶりなのに何年もこうしてなかったかのような気持ちになる。それくらい久尾津と過ごした時間を俺は大切に思っていたんだろうか。
そんな考えが過ったのち、左から漂う香りに違和感を覚えた。変、ってわけじゃないが馴染みがないと言うか。
「あれ、香水変えたか?」
気がついたら声に出していた、そうとしか思えなかったからだ。校舎裏で並んでいた時とは明らかに異なる、甘さを含む香りが鼻腔をくすぐる。
俺のその問いかけに久尾津は目を見開いて答えた。
「どうしてわかったの?」と。
「どうしても何も……普通わかるだろ。
前は結構爽やかな感じで、今日は……甘い?」
「ちょ、ちょっと……」
「……ッ!わ、悪ぃ!」
無意識のうちに身体を寄せていたらしい。久尾津から指摘されてようやく気付いた俺は思わず身を捩り、彼女と少しだけ距離を置く。
しまった。香りが気になるからって顔を近づけるのはやり過ぎだ。
俺たちの間に沈黙が流れてしまい、どう話を切り出すか考えていると口火を切ったのは久尾津だった。
「さっきの質問は、正解。
香水はね、もう必要無くなったから変えたの」
と、戯けたように笑いながら答える。そんな彼女に妙な印象を受けた。必要がなくなった、ってのは不思議な言い回しだ。
妹の礼奈はよく化粧だの香水だのを買って試している。それら全てを遣い切ることは稀で。大体は飽きただの、思ってたのと違うと言って手放している。
それまで使っていたものに飽きたり、理想と違っていたから使わなくなるのが普通なんじゃないか?
久尾津の言葉の真意が読めず口をつぐんでいると、久尾津がこちらを見上げて、柔らかく微笑んだ。
「五條が相撲を始めて、タバコやめたから」
「……は?」
思わず間抜けな声を上げてしまったが、誰が責められるだろう。冗談抜きで、時間が止まったかと思った。
俺が久尾津の言葉の意味を飲み込めないまま、彼女は話し続ける。曰く。久尾津がいままでつけていた香水は、校舎裏で俺と一緒にいたらタバコの臭いが移り、大人から余計なことを言われたくなくて中和させるためにつけていた。
校舎裏に行かなくなり、また俺が相撲部に入ってタバコを吸わなくなったから中和させるための香水が必要無くなった、らしい。
待て待て、なんだよそれ。
全然知らねえよそんな話。俺の隣にいて、誰にも文句言われないようにするためだったのかよ。
心臓が早鐘を打つ、その音だけがやけに頭の中で響いてくる。
ふと思い至ってしまう。わざわざこんな時間まで、久尾津が俺を待っていた理由について。さっきは無理矢理頭の中から追い出して、考えないようにしたが、もう外に押し出せないほど気持ちは大きく膨らんで。俺は言葉を出すことができなくなっていた。
「この間の大会もね、見たよ。
小関くんみたいな体の大きい人がたくさんいて。そんな人を前にして一歩も退かない五條……すごく眩しくて、かっこよかった。
今の五條の顔、わたしはすごく良いと思う」
心が思わず震えた。今、何て言ったんだこいつは。
この間の大会を見た?俺が初めて出た大会を?
全然勝てず、負けてばかりだったあの姿を?そんな俺が、いい、だと?
久尾津に俺が相撲を取るところを見てもらう、それは俺自身の小さな願いの一つでもあった。だが三年に上がる前のあの日、久尾津との間に溝が生まれ、もう叶うことはないと心のどこかで思っていた。
それなのに久尾津はどこからか大会のことを知り、見てくれたのかよ。負けた俺を見ても、そんな俺も受け止めるのかよ。
俺はぐっ、と強く拳を握った。そうでもしないと嬉しくてどうにかなりそうだったからだ。
「次は新人戦があるんだよね。わたし、それも見に行きたい。
話しかけたり、邪魔したりはしないから、相撲と向き合う五條のことを……。
その、……応援、してもいい?」
応援、という言葉の前に随分な間があった。久尾津自身も伝えたい気持ちを探っているような、そんな迷いを感じるような、間。
久尾津が見てくれる、そんな都合のいい話があっていいのか?そう思うくらい俺にとっては嬉しい提案だった。はずみそうになる声をなんとか抑え込んで、俺は短く「構わねえよ」と答える。
「つっても、まずは部員を集めねえと話にならねえけどな」
「それは死活問題だね。明日の文化祭、何かやるんじゃないの?
賑やかしに行くから頑張ってよ、五條」
「……当たり前だ」
からっとした夜風が甘い香りを乗せてくる。以前とは違う香りはどうしようもなく俺の心をざわつかせ、そして俺を再び奮起させた。
地区予選大会を終え、日本一の称号を目指す決意を新たにした俺たちダチ高相撲部の課題は山積みだった。
個々人のレベルアップは勿論だが、急務はやはり部員の確保だろう。小関が言っていたが、夏のインターハイ団体戦は五人制……つまり最低あと二人はいないと話にならねえ。
そんな俺たちにちょうどいいイベントがやってきた。文化祭だ。相撲と言えばちゃんこ鍋。それで人を集め、勧誘をしようと言う算段だ。
ちなみにこの作戦は火ノ丸と小関の二人だけで練っていたらしい。俺の立場は一体……。
明日の文化祭に備えて練習はいつもより早く終わったが、ちゃんこ鍋の仕込みで結局普段と大して変わらない時間に学校を出ることになった。
オレンジ色だった空が少しずつ暗くなり、校内の灯りがともる。あちこちにテントや屋台がすでに設置され、立て看板や大きなゲートも準備されていた。祭り前特有の浮ついた空気に、柄にもなく少し気分が上向く。
「明日はたくさん人が来るといいのう!」
練習の疲れなど全く感じさせないくらい弾んだ声をあげるのは火ノ丸だ。まったく、気楽なもんだぜ。確かに俺の作った鍋は美味いし、人が集まるのは確かだろう。だがそれが部員確保に繋がるとはあまり思えなかった。
小関も何か言ってやれよ、というつもりで視線を移したがこいつも浮かれているようで、うっとりしたような面持ちを見せた。なんだ?こいつらの頭の中はどうなってんだ。
「あれ、門の近くに誰かいる。誰かを待ってるのかな」
のんびりとした様子で小関が口を開く。校門のそばに立っていたのは俺にとって馴染みのある女だった。
「……久尾津」
俺に名前を呼ばれたそいつは、薄暗い中でもわかるくらい。ぱぁっと花が開くような可憐な笑顔をこちらへ向けた。
「あれ、久尾津さん?なんで?」
「なんじゃ、知り合いか?部長」
「知り合いってわけじゃないけど……俺やユーマさんと同じ三年で、成績優秀だからよく名前も聞くんだよ。
っていうか、ユーマさんも久尾津さんのこと知ってたんですね」
「へえ……よくわからんが、ユーマを待っとったんか?」
何気なく火ノ丸がつぶやいたその言葉に、俺はどきりとする。
なんでこいつがこんな時間に一人でいるんだ。
部活なら部員がいるだろうし、今日は自習室は使えないって確か教室に貼り出されていた。明日の準備か?いや、三年はそこまで気合い入った出し物じゃねえし、尚のこと一人でいるのは妙だ。
ふと、そこで一つの考えが浮かんだ。だがそれは俺にとってあまりにも都合が良すぎるもので、いくらなんでもそれはねえだろと頭を振った。
「小関、火ノ丸、悪いけど先帰っててくんねえか?」
「え、いいですけど」
小関は眉を下げ心配そうな表情を浮かべながら俺と久尾津を交互に見る。俺は小さく、あいつと話したいことがあるだけだ、と告げると得心したように小関は息を吐いた。
「あんまり遅くならないでくださいね、明日は勧誘も頑張らないとですから」
快活にそう告げ、小関は俺の頼んだ通り火ノ丸を連れて学校の外へ向かう。久尾津とすれ違うときに、流石に無視は良くないと思ったのか。軽く頭を下げながら小走りで駆けて行ったのは、少しだけ面白く感じた。
そんな二人の背中が小さくなるまで見送っていると、揶揄うような声音で久尾津が声をかけてきた。
「相撲部に入ったんだね、五條」
「……悪いか?」
「良し悪しをわたしが決めるものじゃないでしょ。
五條が選んで進んだ道なんだから」
「……」
校門近くに設置された街灯があるとはいえ流石に薄暗さが勝る。俺との身長差も相俟って、少し久尾津が俯いただけで暗い影が落ち、その表情を見ることが叶わなくなる。
顔が見えねえだけで、必要以上に不安な気持ちが煽られるみたいだ。
「立ち話もなんだからよ。
どっかで座ろうぜ。近くの公園でいいか?」
こんな暗いところじゃなく、ちゃんと顔を見てゆっくり話がしたい。そう思っての提案だったが、意外とすんなり受け入れられ、日が沈み夜の気配が増してきた道を並んで歩き始めた。
——
今の時期を初夏と表現するが、それでも日が落ちれば冷んやりするものだ。長袖の制服とはいえ、油断はできねーだろ。
街灯に近いベンチの場所をちらりと確認して、久尾津に飲み物の好みを尋ねた。少し悩んだ様子を見せたのち、彼女は「あたたかい紅茶があればそれがいいな」と答える。
俺は軽く手を振って答え、近くの自販機へ走る。二人分の飲み物を手早く買い、腰を下ろしていた久尾津に希望していた紅茶を手渡した。
財布を取り出す素振りを見せたので、いらねえよと制して俺も隣に座る。
久尾津とこうして並ぶのは一ヶ月ぶりなのに何年もこうしてなかったかのような気持ちになる。それくらい久尾津と過ごした時間を俺は大切に思っていたんだろうか。
そんな考えが過ったのち、左から漂う香りに違和感を覚えた。変、ってわけじゃないが馴染みがないと言うか。
「あれ、香水変えたか?」
気がついたら声に出していた、そうとしか思えなかったからだ。校舎裏で並んでいた時とは明らかに異なる、甘さを含む香りが鼻腔をくすぐる。
俺のその問いかけに久尾津は目を見開いて答えた。
「どうしてわかったの?」と。
「どうしても何も……普通わかるだろ。
前は結構爽やかな感じで、今日は……甘い?」
「ちょ、ちょっと……」
「……ッ!わ、悪ぃ!」
無意識のうちに身体を寄せていたらしい。久尾津から指摘されてようやく気付いた俺は思わず身を捩り、彼女と少しだけ距離を置く。
しまった。香りが気になるからって顔を近づけるのはやり過ぎだ。
俺たちの間に沈黙が流れてしまい、どう話を切り出すか考えていると口火を切ったのは久尾津だった。
「さっきの質問は、正解。
香水はね、もう必要無くなったから変えたの」
と、戯けたように笑いながら答える。そんな彼女に妙な印象を受けた。必要がなくなった、ってのは不思議な言い回しだ。
妹の礼奈はよく化粧だの香水だのを買って試している。それら全てを遣い切ることは稀で。大体は飽きただの、思ってたのと違うと言って手放している。
それまで使っていたものに飽きたり、理想と違っていたから使わなくなるのが普通なんじゃないか?
久尾津の言葉の真意が読めず口をつぐんでいると、久尾津がこちらを見上げて、柔らかく微笑んだ。
「五條が相撲を始めて、タバコやめたから」
「……は?」
思わず間抜けな声を上げてしまったが、誰が責められるだろう。冗談抜きで、時間が止まったかと思った。
俺が久尾津の言葉の意味を飲み込めないまま、彼女は話し続ける。曰く。久尾津がいままでつけていた香水は、校舎裏で俺と一緒にいたらタバコの臭いが移り、大人から余計なことを言われたくなくて中和させるためにつけていた。
校舎裏に行かなくなり、また俺が相撲部に入ってタバコを吸わなくなったから中和させるための香水が必要無くなった、らしい。
待て待て、なんだよそれ。
全然知らねえよそんな話。俺の隣にいて、誰にも文句言われないようにするためだったのかよ。
心臓が早鐘を打つ、その音だけがやけに頭の中で響いてくる。
ふと思い至ってしまう。わざわざこんな時間まで、久尾津が俺を待っていた理由について。さっきは無理矢理頭の中から追い出して、考えないようにしたが、もう外に押し出せないほど気持ちは大きく膨らんで。俺は言葉を出すことができなくなっていた。
「この間の大会もね、見たよ。
小関くんみたいな体の大きい人がたくさんいて。そんな人を前にして一歩も退かない五條……すごく眩しくて、かっこよかった。
今の五條の顔、わたしはすごく良いと思う」
心が思わず震えた。今、何て言ったんだこいつは。
この間の大会を見た?俺が初めて出た大会を?
全然勝てず、負けてばかりだったあの姿を?そんな俺が、いい、だと?
久尾津に俺が相撲を取るところを見てもらう、それは俺自身の小さな願いの一つでもあった。だが三年に上がる前のあの日、久尾津との間に溝が生まれ、もう叶うことはないと心のどこかで思っていた。
それなのに久尾津はどこからか大会のことを知り、見てくれたのかよ。負けた俺を見ても、そんな俺も受け止めるのかよ。
俺はぐっ、と強く拳を握った。そうでもしないと嬉しくてどうにかなりそうだったからだ。
「次は新人戦があるんだよね。わたし、それも見に行きたい。
話しかけたり、邪魔したりはしないから、相撲と向き合う五條のことを……。
その、……応援、してもいい?」
応援、という言葉の前に随分な間があった。久尾津自身も伝えたい気持ちを探っているような、そんな迷いを感じるような、間。
久尾津が見てくれる、そんな都合のいい話があっていいのか?そう思うくらい俺にとっては嬉しい提案だった。はずみそうになる声をなんとか抑え込んで、俺は短く「構わねえよ」と答える。
「つっても、まずは部員を集めねえと話にならねえけどな」
「それは死活問題だね。明日の文化祭、何かやるんじゃないの?
賑やかしに行くから頑張ってよ、五條」
「……当たり前だ」
からっとした夜風が甘い香りを乗せてくる。以前とは違う香りはどうしようもなく俺の心をざわつかせ、そして俺を再び奮起させた。
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