番外
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野伏たちと死闘を繰り広げたサムライ達が帰ってきた。
巨大な要塞を堕とし、野伏を追い詰めたことで村人たちは歓喜し。ひと時の穏やかな時間を迎えていた。しかし薬師シオンは心が休まらなかった。
「あの、カンベエ様。キュウゾウ様のお姿が見えませぬが……どうされたのでしょう?」
耐え切れず、そうカンベエに尋ねるとキュウゾウは一人斥候の任務に出たという。勿論キュウゾウの実力や強さをシオンも知っている。だが激しい戦の直後だ。返り討ちにあうことはない手練れであることは承知しているものの。
「……気になるか?」
そう問われ、思わずシオンは頷く。案ずるな、直に戻る。そう言葉をかけ、カンベエは優しく彼女の肩を叩いた。キュウゾウと斬り合ったカンベエが言うのだから大丈夫だろう。彼の言葉を自身へ言い聞かせるようにシオンは大きくうなずいた。
負傷した村人を診てまわりながらシオンは頭の片隅で考えていた。なぜこんなに彼のことが気になってしまうのか。多くの時間を共に過ごした訳ではない。沢山の言葉を交わした訳でもない。会話など数える程度ではあったが、それでも決して冷酷なだけではない彼の魅力に惹かれている。そう結論づけざるを得なかった。
「……困りましたね」
あくまで自分は旅の薬師。此度の戦に同行させていただくだけの関係。この戦が終わればそれで終わりである。そのはずであった。しかし今のシオンはそれ以上の関わりを求め始めている。
こんな望みを抱いてよいだろうか。受け入れられるのだろうか。そんなことを考えながら包帯を巻き終えると村人の声が耳に入った。斥候に出ていたお侍様が戻った、勝負は明日の朝だと。
「……ッ!」
いてもたってもいられなかった。思わず立ち上がるほどに。斥候に出ていた侍が戻った。キュウゾウが帰ってきた。で、あれば早く顔を見たい。顔を見て無事を確認したい。しかしすぐに向かう事は出来なかった。自分は薬師、医薬に関わる人間として、自身の感情一つで動くことは許されない。
ぐっと耐え、他の負傷者への処置へ取り掛かろうとすると村の娘がシオンの肩を叩く。
「薬師様、続きはおら達にお任せくだせぇ」
やり方は教わったし、ひでぇ怪我もしてねぇ。おら達でできるだよ。そう付け加えて微笑まれる。彼女からの申し出は嬉しかったが、また薬師としての矜持が歯止めをかける。
「そげな顔して言われても説得力ねぇだよ。素直に甘えとけ?」
「……よろしいのですか?」
薬師様は人を頼るのがへたくそだなぁと笑い、娘はシオンの背を勢いよく押したのだった。
巨大な要塞を堕とし、野伏を追い詰めたことで村人たちは歓喜し。ひと時の穏やかな時間を迎えていた。しかし薬師シオンは心が休まらなかった。
「あの、カンベエ様。キュウゾウ様のお姿が見えませぬが……どうされたのでしょう?」
耐え切れず、そうカンベエに尋ねるとキュウゾウは一人斥候の任務に出たという。勿論キュウゾウの実力や強さをシオンも知っている。だが激しい戦の直後だ。返り討ちにあうことはない手練れであることは承知しているものの。
「……気になるか?」
そう問われ、思わずシオンは頷く。案ずるな、直に戻る。そう言葉をかけ、カンベエは優しく彼女の肩を叩いた。キュウゾウと斬り合ったカンベエが言うのだから大丈夫だろう。彼の言葉を自身へ言い聞かせるようにシオンは大きくうなずいた。
負傷した村人を診てまわりながらシオンは頭の片隅で考えていた。なぜこんなに彼のことが気になってしまうのか。多くの時間を共に過ごした訳ではない。沢山の言葉を交わした訳でもない。会話など数える程度ではあったが、それでも決して冷酷なだけではない彼の魅力に惹かれている。そう結論づけざるを得なかった。
「……困りましたね」
あくまで自分は旅の薬師。此度の戦に同行させていただくだけの関係。この戦が終わればそれで終わりである。そのはずであった。しかし今のシオンはそれ以上の関わりを求め始めている。
こんな望みを抱いてよいだろうか。受け入れられるのだろうか。そんなことを考えながら包帯を巻き終えると村人の声が耳に入った。斥候に出ていたお侍様が戻った、勝負は明日の朝だと。
「……ッ!」
いてもたってもいられなかった。思わず立ち上がるほどに。斥候に出ていた侍が戻った。キュウゾウが帰ってきた。で、あれば早く顔を見たい。顔を見て無事を確認したい。しかしすぐに向かう事は出来なかった。自分は薬師、医薬に関わる人間として、自身の感情一つで動くことは許されない。
ぐっと耐え、他の負傷者への処置へ取り掛かろうとすると村の娘がシオンの肩を叩く。
「薬師様、続きはおら達にお任せくだせぇ」
やり方は教わったし、ひでぇ怪我もしてねぇ。おら達でできるだよ。そう付け加えて微笑まれる。彼女からの申し出は嬉しかったが、また薬師としての矜持が歯止めをかける。
「そげな顔して言われても説得力ねぇだよ。素直に甘えとけ?」
「……よろしいのですか?」
薬師様は人を頼るのがへたくそだなぁと笑い、娘はシオンの背を勢いよく押したのだった。