番外
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「……参りましたね……」
薬師シオンは真っ白な部屋の中でそうつぶやく。そんな彼女の隣にたたずむ無口な侍は静かに息を吐き、そして壁に張り付けられた白い紙へ視線を移した。『抱擁をしなければこの部屋から出る事かなわず』
「抱擁……ですか……」
ちらり、とシオンは侍・キュウゾウを見つめる。彼は変わらず腕を組み、じっと佇んだままである。ある朝目を開けると二人そろってこの部屋にいたのである。これはきっと夢なのだろう、そうシオンは感じたのだが四畳ほどの広さしかない屋内には畳まれた布団と座布団、そして唯一の出入り口である襖があるだけだった。だがその襖はどうやっても開くことはなく、視線よりも少し高い位置に件の紙が張り付いていたという次第だ。
「きっと夢でしょうし、このままここにいればいつか夢も覚めますよね」
「だが気長に構えることはできないようだ」
えっ、と思わず声が漏れる。キュウゾウにそう指摘され、思わずシオンは張り紙を見直す。よくよく目を通してみると小さな文字で『一刻が過ぎるまでに実行されたし』と明記されていたのだ。時間の制限をされているのならば悠長に構えていられない。この刻限を過ぎればどうなってしまうのか、それは想像することしかできず。シオンは思わずキュウゾウへ向き直る。
ごめんなさいキュウゾウ様、少しだけ我慢してください。そうまくし立てて強引に自分から抱きしめようと思った。歴戦の侍相手に不意打ちのような真似が成功するかはわからなかったが、このまま何もせず待つことはできなかった。
「……!」
「これで開くか」
キュウゾウはそう呟き、両腕に力を込める。言葉と行動がちぐはぐだ、そんなことをぼんやり考えながらシオンは男の腕に包まれる。浅く息をするだけで鼻腔を満たす男の匂いにくらくらとしながら、やはりこれは夢なのだと彼女はそう結論づけることにした。
キュウゾウが自分をこんな情熱的に抱きしめるなど。夢でなければ合点がいかなかった。
薬師シオンは真っ白な部屋の中でそうつぶやく。そんな彼女の隣にたたずむ無口な侍は静かに息を吐き、そして壁に張り付けられた白い紙へ視線を移した。『抱擁をしなければこの部屋から出る事かなわず』
「抱擁……ですか……」
ちらり、とシオンは侍・キュウゾウを見つめる。彼は変わらず腕を組み、じっと佇んだままである。ある朝目を開けると二人そろってこの部屋にいたのである。これはきっと夢なのだろう、そうシオンは感じたのだが四畳ほどの広さしかない屋内には畳まれた布団と座布団、そして唯一の出入り口である襖があるだけだった。だがその襖はどうやっても開くことはなく、視線よりも少し高い位置に件の紙が張り付いていたという次第だ。
「きっと夢でしょうし、このままここにいればいつか夢も覚めますよね」
「だが気長に構えることはできないようだ」
えっ、と思わず声が漏れる。キュウゾウにそう指摘され、思わずシオンは張り紙を見直す。よくよく目を通してみると小さな文字で『一刻が過ぎるまでに実行されたし』と明記されていたのだ。時間の制限をされているのならば悠長に構えていられない。この刻限を過ぎればどうなってしまうのか、それは想像することしかできず。シオンは思わずキュウゾウへ向き直る。
ごめんなさいキュウゾウ様、少しだけ我慢してください。そうまくし立てて強引に自分から抱きしめようと思った。歴戦の侍相手に不意打ちのような真似が成功するかはわからなかったが、このまま何もせず待つことはできなかった。
「……!」
「これで開くか」
キュウゾウはそう呟き、両腕に力を込める。言葉と行動がちぐはぐだ、そんなことをぼんやり考えながらシオンは男の腕に包まれる。浅く息をするだけで鼻腔を満たす男の匂いにくらくらとしながら、やはりこれは夢なのだと彼女はそう結論づけることにした。
キュウゾウが自分をこんな情熱的に抱きしめるなど。夢でなければ合点がいかなかった。