番外
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『これからは私と一緒に旅をしませぬか?』
都を相手取った戦が終わり。各々が別の道を歩むことになり、カンナ村を後にしたその日。旅の同行者であった薬師シオンは笑顔をたたえたサムライからそう持ち掛けられた。
いや、平時であれば穏やかな微笑みを浮かべている男であるが。その時ばかりは異なった。真剣なまなざしを女に向け、どこか緊張したように声も上ずっている。
緊張をしているのはシオンも同じであった。男・ヘイハチと過ごした時間は決して長いわけではないが、彼のことを気にかけ、目で追いかける自分がいたことを自覚していた。
願いが叶うのならば、戦が終わった後も彼の傍にいたいと。そう考えていたことも事実であった。それがまさかこのような形で成就するとは。シオン自身も想定していない事態だった。
『……あの、シオン殿?それで……どうですかね?』
目を見開いたまま何一言も返さない彼女が、自分の誘いを断るのではと不安になったのか。ヘイハチは具合が悪そうにシオンの真意を確認する。彼の呼びかけにはっと我に返り。自身の態度についてまずは謝罪する。そのうえで彼女が出した答えは『もちろんです』という承諾のもの。
ひと際明るい笑顔を見せ、ヘイハチは心から嬉しそうに女の両手を握った。
それからの旅は大変穏やかなものであった。自分の隣に身を任せられる相手がいるという事はこんなにも心強いのだと二人は実感した。共に歩き、食事をし、薬を売り。金が貯まれば宿に泊まり。そんな穏やかな日々を送っていた。
ある日立ち寄った街で宿をとり、いつものように笑顔で米を食べ。少し大きい布団を一緒にかぶる。おやすみなさいと声をかけあっていくばくもしないうちに男は規則正しい呼吸に。
そんな彼の寝顔がたまらなく愛しく思えて、シオンは優しくヘイハチの頬に触れる。
「……ッ!」
伸ばした腕をつかまれ、引き寄せられる。ぎゅう、と音がするほどに強く抱きしめられ。ようやく彼が狸寝入りをしていたとシオンは気づいた。
「シオン殿。……私と、ずっと一緒にいてください」
村を出る時にかけられたのと同じ、真剣な声音だった。気持ちがあふれ返りそうになるのを必死に抑え込む、そんな声。
「…………はい、勿論、ですよ……!」
ヘイハチの気持ちが自分と同じであったことがただただ嬉しくて。シオンは両目に涙を浮かべながら彼の背に腕を回した。
都を相手取った戦が終わり。各々が別の道を歩むことになり、カンナ村を後にしたその日。旅の同行者であった薬師シオンは笑顔をたたえたサムライからそう持ち掛けられた。
いや、平時であれば穏やかな微笑みを浮かべている男であるが。その時ばかりは異なった。真剣なまなざしを女に向け、どこか緊張したように声も上ずっている。
緊張をしているのはシオンも同じであった。男・ヘイハチと過ごした時間は決して長いわけではないが、彼のことを気にかけ、目で追いかける自分がいたことを自覚していた。
願いが叶うのならば、戦が終わった後も彼の傍にいたいと。そう考えていたことも事実であった。それがまさかこのような形で成就するとは。シオン自身も想定していない事態だった。
『……あの、シオン殿?それで……どうですかね?』
目を見開いたまま何一言も返さない彼女が、自分の誘いを断るのではと不安になったのか。ヘイハチは具合が悪そうにシオンの真意を確認する。彼の呼びかけにはっと我に返り。自身の態度についてまずは謝罪する。そのうえで彼女が出した答えは『もちろんです』という承諾のもの。
ひと際明るい笑顔を見せ、ヘイハチは心から嬉しそうに女の両手を握った。
それからの旅は大変穏やかなものであった。自分の隣に身を任せられる相手がいるという事はこんなにも心強いのだと二人は実感した。共に歩き、食事をし、薬を売り。金が貯まれば宿に泊まり。そんな穏やかな日々を送っていた。
ある日立ち寄った街で宿をとり、いつものように笑顔で米を食べ。少し大きい布団を一緒にかぶる。おやすみなさいと声をかけあっていくばくもしないうちに男は規則正しい呼吸に。
そんな彼の寝顔がたまらなく愛しく思えて、シオンは優しくヘイハチの頬に触れる。
「……ッ!」
伸ばした腕をつかまれ、引き寄せられる。ぎゅう、と音がするほどに強く抱きしめられ。ようやく彼が狸寝入りをしていたとシオンは気づいた。
「シオン殿。……私と、ずっと一緒にいてください」
村を出る時にかけられたのと同じ、真剣な声音だった。気持ちがあふれ返りそうになるのを必死に抑え込む、そんな声。
「…………はい、勿論、ですよ……!」
ヘイハチの気持ちが自分と同じであったことがただただ嬉しくて。シオンは両目に涙を浮かべながら彼の背に腕を回した。