長編
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鳴門海峡で眠る僕を目覚めさせてくれたのは、同じ鎧の戦士・遼だった。彼と行動を共にしていた大きな虎・白炎と、両親とはぐれてしまった純とも再会を喜んだ。
見知った存在の笑顔を見ると心が穏やかになっていく。純の無邪気な笑顔は戦闘直後の僕に落ち着きを与えてくれた。
もう一人の同行者・ナスティの姿が見えなかったので彼女の行方を遼に尋ねると、僕より先に目覚めた征士と共に北海道へ向かったという。大雪山で眠る秀を呼び起こしに行ったのだと。
北海道……随分と遠いところへ飛んだものだ。きっと僕のときと同じように妖邪からの襲撃はあるだろう。二人が無事に秀を見つけ、合流できることを願わずにはいられなかった。
「ところで遼、一つ教えてほしいんだけど」
「ん?どうした、伸」
「……あの、あちらの方はどなたなのかな?」
ちらりと視線を向けて僕は小さく遼に尋ねる。僕らから少しだけ離れた場所で一人の女性が純の相手をしてくれていた。
女性、とは言ったが恐らく僕たちと年はそう違わないだろう。身にまとう空気は落ち着いており、年齢をあまり感じさせない。
彼女は話題が自分に振られたことを察知したのか、純と遊ぶ手を少し止め、僕に向かって深々と頭を下げ挨拶をしてくれた。
「ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません。
わたしは久尾津シオン。柳生家にお仕えする使用人です。
千石大学にて柳生博士の元で研究のお手伝いをしておりましたが、妖邪の襲撃を受け、遼さま達に助けて頂きました。
今はナスティお嬢様に代わり、皆さまの支援をすべく同行しております」
シオンと名乗った彼女はそう説明し、再び頭を下げる。
事もなさげに淡々と話す姿がとても凛々しくて。随分肝の据わった人なんだなと僕は思った。
「はじめまして、僕は毛利伸。水滸の鎧に選ばれたサムライトルーパーだ。
これからよろしく、えっと……シオン、さん?」
「いえそんな。呼び捨てで構いません、伸さま」
「わかった。それじゃあお言葉に甘えさせてもらうよ」
様付けで呼ばれるなんてなんだか不思議な感覚だ。胸の奥がむず痒くなるのを感じながら、手を差し出し握手を求める。彼女は一瞬目を見開き、応じてくれた。
「お困りのことがあれば遠慮なく言いつけてくださいね。
可能な限り、お力添え致しますので」
淡々とした様子でシオンは話すが、その声は優しげでもあり。心から僕たちの身を案じてくれているのが伝わった。
「お疲れでしょうから、ひとまず休息を取りましょう。
柳生博士が所有している別荘へ向かいませんか?」
道中で精のつく食事もとりましょうね、と言いながら彼女は自然に僕に寄り添ってくれる。僕より頭一つほど小柄な彼女に体を預けるのは少しためらわれたが、「遠慮しなくて大丈夫ですよ」と僕にだけ聞こえる小さな声でシオンが囁く。
「ありがとう」
どうやら僕は自分が思っていたよりも疲弊していたようだ。シオンからの申し出に甘えさせてもらうことにし、ゆっくりと歩き始めた。
見知った存在の笑顔を見ると心が穏やかになっていく。純の無邪気な笑顔は戦闘直後の僕に落ち着きを与えてくれた。
もう一人の同行者・ナスティの姿が見えなかったので彼女の行方を遼に尋ねると、僕より先に目覚めた征士と共に北海道へ向かったという。大雪山で眠る秀を呼び起こしに行ったのだと。
北海道……随分と遠いところへ飛んだものだ。きっと僕のときと同じように妖邪からの襲撃はあるだろう。二人が無事に秀を見つけ、合流できることを願わずにはいられなかった。
「ところで遼、一つ教えてほしいんだけど」
「ん?どうした、伸」
「……あの、あちらの方はどなたなのかな?」
ちらりと視線を向けて僕は小さく遼に尋ねる。僕らから少しだけ離れた場所で一人の女性が純の相手をしてくれていた。
女性、とは言ったが恐らく僕たちと年はそう違わないだろう。身にまとう空気は落ち着いており、年齢をあまり感じさせない。
彼女は話題が自分に振られたことを察知したのか、純と遊ぶ手を少し止め、僕に向かって深々と頭を下げ挨拶をしてくれた。
「ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません。
わたしは久尾津シオン。柳生家にお仕えする使用人です。
千石大学にて柳生博士の元で研究のお手伝いをしておりましたが、妖邪の襲撃を受け、遼さま達に助けて頂きました。
今はナスティお嬢様に代わり、皆さまの支援をすべく同行しております」
シオンと名乗った彼女はそう説明し、再び頭を下げる。
事もなさげに淡々と話す姿がとても凛々しくて。随分肝の据わった人なんだなと僕は思った。
「はじめまして、僕は毛利伸。水滸の鎧に選ばれたサムライトルーパーだ。
これからよろしく、えっと……シオン、さん?」
「いえそんな。呼び捨てで構いません、伸さま」
「わかった。それじゃあお言葉に甘えさせてもらうよ」
様付けで呼ばれるなんてなんだか不思議な感覚だ。胸の奥がむず痒くなるのを感じながら、手を差し出し握手を求める。彼女は一瞬目を見開き、応じてくれた。
「お困りのことがあれば遠慮なく言いつけてくださいね。
可能な限り、お力添え致しますので」
淡々とした様子でシオンは話すが、その声は優しげでもあり。心から僕たちの身を案じてくれているのが伝わった。
「お疲れでしょうから、ひとまず休息を取りましょう。
柳生博士が所有している別荘へ向かいませんか?」
道中で精のつく食事もとりましょうね、と言いながら彼女は自然に僕に寄り添ってくれる。僕より頭一つほど小柄な彼女に体を預けるのは少しためらわれたが、「遠慮しなくて大丈夫ですよ」と僕にだけ聞こえる小さな声でシオンが囁く。
「ありがとう」
どうやら僕は自分が思っていたよりも疲弊していたようだ。シオンからの申し出に甘えさせてもらうことにし、ゆっくりと歩き始めた。
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