P5R
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「シオン、何読んでるの?
なになに……東京下町巡りか。あ、四茶のことも書かれているね」
そう言って同居人はわたしの隣に腰を下ろす。彼はシャワーを浴びた後のようで、シャンプーの香りがふわりと漂ってきた。
「実はあんまり行ったことがなくてさ、四茶。今度の週末出かけようかと思って。
……そういえば最近そっちの方よく行くよね、おすすめとか知ってる?」
「え?……そう、だな……」
すらりと長い指を顎に当て、吾郎は思考を巡らせる。少し伏せ気味の目元を飾る長いまつ毛、その一本一本まで観察できる距離感。
なんだか夢みたいだなぁ、と唐突にそう思った。こうして穏やかな時間を彼、明智吾郎と過ごせるなんて。現実味がないというか。誰かの願望の中に存在しているみたいだ。なんて、ロマンティックな想像をしてしまう。
それくらいに非現実的な時間に思えて仕方ないのだ。変だね、ほっぺをつねったら痛みはあるし。ちゃんとわたしはここに存在しているのに。
「四軒茶屋ならやっぱりここ……喫茶ルブランかな。コーヒーとカレーが評判いいよ。
落ち着いててレトロな雰囲気で、静かに過ごしたいならいいと思う。
……もし行くなら、僕も付き添おうか?」
あまり見ないような面持ちで吾郎はそう提案する。なんだか珍しいな。彼がそうやって同行を自分から持ちかけてくるなんて。
基本的にわたしたちは自由だ。各々が好きなように行動をする。それは同棲前から変わってなくて。相手の行き先や予定に興味があればついて行き、都合がつかなければまた次の機会。
そう、行く前に都合をつけて合わせにくる、というのはとても新鮮に思えたのだ。
「……その店、路地の入り組んだところにあるからさ。僕なら場所も知ってるし、案内できるから。どうかな?」
自然な様子で彼は提案を重ねる。きっとわたしの様子を見て、だろう。とても自然に同行を促す吾郎を見て、余計に興味が湧いた。
元々四茶散策をするつもりではあったけど、やる気が増したと言うか。喫茶ルブランにはきっと何かがあるのだろう、さすがのわたしも理解できた。
「ううん、大丈夫だよ。スマホもあるし、それにわたしが散歩好きなの知ってるでしょ。
もし迷ったとしてもそれが楽しいんだから。
吾郎もやることあるって言ってたし、そっちを片付けたらどうかな」
そう言うと彼はむっと口を結び、こちらを見つめ返す。明らかに納得していない様子だ、そんなに一人で行って欲しくないのだろうか。と、なると余計に興味が増してしまうのが人の性。
「ふふ、じゃあ今度案内してくれる?一緒に行こっか」
「ああ。……土曜日でも構わない?」
「大丈夫。あ、お昼少し前から行こうよ。噂のカレー、ちょっと食べてみたいな!」
吾郎は少しだけ目を細めて応える、それは承諾と同じ意味だと知っているのでわたしは胸があたたかくなった。
週末は吾郎とお出かけだ、楽しみだな。
年が明けてからの彼はなんだかずっと気を張っているように見えるから、少しでも息抜きになればいいんだけど。
なになに……東京下町巡りか。あ、四茶のことも書かれているね」
そう言って同居人はわたしの隣に腰を下ろす。彼はシャワーを浴びた後のようで、シャンプーの香りがふわりと漂ってきた。
「実はあんまり行ったことがなくてさ、四茶。今度の週末出かけようかと思って。
……そういえば最近そっちの方よく行くよね、おすすめとか知ってる?」
「え?……そう、だな……」
すらりと長い指を顎に当て、吾郎は思考を巡らせる。少し伏せ気味の目元を飾る長いまつ毛、その一本一本まで観察できる距離感。
なんだか夢みたいだなぁ、と唐突にそう思った。こうして穏やかな時間を彼、明智吾郎と過ごせるなんて。現実味がないというか。誰かの願望の中に存在しているみたいだ。なんて、ロマンティックな想像をしてしまう。
それくらいに非現実的な時間に思えて仕方ないのだ。変だね、ほっぺをつねったら痛みはあるし。ちゃんとわたしはここに存在しているのに。
「四軒茶屋ならやっぱりここ……喫茶ルブランかな。コーヒーとカレーが評判いいよ。
落ち着いててレトロな雰囲気で、静かに過ごしたいならいいと思う。
……もし行くなら、僕も付き添おうか?」
あまり見ないような面持ちで吾郎はそう提案する。なんだか珍しいな。彼がそうやって同行を自分から持ちかけてくるなんて。
基本的にわたしたちは自由だ。各々が好きなように行動をする。それは同棲前から変わってなくて。相手の行き先や予定に興味があればついて行き、都合がつかなければまた次の機会。
そう、行く前に都合をつけて合わせにくる、というのはとても新鮮に思えたのだ。
「……その店、路地の入り組んだところにあるからさ。僕なら場所も知ってるし、案内できるから。どうかな?」
自然な様子で彼は提案を重ねる。きっとわたしの様子を見て、だろう。とても自然に同行を促す吾郎を見て、余計に興味が湧いた。
元々四茶散策をするつもりではあったけど、やる気が増したと言うか。喫茶ルブランにはきっと何かがあるのだろう、さすがのわたしも理解できた。
「ううん、大丈夫だよ。スマホもあるし、それにわたしが散歩好きなの知ってるでしょ。
もし迷ったとしてもそれが楽しいんだから。
吾郎もやることあるって言ってたし、そっちを片付けたらどうかな」
そう言うと彼はむっと口を結び、こちらを見つめ返す。明らかに納得していない様子だ、そんなに一人で行って欲しくないのだろうか。と、なると余計に興味が増してしまうのが人の性。
「ふふ、じゃあ今度案内してくれる?一緒に行こっか」
「ああ。……土曜日でも構わない?」
「大丈夫。あ、お昼少し前から行こうよ。噂のカレー、ちょっと食べてみたいな!」
吾郎は少しだけ目を細めて応える、それは承諾と同じ意味だと知っているのでわたしは胸があたたかくなった。
週末は吾郎とお出かけだ、楽しみだな。
年が明けてからの彼はなんだかずっと気を張っているように見えるから、少しでも息抜きになればいいんだけど。