秋山渉
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「なあ寧々子、少しあいつらと話をしてもいいか?」
あいつら、と言うのはプロジェクトDのダブルエース。藤原拓海くんと高橋啓介くんの二人だ。住んでいる県が違うし、週末の彼等は遠征で忙しいためこうして直接顔を合わせる機会はそう多くないのだ。渉くんは藤原くん、高橋くんのどちらとも戦い、親交を深めてきた。だからこんな機会は彼にとって大切なものなのだ。
「いいよ、ゆっくり話してきてよ。
あそこの自販機あたりで待ってるね」
「わかった。……悪いな」
そう言って渉くんは目を細め、藤原くんたちの元へ駆け寄った。まるで学生……高校生のようにはしゃぎ、拳を合わせ、笑う。見ているこちらもなんだかあたたかい気持ちになってくる、、そんな光景だ。
これは長話になるだろうな、と思いつつ自販機にコインを入れる。背の高いカフェオレを購入し、東屋の柱にもたれてひと息ついた。
ぱっと目を惹く明るさと力強さを感じさせる高橋啓介くん。物静かだけど不思議な魅力を放つ藤原拓海くん。会ったのはついこの間だったはずなのに、またレベルアップしたんだろう。走りに関してわたしは素人だけど、見に纏う圧というか、オーラのようなものが感じられた。
一般人が彼らに憧れて「ニセモノ」を名乗るのもやむなしかもね、とぼんやり考えながらわたしは少し甘めのカフェオレで喉を潤わせた。
すると途端にわたしの視界が遮られ、ねっとりとまとわりつくような声をかけられた。
「ねぇおねーさん一人?
よかったらオレらの車に乗ってドライブしねえ?」
「プロジェクトDのあいつらほどじゃないけど、オレらもいい腕してっからさ」
「……」
浅黒い肌の見知らぬ男達は、男子高校生のようにじゃれあう渉くんたちを眺めていたわたしを邪魔しただけでなく。逃がさないぞと言わんばかりに両隣を抑える。一人はじっと顔を覗き込み、もう一人は値踏みするような目つきでこちらを見つめる。
鼻の下を伸ばし、荒くなる息遣いを隠しながら懸命に声をかけ続けるこの人たちをどうしたものかしら、と思案し。ポケットに入れていた携帯電話に触れる。手元なんて見なくてもわかる、あらかじめ設定していたボタンを推し、数秒だけ待ってゆっくり口を開いた。
「一人じゃないのよ、ごめんなさいね」
簡単だ、必要以上に相手にしない。それが最適解だと思った。今までのわたしなら、相手を逆上させないようにうまく取り入り。隙を見て逃げ出す……そういう手段を選んできた。だけどこれは頼りになるのは自分だけ、だから選び続けた方法。
でも今は一人じゃない。
厄介な荷物を「少しなら持ってやる」と言ってくれる存在が、手を伸ばせば届く場所に居てくれる。
「なあ。オレの連れに、何か用でもあんのか?」
「え、あ、い……いやァ……」
「で?用事は?」
「いや!なんでもないっす、はい!」
まさしく脱兎、その言葉が相応しいくらいの勢いで男二人はこの場から走り去った。「んだよ、ったく」とまだ不機嫌な渉くんにわたしは笑いかける。
「ありがとう、渉くん」
「この距離で呼び出されるとは思わなかったけどな」
そう言って彼は携帯電話を掲げ、ディスプレイ画面を見せつける。着信アリ、寧々子と表示されたそれを見てわたしは目を細めた。
あの状況でわたしが声を荒げれば男二人がどんな行動を取るかわからないし。かと言って媚を売るように擦り寄るのもアウト。彼らの車に乗せられたら逃げ出すことは難しいだろうし。
そこで思いついたのが携帯電話の短縮ダイヤルを使って助けを求める方法だった。藤原くん達と話している最中なのはわかっていたし、迷惑かもしれないと思ったけど。でも渉くんは手を伸ばせば必ず掴んでくれると信じていたから。
「やっぱり渉くんはかっこいいよ」
「……あ?
何言ってんだよ」
高校時代からそうだもの。
秋山渉くんは、わたしのことを一人になんてしなかった。とても自然にそばにいてくれる。
「はいこれ、助けてくれたお礼にあげる」
「なんだよ、飲みかけじゃねーか。ふざけんな」
「えぇ?わたしとの間接チューだよ?」
「いらねぇよそんなもん」
そんな軽口を叩きながら、わたしは彼の隣に立てることの幸せを噛み締めた。
あいつら、と言うのはプロジェクトDのダブルエース。藤原拓海くんと高橋啓介くんの二人だ。住んでいる県が違うし、週末の彼等は遠征で忙しいためこうして直接顔を合わせる機会はそう多くないのだ。渉くんは藤原くん、高橋くんのどちらとも戦い、親交を深めてきた。だからこんな機会は彼にとって大切なものなのだ。
「いいよ、ゆっくり話してきてよ。
あそこの自販機あたりで待ってるね」
「わかった。……悪いな」
そう言って渉くんは目を細め、藤原くんたちの元へ駆け寄った。まるで学生……高校生のようにはしゃぎ、拳を合わせ、笑う。見ているこちらもなんだかあたたかい気持ちになってくる、、そんな光景だ。
これは長話になるだろうな、と思いつつ自販機にコインを入れる。背の高いカフェオレを購入し、東屋の柱にもたれてひと息ついた。
ぱっと目を惹く明るさと力強さを感じさせる高橋啓介くん。物静かだけど不思議な魅力を放つ藤原拓海くん。会ったのはついこの間だったはずなのに、またレベルアップしたんだろう。走りに関してわたしは素人だけど、見に纏う圧というか、オーラのようなものが感じられた。
一般人が彼らに憧れて「ニセモノ」を名乗るのもやむなしかもね、とぼんやり考えながらわたしは少し甘めのカフェオレで喉を潤わせた。
すると途端にわたしの視界が遮られ、ねっとりとまとわりつくような声をかけられた。
「ねぇおねーさん一人?
よかったらオレらの車に乗ってドライブしねえ?」
「プロジェクトDのあいつらほどじゃないけど、オレらもいい腕してっからさ」
「……」
浅黒い肌の見知らぬ男達は、男子高校生のようにじゃれあう渉くんたちを眺めていたわたしを邪魔しただけでなく。逃がさないぞと言わんばかりに両隣を抑える。一人はじっと顔を覗き込み、もう一人は値踏みするような目つきでこちらを見つめる。
鼻の下を伸ばし、荒くなる息遣いを隠しながら懸命に声をかけ続けるこの人たちをどうしたものかしら、と思案し。ポケットに入れていた携帯電話に触れる。手元なんて見なくてもわかる、あらかじめ設定していたボタンを推し、数秒だけ待ってゆっくり口を開いた。
「一人じゃないのよ、ごめんなさいね」
簡単だ、必要以上に相手にしない。それが最適解だと思った。今までのわたしなら、相手を逆上させないようにうまく取り入り。隙を見て逃げ出す……そういう手段を選んできた。だけどこれは頼りになるのは自分だけ、だから選び続けた方法。
でも今は一人じゃない。
厄介な荷物を「少しなら持ってやる」と言ってくれる存在が、手を伸ばせば届く場所に居てくれる。
「なあ。オレの連れに、何か用でもあんのか?」
「え、あ、い……いやァ……」
「で?用事は?」
「いや!なんでもないっす、はい!」
まさしく脱兎、その言葉が相応しいくらいの勢いで男二人はこの場から走り去った。「んだよ、ったく」とまだ不機嫌な渉くんにわたしは笑いかける。
「ありがとう、渉くん」
「この距離で呼び出されるとは思わなかったけどな」
そう言って彼は携帯電話を掲げ、ディスプレイ画面を見せつける。着信アリ、寧々子と表示されたそれを見てわたしは目を細めた。
あの状況でわたしが声を荒げれば男二人がどんな行動を取るかわからないし。かと言って媚を売るように擦り寄るのもアウト。彼らの車に乗せられたら逃げ出すことは難しいだろうし。
そこで思いついたのが携帯電話の短縮ダイヤルを使って助けを求める方法だった。藤原くん達と話している最中なのはわかっていたし、迷惑かもしれないと思ったけど。でも渉くんは手を伸ばせば必ず掴んでくれると信じていたから。
「やっぱり渉くんはかっこいいよ」
「……あ?
何言ってんだよ」
高校時代からそうだもの。
秋山渉くんは、わたしのことを一人になんてしなかった。とても自然にそばにいてくれる。
「はいこれ、助けてくれたお礼にあげる」
「なんだよ、飲みかけじゃねーか。ふざけんな」
「えぇ?わたしとの間接チューだよ?」
「いらねぇよそんなもん」
そんな軽口を叩きながら、わたしは彼の隣に立てることの幸せを噛み締めた。