秋山渉
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「ねえ渉くん、プロジェクトDのフジワラタクミって、あの藤原拓海くんのことかな?」
「なんだその頭の悪い質問は」
「口、悪過ぎない?」
むっとした面持ちで真向かいに腰掛けるシオンは呟く。事実を述べただけだと思っているので、俺は何も弁明せずアイスコーヒーに手を伸ばした。
珍しく俺の走りを見たい、と峠に付き合ってくれたシオンとファミレスで休憩していると、唐突に切り出されたのが先刻の言葉だ。そもそもシオンは藤原のことを知っているはずだろう。少し前、俺と従兄弟の延彦を中心として北関東の走り屋で連合チームを組み。あのプロジェクトD相手に激しいバトルを繰り広げたばかりだ。雨の中の一戦は彼女も忙しいながら見にきてくれたと言うのに。
だがよく話を聞いてみると雲行きが怪しくなる。シオンの勤務先の後輩が、フジワラタクミと名乗る男にナンパされ、手酷い扱いを受けたのだと。
「後輩も浮かれちゃったんだと思うし、あの子にも落ち度が全くないかと言われたら苦しいんだけど。
でもね、後輩から聞いたフジワラくんと。渉くんが話してくれる藤原くんがどうしても同じ人物とは思えなくて。
何か変なことになってないかなって思ったの。ねえ渉くん知らないかな?」
「って言ってもなぁ……」
なるほど、こいつはこの話をしたくて峠についてきたのか。おかしいと思ったぜ……普段全然ついてこねえのに、自分から一緒に行くって言ってきたから妙だなとは思ったんだ。
そんな俺の心境を察知したのか、シオンは片目を閉じて「渉くんだけが頼りなの」と懇願する姿
勢を見せる。不覚にも心臓が跳ねたのは内緒だ。わざとらしく大きく息を吐き、「俺からも聞いてみる」と答えるとシオンは満面の笑顔を見せた。この顔に相変わらず俺は弱いんだよな、高校の頃から。
ーーーーー
ある日恋人が持ちかけてきたフジワラタクミの話が気になり、オレなりに方々調べてみるとやはりプロジェクトDの偽物ではないかという結論に辿り着いた。
シオンから話を聞いてすぐ、レッドサンズの渉外役・上有に連絡を取ると先方もこの件に頭を抱えているようで。電話越しの声なのに、疲れているのが手に取るように伝わった。
『そろそろカーナンバーから偽物の名前や住所が割れると思うので、こちらで手を打つつもりですが……』
「待った。……なぁそれ、俺も一枚噛んでもいいか?」
『……?どうしてです?』
「そりゃあ決まってるだろ」
オレを始め、北関東の走り屋と激しいバトルの末、プロジェクトDの名前は広く知れ渡ったんだ。その美味しいところだけを啜ろうなんて奴をのさばらせたくねえだろ。
オレを負かした藤原拓海と高橋啓介の名前を騙るなんて許せるはずもなかった。
その数日後、上祐から連絡が入った、ニセモノの身元が割れたと。近いうちに釘を刺しに行く、とも。そこで俺はあるアイデアを持ちかけた。藤原達と、そしてバトルをした俺たち走り屋で作ったプロジェクトDの名声を悪用する奴に一泡吹かせる。そんな案を。
『なるほど、悪くないですね。一度こちらでも詰めてみます、助かりますよ秋山さん。
いざお願いするとなったら声をかけると思いますが、その時は力を貸してもらえますか?』
「ああ勿論。最初からそのつもりだ」
『ははっ、心強いです』
電話の向こうで上有は笑う。顔は見えないが、声に圧のようなものを感じた。アイツも腹に据えかねているということだろう。無理もない。
通話終了のボタンを押し、少し長く息を吐く。この俺を負かした二人の名前を騙るニセモノ達もまさかこんな事になるとは考えなかっただろう。心の底から反省させてやらねーとな。そんなことを考えて、俺は拳を強く握りしめた。
「シオン、この間話してたニセモノのことなんだけどよ」
俺にこの事態を教えてくれた彼女に話を切り出すと、シオンは真面目な面持ちになった。なんだかんだでこいつも例の後輩が心配だったのだろう。「どうなったの?」と随分真剣な声色で急かされた。
「近いうちに化けの皮を剥がしに行くつもりだ。……どうだ?ついてくるか?」
「……渉くんたら意地悪だね。答えがわかってるのに尋ねるなんて」
当然行くよ、隣に乗せてよね?そう言って彼女は不敵に微笑む。
「あの藤原くんと高橋くんのニセモノでしょう?どんなものかこの目で拝まないと」
「遊びに行くんじゃねーぞ」
「ええ。渉くんがヒートアップしないように見ておかないとだし。
ああでも久しぶりに走り屋の渉くんをみれるのはちょっと楽しみかも」
少しはにかみながら呟くシオンに一瞬どきりとしてしまい。俺はなんとなく視線を外した。
「なんだその頭の悪い質問は」
「口、悪過ぎない?」
むっとした面持ちで真向かいに腰掛けるシオンは呟く。事実を述べただけだと思っているので、俺は何も弁明せずアイスコーヒーに手を伸ばした。
珍しく俺の走りを見たい、と峠に付き合ってくれたシオンとファミレスで休憩していると、唐突に切り出されたのが先刻の言葉だ。そもそもシオンは藤原のことを知っているはずだろう。少し前、俺と従兄弟の延彦を中心として北関東の走り屋で連合チームを組み。あのプロジェクトD相手に激しいバトルを繰り広げたばかりだ。雨の中の一戦は彼女も忙しいながら見にきてくれたと言うのに。
だがよく話を聞いてみると雲行きが怪しくなる。シオンの勤務先の後輩が、フジワラタクミと名乗る男にナンパされ、手酷い扱いを受けたのだと。
「後輩も浮かれちゃったんだと思うし、あの子にも落ち度が全くないかと言われたら苦しいんだけど。
でもね、後輩から聞いたフジワラくんと。渉くんが話してくれる藤原くんがどうしても同じ人物とは思えなくて。
何か変なことになってないかなって思ったの。ねえ渉くん知らないかな?」
「って言ってもなぁ……」
なるほど、こいつはこの話をしたくて峠についてきたのか。おかしいと思ったぜ……普段全然ついてこねえのに、自分から一緒に行くって言ってきたから妙だなとは思ったんだ。
そんな俺の心境を察知したのか、シオンは片目を閉じて「渉くんだけが頼りなの」と懇願する姿
勢を見せる。不覚にも心臓が跳ねたのは内緒だ。わざとらしく大きく息を吐き、「俺からも聞いてみる」と答えるとシオンは満面の笑顔を見せた。この顔に相変わらず俺は弱いんだよな、高校の頃から。
ーーーーー
ある日恋人が持ちかけてきたフジワラタクミの話が気になり、オレなりに方々調べてみるとやはりプロジェクトDの偽物ではないかという結論に辿り着いた。
シオンから話を聞いてすぐ、レッドサンズの渉外役・上有に連絡を取ると先方もこの件に頭を抱えているようで。電話越しの声なのに、疲れているのが手に取るように伝わった。
『そろそろカーナンバーから偽物の名前や住所が割れると思うので、こちらで手を打つつもりですが……』
「待った。……なぁそれ、俺も一枚噛んでもいいか?」
『……?どうしてです?』
「そりゃあ決まってるだろ」
オレを始め、北関東の走り屋と激しいバトルの末、プロジェクトDの名前は広く知れ渡ったんだ。その美味しいところだけを啜ろうなんて奴をのさばらせたくねえだろ。
オレを負かした藤原拓海と高橋啓介の名前を騙るなんて許せるはずもなかった。
その数日後、上祐から連絡が入った、ニセモノの身元が割れたと。近いうちに釘を刺しに行く、とも。そこで俺はあるアイデアを持ちかけた。藤原達と、そしてバトルをした俺たち走り屋で作ったプロジェクトDの名声を悪用する奴に一泡吹かせる。そんな案を。
『なるほど、悪くないですね。一度こちらでも詰めてみます、助かりますよ秋山さん。
いざお願いするとなったら声をかけると思いますが、その時は力を貸してもらえますか?』
「ああ勿論。最初からそのつもりだ」
『ははっ、心強いです』
電話の向こうで上有は笑う。顔は見えないが、声に圧のようなものを感じた。アイツも腹に据えかねているということだろう。無理もない。
通話終了のボタンを押し、少し長く息を吐く。この俺を負かした二人の名前を騙るニセモノ達もまさかこんな事になるとは考えなかっただろう。心の底から反省させてやらねーとな。そんなことを考えて、俺は拳を強く握りしめた。
「シオン、この間話してたニセモノのことなんだけどよ」
俺にこの事態を教えてくれた彼女に話を切り出すと、シオンは真面目な面持ちになった。なんだかんだでこいつも例の後輩が心配だったのだろう。「どうなったの?」と随分真剣な声色で急かされた。
「近いうちに化けの皮を剥がしに行くつもりだ。……どうだ?ついてくるか?」
「……渉くんたら意地悪だね。答えがわかってるのに尋ねるなんて」
当然行くよ、隣に乗せてよね?そう言って彼女は不敵に微笑む。
「あの藤原くんと高橋くんのニセモノでしょう?どんなものかこの目で拝まないと」
「遊びに行くんじゃねーぞ」
「ええ。渉くんがヒートアップしないように見ておかないとだし。
ああでも久しぶりに走り屋の渉くんをみれるのはちょっと楽しみかも」
少しはにかみながら呟くシオンに一瞬どきりとしてしまい。俺はなんとなく視線を外した。