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「なんだ、お前も結局湘北にしたのか」
「そういう言い方ないでしょ?ここが通いやすかったんだもん」
「赤木、そういう言い方ないだろ?シオンも落ち着いて」
「全く……木暮は久尾津に甘い」
「わたしの味方は公延だけだよ~ありがとう」
「はいはい」
体格差のありすぎる三人が桜並木を歩く。それぞれの胸元には淡い桃色のコサージュがつけられており、「ご入学おめでとうございます」の文字が。まだ汚れていない校章が春の陽射しを受けて輝いた。
甘えるように微笑む黒髪の女生徒と、高校生離れした体格の男子生徒から視線を向けられた眼鏡の似合う生徒、木暮公延は困ったように微笑む。だからといって適当に聞き流すわけではなく、彼が「赤木」と呼ぶ男子にはあまり邪険にするなよ。と制し。「久尾津」と呼ぶ少女には、俺だけが味方なんてそういうことを言わない、とやんわり咎めた。
木暮が、公延がそう言うなら。と大人しく引き下がる二人と、それを見て先刻より優しい笑みを浮かべる木暮。中学時代からの友人関係である三人にとってはいつも通りの、なじみのあるやり取りだった。
「ねえ、剛憲も公延も。やっぱり入るんでしょ?バスケ部。
安西先生っていう有名な監督がいるんだよね?」
「もちろん!」
「ああ」
高校バスケで全国制覇をすること、それを夢として掲げてきた赤木。その夢に共感した木暮にとって久尾津からかけられた問いかけは答えるまでもない。当たり前のものだった。
それは久尾津自身も理解していたようで、だよね。と目を細める。彼らが全国大会での優勝を目指し切磋琢磨する姿を、中学時代から見守っていたのだ。全国大会という輝かしい舞台でプレーをする二人を応援しに行く、それが久尾津にとっての小さな夢だった。
残念ながら彼らの在籍していた北村中は強豪校とは呼べず。今日から通う湘北高校もバスケが強いとは決して言えなかった。だが先刻話題にも上がった安西監督は名門大学などで指揮をとっていたことでも知られる、その世界では名の知れた存在である。
そんな先生が率いるチームなら予選敗退の続いている湘北バスケ部を全国に通用するまでに育て上げるのではないか。
そんなことを考えて、久尾津は一人の男を思い出した。入学式の後、クラスでの自己紹介で赤木と同じ夢を掲げた男のことを。
「……どうしたんだ、シオン。突然固まって」
「あ、えっと……」
突如言葉を飲み込んだ久尾津を案じるように木暮が顔を覗き込む。わたしのクラスにね、いたんだよ。あの武石中のスーパースターが。
そう話そうとして久尾津はまた口を噤む。やめておこう。入部届を出しに行くか、体験入部の折りにすぐ出会うだろうと思ったのだ。
わたしの口から聞かされるより、実際自分たちの目で確認したほうがいいに決まっている。
「なんでもない」
武石中の三井寿。
彼の存在が赤木の、木暮の助けになる事を。この時の久尾津は心から信じていた。
「そういう言い方ないでしょ?ここが通いやすかったんだもん」
「赤木、そういう言い方ないだろ?シオンも落ち着いて」
「全く……木暮は久尾津に甘い」
「わたしの味方は公延だけだよ~ありがとう」
「はいはい」
体格差のありすぎる三人が桜並木を歩く。それぞれの胸元には淡い桃色のコサージュがつけられており、「ご入学おめでとうございます」の文字が。まだ汚れていない校章が春の陽射しを受けて輝いた。
甘えるように微笑む黒髪の女生徒と、高校生離れした体格の男子生徒から視線を向けられた眼鏡の似合う生徒、木暮公延は困ったように微笑む。だからといって適当に聞き流すわけではなく、彼が「赤木」と呼ぶ男子にはあまり邪険にするなよ。と制し。「久尾津」と呼ぶ少女には、俺だけが味方なんてそういうことを言わない、とやんわり咎めた。
木暮が、公延がそう言うなら。と大人しく引き下がる二人と、それを見て先刻より優しい笑みを浮かべる木暮。中学時代からの友人関係である三人にとってはいつも通りの、なじみのあるやり取りだった。
「ねえ、剛憲も公延も。やっぱり入るんでしょ?バスケ部。
安西先生っていう有名な監督がいるんだよね?」
「もちろん!」
「ああ」
高校バスケで全国制覇をすること、それを夢として掲げてきた赤木。その夢に共感した木暮にとって久尾津からかけられた問いかけは答えるまでもない。当たり前のものだった。
それは久尾津自身も理解していたようで、だよね。と目を細める。彼らが全国大会での優勝を目指し切磋琢磨する姿を、中学時代から見守っていたのだ。全国大会という輝かしい舞台でプレーをする二人を応援しに行く、それが久尾津にとっての小さな夢だった。
残念ながら彼らの在籍していた北村中は強豪校とは呼べず。今日から通う湘北高校もバスケが強いとは決して言えなかった。だが先刻話題にも上がった安西監督は名門大学などで指揮をとっていたことでも知られる、その世界では名の知れた存在である。
そんな先生が率いるチームなら予選敗退の続いている湘北バスケ部を全国に通用するまでに育て上げるのではないか。
そんなことを考えて、久尾津は一人の男を思い出した。入学式の後、クラスでの自己紹介で赤木と同じ夢を掲げた男のことを。
「……どうしたんだ、シオン。突然固まって」
「あ、えっと……」
突如言葉を飲み込んだ久尾津を案じるように木暮が顔を覗き込む。わたしのクラスにね、いたんだよ。あの武石中のスーパースターが。
そう話そうとして久尾津はまた口を噤む。やめておこう。入部届を出しに行くか、体験入部の折りにすぐ出会うだろうと思ったのだ。
わたしの口から聞かされるより、実際自分たちの目で確認したほうがいいに決まっている。
「なんでもない」
武石中の三井寿。
彼の存在が赤木の、木暮の助けになる事を。この時の久尾津は心から信じていた。
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