雑多
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
地球からまとめて送られてきたニュース情報の山。それらは一度我らのリーダー・アイザックが全て目を通す。その後は好きに閲覧してよいと許可をもらい、わたしはそれらの整頓をしながら情報を追っていた。
大昔のように紙に印刷され届くわけではないが、データ情報とはいえ適当に放置していればどこに何があるのかわからなくなり、探し当てるのも骨が折れる。
「あら……巨大なストームが発生して欧州全域に被害が。
これは色々な方面で影響が出てきそう。ええと……もう少し詳しい情報は……」
画面に表示された写真にはストームが直撃した後の農業地や、嘆く人々の様子を写しており、遠くの地に生きる彼らの安否を案じながら考えなければならないことに思考を巡らせる。農作物の収穫にダメージがあることは明確だが、勿論被害はそれだけではない。該当地域の物流関係はどうなるのか、また復興の目処はついているのか。モノの流れは食料や日用品だけではない。非合法な取引や裏の流通もどんな影響を受けるのか……。物事を多角的に捉え、そして把握しておく必要があるのだ。
こういったことはアイザックの方が長けているが、理解している人間が組織内に一人だけというのはそれはそれで問題だろう。バックアップの存在は必要だ。
デスクの傍らに置いていたドリンクに手を付ける暇などなく、わたしは忙しなくキーボードを叩き、系統立てて情報を精査してゆく。これをしれっと一人で短時間でこなすのだから、かみそりアイザックという男は本当に底が知れない。
コズモレンジャーJ9の一員として籍を置いている以上、プロフェッショナルとして相応しい仕事ができるよう心がけ、そして実行しているつもりだけど。現状に甘えることなく向上心を持っていかないとね。
多言語で書かれた記事を訳しながら目を通し、必要な情報は控える。あくまでチームとして動いているのだ、今後の仕事でこれらの内容が必要になった時にすぐ取り出せるようにしておいた方がいいだろう。
どうやらわたしは自分が思っていた以上に集中して取り組んでいたらしい。情報室の扉が開いた事も、また来客者がやってきた事にもまったく気づかなかったのだ。
「なんだ、アイザックだけじゃなくシオンまでコンピューターとよろしくやってんのかよ」
突然かけられたハスキーな声に心臓がどきりと跳ねた。びくん、と体は反応し、声のする方へ椅子を向けると真っ黒な衣装に身を包んだ男が目を細めて立っていた。
「そうなの。だけどアイザックの方がいいみたいで、中々心を開いてくれないんですよ」
「あら、そりゃ残念だな。口説き方が真面目すぎんじゃねえの?」
「困りましたね。百戦錬磨の色男、ブラスター・キッド様にご指南いただきたいところです」
「言ってくれるねぇ。ではどうです?今夜一緒に食事でも」
少しだけ声のトーンを落とし、彼は吐息交じりに囁いてくる。
近くに寄られると改めてキッドの整った造形に気づかされる。慣れたように女を誘い、惑わす甘い声に一瞬くらりとしそうになったが、とにかく必死に正気を保つ。彼に気付かれないよう、自分の太ももをぎゅぅとつねり、流されないよう必死に耐えた。
「魅力的なお誘いをありがとうございます。だけど残念……コンピューターちゃんがまだ一緒にいたいって」
「ふうん?じゃあ、デートはまた今度だな」
「で、デートって……」
キッドの女性トラブルの話はボゥイーから何度か聞かされて知ってはいたけれど。ああきっとこういう感じで勘違いさせたり、感情が縺れたりしたんだろうな……罪な人だ……とわたしは改めてそう思った。
どうやらその気持ちは視線にも表れていたらしく。キッドは少し不服そうに顔をしかめていた。
「あのなあ、別に俺は誰かれ構わず誘ってるってわけじゃねえぜ?
俺だってデートの相手は選んでるし。食事だって嫌いな相手としたくなんてないさ」
「そうなんですか?」
「シオンは俺を一体どういう男だと思ってたんだよ……。
美味い飯は、向かいにいい女がいてくれないと意味がねーんだよ」
ご理解していただけた?と言うように彼はぱちりとウインクをする。
いい女と食事をしたい、なんて言葉は彼からしたらなんてことはないよく使う口説き文句の一つなのだろう。
それでも少しだけ熱を感じる視線を向けた上でそんなことを言われると、わたしの体の奥に熱が入ってしまう。
「ま、あんまり根を詰めんじゃねえぞってことで。おつかれさん」
すらりと長く、少し節ばった手を振りながらキッドは情報室を後にする。この部屋を薄暗くしていてよかったとこの時心から思った。
鏡で見なくても分かるくらい、顔が熱くて熱くてしょうがなかったから。
大昔のように紙に印刷され届くわけではないが、データ情報とはいえ適当に放置していればどこに何があるのかわからなくなり、探し当てるのも骨が折れる。
「あら……巨大なストームが発生して欧州全域に被害が。
これは色々な方面で影響が出てきそう。ええと……もう少し詳しい情報は……」
画面に表示された写真にはストームが直撃した後の農業地や、嘆く人々の様子を写しており、遠くの地に生きる彼らの安否を案じながら考えなければならないことに思考を巡らせる。農作物の収穫にダメージがあることは明確だが、勿論被害はそれだけではない。該当地域の物流関係はどうなるのか、また復興の目処はついているのか。モノの流れは食料や日用品だけではない。非合法な取引や裏の流通もどんな影響を受けるのか……。物事を多角的に捉え、そして把握しておく必要があるのだ。
こういったことはアイザックの方が長けているが、理解している人間が組織内に一人だけというのはそれはそれで問題だろう。バックアップの存在は必要だ。
デスクの傍らに置いていたドリンクに手を付ける暇などなく、わたしは忙しなくキーボードを叩き、系統立てて情報を精査してゆく。これをしれっと一人で短時間でこなすのだから、かみそりアイザックという男は本当に底が知れない。
コズモレンジャーJ9の一員として籍を置いている以上、プロフェッショナルとして相応しい仕事ができるよう心がけ、そして実行しているつもりだけど。現状に甘えることなく向上心を持っていかないとね。
多言語で書かれた記事を訳しながら目を通し、必要な情報は控える。あくまでチームとして動いているのだ、今後の仕事でこれらの内容が必要になった時にすぐ取り出せるようにしておいた方がいいだろう。
どうやらわたしは自分が思っていた以上に集中して取り組んでいたらしい。情報室の扉が開いた事も、また来客者がやってきた事にもまったく気づかなかったのだ。
「なんだ、アイザックだけじゃなくシオンまでコンピューターとよろしくやってんのかよ」
突然かけられたハスキーな声に心臓がどきりと跳ねた。びくん、と体は反応し、声のする方へ椅子を向けると真っ黒な衣装に身を包んだ男が目を細めて立っていた。
「そうなの。だけどアイザックの方がいいみたいで、中々心を開いてくれないんですよ」
「あら、そりゃ残念だな。口説き方が真面目すぎんじゃねえの?」
「困りましたね。百戦錬磨の色男、ブラスター・キッド様にご指南いただきたいところです」
「言ってくれるねぇ。ではどうです?今夜一緒に食事でも」
少しだけ声のトーンを落とし、彼は吐息交じりに囁いてくる。
近くに寄られると改めてキッドの整った造形に気づかされる。慣れたように女を誘い、惑わす甘い声に一瞬くらりとしそうになったが、とにかく必死に正気を保つ。彼に気付かれないよう、自分の太ももをぎゅぅとつねり、流されないよう必死に耐えた。
「魅力的なお誘いをありがとうございます。だけど残念……コンピューターちゃんがまだ一緒にいたいって」
「ふうん?じゃあ、デートはまた今度だな」
「で、デートって……」
キッドの女性トラブルの話はボゥイーから何度か聞かされて知ってはいたけれど。ああきっとこういう感じで勘違いさせたり、感情が縺れたりしたんだろうな……罪な人だ……とわたしは改めてそう思った。
どうやらその気持ちは視線にも表れていたらしく。キッドは少し不服そうに顔をしかめていた。
「あのなあ、別に俺は誰かれ構わず誘ってるってわけじゃねえぜ?
俺だってデートの相手は選んでるし。食事だって嫌いな相手としたくなんてないさ」
「そうなんですか?」
「シオンは俺を一体どういう男だと思ってたんだよ……。
美味い飯は、向かいにいい女がいてくれないと意味がねーんだよ」
ご理解していただけた?と言うように彼はぱちりとウインクをする。
いい女と食事をしたい、なんて言葉は彼からしたらなんてことはないよく使う口説き文句の一つなのだろう。
それでも少しだけ熱を感じる視線を向けた上でそんなことを言われると、わたしの体の奥に熱が入ってしまう。
「ま、あんまり根を詰めんじゃねえぞってことで。おつかれさん」
すらりと長く、少し節ばった手を振りながらキッドは情報室を後にする。この部屋を薄暗くしていてよかったとこの時心から思った。
鏡で見なくても分かるくらい、顔が熱くて熱くてしょうがなかったから。
1/14ページ