雑多
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「シオン、おつかれさま。良かったら息抜きにお茶でも一緒にどうかな?」
少し眉を下げながら目の前に立つ少年は微笑む。柔らかいシナモンカラーの髪を揺らし、彼はわたしの返答をじっと待った。
眉目秀麗な年下の男の子の視線に少しドキリとしたが、それを気取られないように。つとめて平然とした様子を心がけながら口を開く。
「ありがとうございます。ですが、まだお屋敷の掃除も終わっていませんし。
これから夕食の買い出しにも行きますので、申し訳ないのですが一息つく暇もなく……。お心遣いくださり、ありがとうございます。
お嬢様が先日おいしいお茶菓子を購入されていましたので、良ければそちらをお楽しみくださいね」
深々と頭を下げ、彼の好意を断ってしまうことに対し心からの謝罪を告げる。迷惑だとか嬉しくないだとか、そういうことではない。
わたしは柳生の家に仕える立場の人間であり、この屋敷を清潔かつ快適に保ち、ナスティお嬢様の身の回りのことをこなすのがわたしの仕事なのだ。
滅私奉公。少なくともお仕事をしているこの時間、わたしは柳生家に仕える使用人として存在するべきだ。
それに伸さま達には何か大きな、やらなければならない使命があるとナスティお嬢様が仰っていた。であればこうした平和な時間に英気を養うことは大切なはず。
このようなことはわたしに任せて、のんびりしていただいて構いませんのに。
それでも彼は簡単に引き下がりはしなかった。半歩だけこちらへ歩み寄り、緊張の色が感じられる声色が屋敷の廊下に響く。
「じゃあ、あの……僕、一緒に行くよ。買い出しに。荷物が多くなるだろうから手伝わせて?
今日はナスティがいないから車で行けないし、シオン一人じゃ大変だろうから」
「……え?ですが……」
「僕も料理をするからわかるんだ。食材って重たいしかさばるし、シオン一人じゃ大変だと思う。
重たい荷物を持って移動することは修行にもなる、ともいえるし。
……どうかな?」
翡翠のような瞳にわたしの顔が映る。じっと見つめる瞳と理にかなった魅力的な提案を前に、首を横に振ることはできなくて。
「よろしくお願いします……」とか細い声で応じる結果となった。
伸さまは「やったあ!」と何故だか嬉しそうに拳を握りしめ、笑っている。
年相応の少年らしく振る舞う姿にわたしもつられてしまったのだろう。仕事中だというのに表情筋が緩み、思わず笑ってしまった。
少し眉を下げながら目の前に立つ少年は微笑む。柔らかいシナモンカラーの髪を揺らし、彼はわたしの返答をじっと待った。
眉目秀麗な年下の男の子の視線に少しドキリとしたが、それを気取られないように。つとめて平然とした様子を心がけながら口を開く。
「ありがとうございます。ですが、まだお屋敷の掃除も終わっていませんし。
これから夕食の買い出しにも行きますので、申し訳ないのですが一息つく暇もなく……。お心遣いくださり、ありがとうございます。
お嬢様が先日おいしいお茶菓子を購入されていましたので、良ければそちらをお楽しみくださいね」
深々と頭を下げ、彼の好意を断ってしまうことに対し心からの謝罪を告げる。迷惑だとか嬉しくないだとか、そういうことではない。
わたしは柳生の家に仕える立場の人間であり、この屋敷を清潔かつ快適に保ち、ナスティお嬢様の身の回りのことをこなすのがわたしの仕事なのだ。
滅私奉公。少なくともお仕事をしているこの時間、わたしは柳生家に仕える使用人として存在するべきだ。
それに伸さま達には何か大きな、やらなければならない使命があるとナスティお嬢様が仰っていた。であればこうした平和な時間に英気を養うことは大切なはず。
このようなことはわたしに任せて、のんびりしていただいて構いませんのに。
それでも彼は簡単に引き下がりはしなかった。半歩だけこちらへ歩み寄り、緊張の色が感じられる声色が屋敷の廊下に響く。
「じゃあ、あの……僕、一緒に行くよ。買い出しに。荷物が多くなるだろうから手伝わせて?
今日はナスティがいないから車で行けないし、シオン一人じゃ大変だろうから」
「……え?ですが……」
「僕も料理をするからわかるんだ。食材って重たいしかさばるし、シオン一人じゃ大変だと思う。
重たい荷物を持って移動することは修行にもなる、ともいえるし。
……どうかな?」
翡翠のような瞳にわたしの顔が映る。じっと見つめる瞳と理にかなった魅力的な提案を前に、首を横に振ることはできなくて。
「よろしくお願いします……」とか細い声で応じる結果となった。
伸さまは「やったあ!」と何故だか嬉しそうに拳を握りしめ、笑っている。
年相応の少年らしく振る舞う姿にわたしもつられてしまったのだろう。仕事中だというのに表情筋が緩み、思わず笑ってしまった。