雑多
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「ねぇ〜オガちゃん、きいてる〜?」
「あーもう聴いてる聴いてる。またフラれたんだろ?」
「フラれてない!七番ちゃんに会いたいから無理って言われただけ!」
そう言って目の前の彼女は勢いよくジョッキグラスを飲み干した。聴いていて心地よいほどの音を鳴らしながら黄金色の酒を飲み干す姿は惚れ惚れするものがある。
彼女とはそれなりに長い付き合いではあるが、男と女の、そういう関係ではない。というのも彼女には長年恋慕い続けている存在がいるのだ。
相葉瞬、俺の昔の走り屋仲間に何年もアタックし続けているのだが、哀しいかなその効果はさっぱり見受けられない。
瞬好みの格好をしたり、彼女なりに車やMFGの専門的なことを学んだりなどしているが梨の礫、暖簾に腕押し。見ていて不憫になるレベルで響かないのである。
その度にこうして俺は呼び出され、最初の数杯とお通し分をご馳走してもらう約束でヤケ酒に付き合わされるのだ。正直言って、もう慣れた。そりゃあ初めのうちは俺なりに協力しようと思ったし、それとなく瞬に探りを入れたりもした。
だが瞬は瞬でMFGエンジェルズにお熱だし、瞬も彼女も「思い込んだら一直線」な気質なので俺の話なんて聞きやしない。嵐が通り過ぎるのを待つように彼女の言葉を受け流す。俺の言葉でこの二人は進行方向を変えたりしないのだ。
それならお互い好きなようにさせるほうがいいだろう、という判断だ。
「七番ちゃんの何がいいんだろう……顔?スタイル?髪型……?わかんないよー……肌ツヤすごくいいし、透明感あるし、多分すごく若いコだよぉ……直接見たことないけど、カメラ越しでも可愛さがわかるもん……あんな可愛い子が相手じゃ勝てないよぉ……」
おっと……酔い方が第二段階になった。最初はテンションが高いが、何杯か飲むとこうして静かにメソメソしてしまうのだ。七番ちゃんのどこが可愛いか、いいのかを彼女なりに考察しているのだろう。あーでもこの話この間聞いたな、瞬から。同じこと話してるってことは、着眼点は同じなんだろうな……。
いっそ七番ちゃんの話を一緒にすればいいんじゃ?と一度申し出てみたら、実際行動に起こしてみたらしい。結果は惨敗。数時間たっぷりと七番ちゃんの良さと、結婚を見据えたお付き合いをしたいと願望まで話され、メンタルをバキバキにやられた、とその日は恐ろしい勢いで飲み続けてたな……。
「瞬以外にも男はいるだろ?別の恋を見つけたら?」
「……無理だよ……瞬みたいな男を知ったら、目が離せないもん……」
MFGドライバーとしても、一人の走り屋としても。相葉瞬という存在に惹きつけられてしまったのだろう。熱っぽい瞳を潤ませて彼女は呟く。
そういうしおらしい姿を瞬も見てやればいいのに。そんなことを考えつつ、俺はこっそりスマホを操作する。眼前の彼女はブツブツと何か言いながら新しいビールを注文していて、俺の行動に気づいていない。
「悪い、俺今夜はそろそろ帰らねえと」
「えぇ?もう帰っちゃうのオガちゃん!
まだ言いたいこと半分も話せてないのに?」
「さっきから同じことばっか繰り返してたけど……?ともかく、今夜はお開きにしよ。な?」
「やだ〜……まだ飲み足りないよ〜……」
「こないだもそう言って吐くまで飲んだろ!肝臓休ませてやれってば」
文句をこぼしながら彼女はよろよろと立ち上がる。支払いを済ませて店を出ると爽やかな風が吹き、居酒屋の熱気で火照った身体を冷ましてくれるようだった。
きょろきょろと周囲を見渡していると彼女が不審者を見るような目つきで俺を睨む。「オガちゃんなにしてんの?」と不貞腐れながら言われたが、それはスルー。
「おっ!こっちこっち!」
ようやく見つけた短いツンツンヘアー。こちらに気づいてもらうよう大きく手を振ると、隣にいた彼女が息を呑むのがわかった。
「ンだよ緒方、突然呼び出しやがって」
「そういうなよ瞬、どうせ暇だろ?」
「失礼なこと言うんじゃねーよ」
急な呼び出しだったにも関わらず気前よく足を運んでくれた友人・相葉瞬に軽口を叩いて、俺は隣で呆然とする彼女に視線を向けた。彼女はぽかんとしつつ、穴が開くほどの目力で俺を見つめ返した。
「悪ぃんだけどさ、彼女のこと送ってやってくんねえ?俺、事務仕事残してたこと急に思い出しちまってよ、早く戻らないとなんだわ」
「あ?そう言うことなら構わねえぜ。しゃーねぇなぁ」
「頼むぜ瞬〜?」
この二人、俺の言葉はさっぱり聞きいれやしないけど。だけどコースを少しだけ調整するといい感じにハマってくれるんだよな。
後はお二人さんの頑張り次第ということで。
次会う時は少しでもいい報告が聞けることを期待してるからな。
そう思いながら俺は彼女に向かってこっそり微笑んだ。
「あーもう聴いてる聴いてる。またフラれたんだろ?」
「フラれてない!七番ちゃんに会いたいから無理って言われただけ!」
そう言って目の前の彼女は勢いよくジョッキグラスを飲み干した。聴いていて心地よいほどの音を鳴らしながら黄金色の酒を飲み干す姿は惚れ惚れするものがある。
彼女とはそれなりに長い付き合いではあるが、男と女の、そういう関係ではない。というのも彼女には長年恋慕い続けている存在がいるのだ。
相葉瞬、俺の昔の走り屋仲間に何年もアタックし続けているのだが、哀しいかなその効果はさっぱり見受けられない。
瞬好みの格好をしたり、彼女なりに車やMFGの専門的なことを学んだりなどしているが梨の礫、暖簾に腕押し。見ていて不憫になるレベルで響かないのである。
その度にこうして俺は呼び出され、最初の数杯とお通し分をご馳走してもらう約束でヤケ酒に付き合わされるのだ。正直言って、もう慣れた。そりゃあ初めのうちは俺なりに協力しようと思ったし、それとなく瞬に探りを入れたりもした。
だが瞬は瞬でMFGエンジェルズにお熱だし、瞬も彼女も「思い込んだら一直線」な気質なので俺の話なんて聞きやしない。嵐が通り過ぎるのを待つように彼女の言葉を受け流す。俺の言葉でこの二人は進行方向を変えたりしないのだ。
それならお互い好きなようにさせるほうがいいだろう、という判断だ。
「七番ちゃんの何がいいんだろう……顔?スタイル?髪型……?わかんないよー……肌ツヤすごくいいし、透明感あるし、多分すごく若いコだよぉ……直接見たことないけど、カメラ越しでも可愛さがわかるもん……あんな可愛い子が相手じゃ勝てないよぉ……」
おっと……酔い方が第二段階になった。最初はテンションが高いが、何杯か飲むとこうして静かにメソメソしてしまうのだ。七番ちゃんのどこが可愛いか、いいのかを彼女なりに考察しているのだろう。あーでもこの話この間聞いたな、瞬から。同じこと話してるってことは、着眼点は同じなんだろうな……。
いっそ七番ちゃんの話を一緒にすればいいんじゃ?と一度申し出てみたら、実際行動に起こしてみたらしい。結果は惨敗。数時間たっぷりと七番ちゃんの良さと、結婚を見据えたお付き合いをしたいと願望まで話され、メンタルをバキバキにやられた、とその日は恐ろしい勢いで飲み続けてたな……。
「瞬以外にも男はいるだろ?別の恋を見つけたら?」
「……無理だよ……瞬みたいな男を知ったら、目が離せないもん……」
MFGドライバーとしても、一人の走り屋としても。相葉瞬という存在に惹きつけられてしまったのだろう。熱っぽい瞳を潤ませて彼女は呟く。
そういうしおらしい姿を瞬も見てやればいいのに。そんなことを考えつつ、俺はこっそりスマホを操作する。眼前の彼女はブツブツと何か言いながら新しいビールを注文していて、俺の行動に気づいていない。
「悪い、俺今夜はそろそろ帰らねえと」
「えぇ?もう帰っちゃうのオガちゃん!
まだ言いたいこと半分も話せてないのに?」
「さっきから同じことばっか繰り返してたけど……?ともかく、今夜はお開きにしよ。な?」
「やだ〜……まだ飲み足りないよ〜……」
「こないだもそう言って吐くまで飲んだろ!肝臓休ませてやれってば」
文句をこぼしながら彼女はよろよろと立ち上がる。支払いを済ませて店を出ると爽やかな風が吹き、居酒屋の熱気で火照った身体を冷ましてくれるようだった。
きょろきょろと周囲を見渡していると彼女が不審者を見るような目つきで俺を睨む。「オガちゃんなにしてんの?」と不貞腐れながら言われたが、それはスルー。
「おっ!こっちこっち!」
ようやく見つけた短いツンツンヘアー。こちらに気づいてもらうよう大きく手を振ると、隣にいた彼女が息を呑むのがわかった。
「ンだよ緒方、突然呼び出しやがって」
「そういうなよ瞬、どうせ暇だろ?」
「失礼なこと言うんじゃねーよ」
急な呼び出しだったにも関わらず気前よく足を運んでくれた友人・相葉瞬に軽口を叩いて、俺は隣で呆然とする彼女に視線を向けた。彼女はぽかんとしつつ、穴が開くほどの目力で俺を見つめ返した。
「悪ぃんだけどさ、彼女のこと送ってやってくんねえ?俺、事務仕事残してたこと急に思い出しちまってよ、早く戻らないとなんだわ」
「あ?そう言うことなら構わねえぜ。しゃーねぇなぁ」
「頼むぜ瞬〜?」
この二人、俺の言葉はさっぱり聞きいれやしないけど。だけどコースを少しだけ調整するといい感じにハマってくれるんだよな。
後はお二人さんの頑張り次第ということで。
次会う時は少しでもいい報告が聞けることを期待してるからな。
そう思いながら俺は彼女に向かってこっそり微笑んだ。