【スカリーくんと監督生が大掃除しているだけ】

オンボロ寮のとある一室は、昼間の光に照らされながらも古びた雰囲気をまとっていた。天井の梁からは蜘蛛の巣が垂れ下がり、古い木の床は長年の埃で薄い灰色に覆われている。ユウは腰に手を当てて部屋を見渡し、小さくため息をついた。「さあ、やるしかないね」と自分に言い聞かせるように言葉を放つ。

その横でスカリーは一歩下がり、煤けた木製の家具や割れたガラス片に視線を向けていた。「これは…壮大な挑戦ですね」と、低い声で呟く。「素敵な貴方とこうして過ごすこの場所ですから、我輩も全力で取り組ませていただきます。」

ユウは彼の言葉に微笑みながら、「じゃあ、さっそく始めよう」とモップとバケツを差し出す。スカリーは受け取りつつ、「ですが、どうか家具を動かす役目は我輩にお任せください。貴方にはその手を怪我させたくありませんから」と付け加えた。その丁寧な言葉にユウは苦笑するが、素直に彼の申し出を受け入れる。

掃除が進むにつれ、埃の匂いが薄れ、木材の香ばしい香りが部屋に広がり始めた。スカリーは埃を払いながら、時折見つかる古びた装飾品に目を止める。壊れた時計や使い古された椅子は彼の目に特別な意味を持つようだった。

一方、ユウは棚を整理している最中、小さな箱を見つけた。「スカリーくん、これ見て」と呼びかけながら、箱を開ける。中には古いオルゴールが収められていた。細かな彫刻が施された木製の外装は色褪せていたが、触れるとまだ滑らかな手触りが残っている。ユウがねじを巻いてみると、ゆっくりとした旋律が部屋に響いた。

スカリーはその音色に反応し、手を止めて近づいてきた。オルゴールの音は単純ながらも、どこか懐かしさを誘うものだった。「これは…以前も同じような物を見かけたような気がします」と、少し遠い目をして呟く。ユウはその表情を見て、彼が何か思い出に浸っているのだと気づいた。

「どんな思い出があるの？」と聞いてみるが、スカリーは首を振って微笑む。「思い出というほどのものではありません。ただ、こうした手作りのものには、不思議な温もりがありますね。まるでそれを作った人の心が宿っているような…」彼の声は柔らかく、ユウはその言葉に小さく頷いた。

作業が一区切りついた頃、二人は埃まみれになりながらも笑顔を見せていた。談話室の中央に座り込んだスカリーが、ふとポケットからハンカチを取り出し、ユウに差し出した。「どうぞ、少しでも埃を払ってください。我輩が掃除の手伝いをしたせいで、余計に散らかしたかもしれませんから。」

ユウはその気遣いに感謝しつつ、「スカリーくんがいなかったら、もっと大変だったと思うよ」と微笑んだ。「それに、このオルゴールも見つけられなかったかもしれないしね。」

スカリーは静かに頷きながら、「ならば今日の掃除も、価値あるものだったということでしょう」と満足げに言った。部屋にはまだ微かに埃の匂いが残るが、それ以上に温かい充実感が二人の間に漂っていた。