【スカリーくんと監督生がこたつでぬくぬくしているだけ】

オンボロ寮のゲストルームは、外の寒さとは対照的に穏やかな空間だった。中央に置かれたこたつからは、ほのかに暖かい空気が漂い、スカリーとユウはその中に足を入れながら座っていた。外は灰色の空が広がり、時折、冷たい風の音が窓を叩いていたが、部屋の中はぬくもりと静けさが満ちていた。

スカリーはこたつに足を入れたまま、少し驚いた表情を浮かべていた。「ユウさん、この…こたつというもの、非常に興味深いですね。足元がこんなにも暖かいのに、部屋全体はそれほど熱くならないとは。」彼の声は好奇心と驚きを含んでおり、初めて体験するこの文化に心を動かされている様子だった。

「うちでは冬になるとみんなこたつで過ごしてたんだ。みかんを食べたり、本を読んだり、時にはそのまま寝ちゃったりして。」ユウは笑いながら説明した。その声には、懐かしさが織り込まれており、遠い故郷の冬の日々を思い出しているようだった。

スカリーはこたつ布団の肌ざわりを確かめるようにそっと触れ、その柔らかい感触に心地よさを感じながら言葉を紡いだ。「これは確かに、温もりを共有する素晴らしい発明ですね。ユウさんの故郷では、皆さんがこうして集まるのでしょうか？」

「うん、家族や友達と一緒にね。冬が長いからこそ、こういう時間がとても大切なんだ。」ユウの声が少し低くなる。その目が遠くを見つめるように揺れるたび、スカリーはその奥にある感情を感じ取っていた。

「いつか、スカリーくんにも私の故郷を見せてあげたいな。」ユウがふと漏らした言葉は軽やかだったが、そこには小さな願いが込められていた。

スカリーの瞳が少し揺れる。その微かな変化は、彼の心中の葛藤を映し出していた。けれども彼は、柔らかく笑みを浮かべ、慎重に言葉を選んだ。「それはきっと素晴らしいでしょうね。ただ…我輩の故郷に貴方をお連れするのは、少し複雑かもしれません。」

「複雑って？」ユウが問い返すその声には、心配と好奇心が入り混じっていた。

スカリーは一瞬視線を落とし、遠い記憶を思い起こすように窓の外を見つめた。白く積もる雪の静けさが、言葉にならない感情を代弁しているかのようだった。「我輩の故郷は、貴方のような暖かい方には似つかわしくない場所かもしれません。けれども、もし機会があれば…いつかお連れできれば良いのですが。」

その言葉に込められた優しさを感じ取りながら、ユウは微笑んだ。「いつか行けたらいいな。スカリーくんがどんな場所で育ったのか、知りたいもん。」

スカリーの心は揺れていた。過去の重みと、目の前のユウの明るい存在。その二つが交差する中で、彼は再び笑顔を浮かべた。「そうですね。いつの日か、貴方と共に故郷を訪れる日が来るかもしれません。」

その小さな約束のような言葉は、暖かいこたつの中で交わされ、白い雪が静かに降り積もる夜に溶け込んでいった。