【スカリーくんと監督生がココアを飲んでいるだけ】

オンボロ寮の談話室は、木製の家具が長い年月を物語り、古びた暖炉が冬の寒さを一層際立たせていた。冷えた窓枠には薄い霜が張り付き、外の風が微かに隙間から入り込んでは室内を冷え込ませる。ユウは窓際に立ち、外を見つめながら両手を擦り合わせ、小さな吐息を漏らした。「スカリーくん、雪だよ！今年の初雪だね。」その声は、談話室の冷たさを忘れさせるような明るさに満ちていた。

スカリーはその声に誘われて窓辺に近づいた。薄暗い談話室の中で、ユウの頬は寒さのせいか薄く染まって見える。彼もまた窓の外に目を向けた。白い雪が静かに舞い降り、枯れ木の枝や寮の庭の小道を薄く覆っていく。冷気が肌に触れ、微かに刺すような感覚がする。「初雪とは、特別なものですね。この冷たささえも、不思議と心に響く気がします。」彼の声は穏やかで、雪の静けさに溶け込むようだった。

だが、談話室の中は冷え込んでいて、暖炉も壊れたままだった。ユウが再び身震いすると、それに気づいたスカリーは優しい笑みを浮かべた。「少し待っていてください。温かい飲み物をお持ちします。」その言葉を残して彼はキッチンへと向かう。

キッチンは談話室よりさらに寒く、床板がぎしぎしと音を立てた。スカリーは棚から小さなティン缶を取り出す。その缶を開けると、甘く濃厚なココアの香りが広がり、冷えた空間に瞬時に柔らかな温かみをもたらした。深く息を吸い込みながら、彼は鍋にミルクを注ぎ、慎重に火をつけた。炎が揺れる様子を眺めていると、どこか懐かしい気持ちが胸に込み上げる。ミルクが温まり始めると、その甘い香りがさらに濃厚に広がり、キッチン全体を包み込んだ。

スプーンで丁寧にココアを混ぜながら、彼はふとユウの顔を思い浮かべた。寒さで震えていた姿が脳裏に浮かび、その冷えた手を少しでも温められればと、砂糖をほんの少し多めに加えた。滑らかな液体が鍋の中で揺れるたび、ココアの香りが一層際立ち、彼の心もどこか和らいでいくようだった。

トレイに二つのカップを乗せ、再び談話室に戻ると、ユウは窓の外を見つめたまま、指先を擦り合わせていた。「お待たせしました、素敵な貴方。特製のホットココアです。」スカリーがテーブルにトレイを置くと、ユウの顔がぱっと明るくなった。

ユウが手を伸ばし、カップをそっと受け取る。その手に伝わる陶器のほんのりとした温かさが、冷えた指先を優しく包み込む。「ありがとう、スカリーくん。すごくいい香り。」ユウはカップに顔を近づけ、湯気越しに漂う甘い香りを深く吸い込んだ。そして一口含むと、甘さとほのかな苦味が舌に広がり、体の芯まで温かさが染み渡る。「こんな寒い日は、これが一番だね。」ユウはそう言いながら、幸せそうに微笑んだ。

スカリーもカップを手に取り、一口含む。甘さが心地よく、彼もまた静かに微笑んだ。「寒さの中で、こうした小さな温もりを分かち合えることが何よりの幸せです。」その言葉は、柔らかい音色のように談話室の静寂に溶け込んでいった。

窓の外では、雪が積もり始めていた。暖炉の火がなくても、談話室の中には二人だけの穏やかな時間と、温かな香りが漂っていた。