【スカリーくんと監督生が夕日を眺めているだけ】

放課後の校門を出たスカリーとユウは、オンボロ寮に向かって歩き始めた。夕暮れ時の空は茜色に染まり、わずかな雲が橙から金色へと変わる様子が目を奪うほど美しい。道端に並ぶ木々の影が長く伸び、風が揺らす葉のさざめきが心地よいBGMとなっている。

「今日は本当にいい天気だったね。」ユウが微笑みながら口を開いた。手元に抱えるカバンが少し重そうだが、その表情には疲れよりも満足感が漂っている。

「ええ、まさに秋の一日といったところでしょうか。」スカリーはユウの隣を歩きながら答えた。その瞳には夕焼けの光が映り、どこか神秘的な輝きを宿している。

夕焼け空の下で、二人の足音だけが砂利道に響く。

「そういえば、スカリーくん。」ユウが思い出したように言った。「君って、本当に何でも器用にこなすよね。今日の授業中も、皆が苦労してたところをすらっと解いてたし。」

スカリーは一瞬驚いたように眉を上げたが、すぐに控えめな笑みを浮かべた。「素敵な貴方がそう感じてくださるなら光栄です。しかし、我輩はまだまだ学ぶことが多い身ですから。」

ユウは小さく笑い、スカリーの肩に目をやる。「でも本当に、いつも助けてもらってばかり。ありがとう。」

スカリーは一瞬だけ視線を落とし、その瞳に一瞬影が差したように見えた。しかし、すぐに明るい声で応じた。「そんなことはありませんよ。我輩はただ、貴方と過ごすこの時間がとても大切なだけです。」

沈黙が訪れた。言葉は交わさずとも、その空気には不思議な温かさが宿っていた。落ち葉を踏みしめる音が耳に心地よく響き、夕焼けが背中を優しく押すように感じられる。

ふと、スカリーが立ち止まった。「少し、ここで夕陽を見ませんか？　こんなに美しい景色、逃してはもったいない。」

ユウも立ち止まり、振り返った。校舎の影が遠くに小さく見え、赤く燃えるような空がその向こう側に広がっている。「そうだね、たまにはこういう時間も大事かも。」

二人は並んで立ち、夕焼けに見入った。ユウは深呼吸をし、風に揺れる木々の香りを胸いっぱいに吸い込む。穏やかなひとときの中で、言葉にするには難しい感情が胸の奥に静かに芽生えていた。

スカリーもまた、同じ空を見上げていたが、その瞳の奥には複雑な思いが隠されていた。いつか帰るべき場所があるという事実。そして、この瞬間が終わるのを惜しむ気持ち。

「スカリーくん、こういう時間がずっと続けばいいのにね。」ユウが小さく呟いた。

スカリーはその言葉に少しだけ視線を揺らし、静かに微笑んだ。「ええ、そうですね。こんな風に、穏やかな日々が続くことを願うばかりです。」

夕陽が沈み、空が紫色に変わる中、二人は再び歩き始めた。何気ない帰り道が、二人の胸にそっと温かな記憶を刻んでいった。