【スカリーくんと監督生が本の片づけをしているだけ】

図書室の薄暗い灯りに包まれ、スカリーとユウは静かに本を棚に戻していた。その空間には、無数の書籍が並び、作業する音さえも静寂に溶け込むようだった。

スカリーの視線は、時折そっとユウに向けられる。ユウが本の背表紙に指先を添える仕草、その小さな動きがなぜか目を奪う。だが、そのたびに彼は気づかれぬよう目を戻し、平静を装おうとしていた。

「スカリーくん、ここの棚、ちょっと高いんだけど……」
ユウの声が静寂を破った。手にした本を高い棚に戻そうと背伸びをするユウの姿を見たスカリーは、自然と微笑みながらユウのもとに歩み寄った。

「どうぞ、我輩が戻しますよ。」
ユウは安堵したように本を差し出しながら言った。「ありがとう。いつも助かるよ、スカリーくん。」

スカリーはユウから本を受け取り、軽やかに棚に収めた。そのときのユウの柔らかな笑顔に、彼の胸が静かに高鳴る。その笑顔がこんなにも近くにあるだけで、心がざわつく自分に戸惑いながらも、その感情をどこか心地よく感じていた。

しばらくして、二人は並んで再び本を整理していた。ふとした瞬間、ユウの手がスカリーの手に触れた。二人は同時に動きを止め、驚いたように互いを見つめ合う。

「あっ……ごめん。」
ユウの小さな声には、謝罪とともにどこか戸惑いが滲んでいた。その瞳には微かな期待と不安が交錯しているようにも見える。スカリーは静かに笑みを浮かべ、ユウを安心させるように言った。

「いえ、大丈夫です。むしろ、その……少し嬉しかったかもしれません。」
その言葉に、ユウは視線をそらしながらも、照れくさそうに微笑んでいた。

再び本を整理し始めた二人の間には、どこか新しい空気が流れていた。互いに意識しすぎないように距離を保とうとするものの、ふとした拍子に視線が交わる。その度にスカリーの胸は高鳴り、彼の心をざわめかせた。

本の並び順を確認するため、ユウが棚と棚の狭い隙間に入ると、スカリーはそっとユウを見守っていた。やがてユウが振り返り、言った。
「ここ、これで合ってるかな？」
「ええ、大丈夫です。」

ユウがゆっくりと振り返り、深い何かを秘めた瞳でスカリーを見つめた。その眼差しに、彼はまるで心を引き寄せられるような感覚を覚える。静寂の中で、二人の間に流れる空気が徐々に温かさを帯びていくようだった。

「……スカリーくんって、頼りになるね。いつも一緒にいると、すごく安心できるよ。」
ユウの言葉は静寂の中に溶け込みながらも、スカリーの胸の奥をかすかに震わせた。その視線は自然とユウの方に向かい、彼の瞳が揺れる微かな感情を映していた。

「それは……我輩にとって、何よりの誉れです。」
スカリーが答えた声は落ち着いていたが、その微妙な抑揚には心の動揺が隠しきれない。

スカリーの手が本棚にかかったまま、微妙な緊張が漂う。冷たい木材の肌触りが指先に伝わる一方で、彼の心は妙に熱を帯びていた。

ユウが見上げる瞳には、言葉では説明できない感情が揺らいでいるように見える。スカリーは言葉を紡ぎたい衝動に駆られたが、何も言わないまま、互いの視線が交わるだけで十分だと感じていた。

その後、二人は棚の前で静かな時間を共有しながら、本を一冊ずつ戻し続けた。声を出すことなくとも、言葉以上の感覚が図書館の空気に流れていた。