【スカリーくんと監督生が焼きいもを食べているだけ】

ナイトレイブンカレッジには冷たい風が吹き抜け、冬の訪れを知らせていた。青白い空には低く雲が垂れ込み、時折吹きつける風が枯れ枝を揺らし、寒々しい音を立てる。いつも賑やかな学園も、この時ばかりは静けさに包まれ、まるで冬そのものがこの場所を支配しているかのようだった。

夕暮れ時、オンボロ寮の前でスカリーと監督生ユウは、枯れ葉を集める作業をしていた。オンボロ寮の窓は薄暗い夕日の反射で微かに輝き、その古びた外観がどこか懐かしさを感じさせる。周囲はすっかり静まり返り、時折、カサカサと落ち葉が風に運ばれる音が響くのみだった。

「これくらいあれば十分でしょうか？」

スカリーは腕いっぱいに抱えた落ち葉の山を見つめながら、柔らかな声でユウに問いかけた。その白い髪は、薄い冬の日差しを浴びて繊細な輝きを放ち、どこか幻想的な雰囲気を漂わせている。彼のオレンジの瞳は、夕日に映える落ち葉と同じ色合いで、眺めるだけで不思議と心が落ち着いた。

「うん、たぶんこれでいいと思う。でも、火を起こすのがちょっと心配だね。」

ユウは両手をこすりながら、寒さを紛らわせるように小さく息を吐いた。その息は白く、冬の冷たさを肌で感じさせる。火を扱うことに少し緊張している様子は、控えめな表情に表れていた。

スカリーはユウの顔を見つめ、小さく微笑むとそっと手を差し伸べる。その仕草には自然な優しさが滲んでいた。

「大丈夫です。我輩にお任せください。少々不器用ではありますが、こうした作業には慣れておりますので。」

言葉の通り、スカリーは落ち葉を手際よく積み上げ、火を起こす準備を進め始めた。その指先は寒さの中でも確かな動きを見せ、積み上げられる落ち葉が風に揺れるたび、彼の集中した表情が一層際立った。

その様子を見守るユウの瞳には、彼への信頼と安心感が滲んでいた。「こうして助けてくれる人がいるのは心強いな」と内心思いながら、ユウはわずかに緊張を解いた。

数分後、パチパチと音を立てて火が燃え上がる。火の赤々とした光が二人の影を揺らし、寮の壁に幻想的な模様を描き出した。火の勢いが安定すると、スカリーはホイルに包んださつまいもを手に取り、慎重に火の中へそっと埋めた。

「これで準備完了ですね。あとは焼きあがるのを待つだけです。」

スカリーは火のそばに腰を下ろし、手袋をした手をそっと火にかざす。冷たい空気の中、焚き火の温もりがじわじわと体を包み込み、心地よい安心感が広がる。

「温かいですね。こうして火を囲むと、なんだか落ち着きます。」

スカリーは静かに呟き、ちらりとユウを見た。焚き火の赤い光がユウの顔を照らし、その瞳にきらめく火の光が映り込んでいる。

「そうだね。なんだか懐かしい感じがする。」

ユウは微笑みながら答えた。その笑顔にスカリーの胸が少しだけ高鳴るのを感じたが、彼はそれを表に出すことはなかった。ただ、心の中でその瞬間を大切に刻むだけだった。

焼きいもが焼きあがる頃には空がすっかり暗くなり、頭上には星が瞬き始めていた。澄んだ夜空には無数の星が広がり、それはまるで宝石を散りばめたかのようだった。

スカリーは火のそばで膝をつき、そっとホイルを開いた。甘い香りがふわりと立ち上り、冬の冷たさを一瞬忘れさせる。慎重に焼きいもを手に取ると、柔らかい笑みを浮かべながらユウに差し出した。

「どうぞ、熱いうちに召し上がってください。」

「ありがとう、スカリーくん。」

ユウが一口頬張ると、驚いたように目を丸くした後、思わず笑顔がこぼれる。

「甘くておいしいね！」

「それは何よりです。」

スカリーも一口食べ、その素朴な味わいに微笑んだ。二人の間には、言葉はなくとも暖かな沈黙が流れていた。

冷たい空気の中、焚き火の温もりと焼きいもの甘さが二人を包み込む。スカリーはそっとユウを見つめ、この穏やかな時間が続くことを願わずにはいられなかった。焚き火の炎が揺れるたび、彼の心にも静かな感動が広がっていった。