【スカリーくんと監督生が湖畔を散歩しているだけ】

湖畔の周囲は静けさに包まれ、穏やかな波のさざめきが二人の耳をくすぐる。空は澄み渡り、柔らかな風が水面を揺らしながら冷たくも心地よい感触を肌に届けていた。スカリーとユウは木陰の下に腰を下ろし、しばしその景色を眺めていた。

「綺麗な場所だね、スカリーくん。」
ユウがそう言いながら深呼吸をする。湖畔の空気は少し湿り気があったが、草の青々とした香りが混ざり、どこか清々しい気分にさせる。

「ええ、素敵な貴方と共にここにいると、この景色も一層特別に感じられますよ。」
スカリーの声はいつものように落ち着いていて、微笑みを浮かべる彼の横顔には穏やかさが漂っていた。だが、内心では少し緊張している。日常の学園生活とは異なり、こんなに穏やかな時間をユウと共有する機会はそう多くない。ユウとの距離感を慎重に保とうとする自分に気づき、内心で苦笑する。

ふと、ユウが湖面に転がる小石を拾い上げた。「ねえ、スカリーくん、水切りって知ってる？」
「水切り、ですか？」スカリーはユウの手元を見つめた。滑らかで平たい小石がユウの指先でくるくると回されている。「なんとも…興味深い名前ですね。」

「こうやってね、石を水面に向かって投げるんだよ。ほら、見てて。」
ユウが軽く足を踏み出し、手首のスナップを効かせて石を投げる。石は水面に軽やかに跳ね、三回ほど跳んだ後、静かに沈んだ。

「おお！」
スカリーは目を見開き、拍手をする。「実に面白い！これが水切りというものなのですね。しかし、どうにもコツがありそうです。我輩にも挑戦させていただけますか？」

「もちろん！」
ユウが笑顔で別の石を拾い、スカリーに手渡す。彼はそれをしげしげと観察し、慎重に構えた。そして、いざ投げると、石は見事に湖面に落ち、一度も跳ねることなく沈んでいった。

「あれ…」
スカリーはしばらく沈黙し、その後ふっと笑いを漏らした。「ふむ、どうやら優雅さとはこうした動作には向かないもののようですね。」
彼の笑顔はどこか照れくさそうだったが、ユウはその姿が微笑ましく感じられた。

「スカリーくん、優雅さはいいけど、コツを掴むのが大事なんだよ。ほら、私の手に注目して。」
ユウはスカリーの手に自分の手をそっと添え、動きを示した。彼の指はほんの少し冷たかったが、肌触りは柔らかく、軽く触れるだけで彼の緊張が伝わってくる。ユウはその緊張をほぐすように、優しく言葉を続けた。「手首をこうやってスナップさせるのがポイント。石を斜めにしてね。」

スカリーはその指導を真剣に聞きながら、ユウの手の温もりを感じていた。心臓が少し速く脈打つのを自覚しながらも、彼は深く頷く。「承知しました、素敵な貴方の教えに全力で応じる所存です。」

次に投げた石は、湖面で一度だけ跳ねた。スカリーは喜びを隠せない。「やった！…ゴホンッ、一度でも跳ねるとは…進歩ではありませんか！」
ユウはその喜びを共有するように笑った。「うん、ちゃんとコツ掴んできたみたいだね。あと少しで完璧だよ！」

その後も何度か挑戦を繰り返し、スカリーの水切りは少しずつ上達していった。二人の笑い声が湖畔に響き、その瞬間、自然と交わされる言葉以上の何かが彼らの間に生まれていた。風がそよぎ、草の香りがまた鼻をくすぐる。二人だけの、穏やかなひとときが静かに流れていく。