【スカリーくんと監督生がお庭でお茶しているだけ】

午後の柔らかな日差しが寮の庭を包み込んでいた。風はひんやりとしていたが、木々の葉が揺れる音とともに、温かな光が地面に模様を作り出している。スカリーとユウは庭のテーブルに向かい合わせに座っていた。

スカリーは、ユウの為に選んだ紅茶の葉をじっと見つめながら、慎重にお湯を注いでいる。細かな湯気が立ち上り、ティーカップの縁を囲むように漂う紅茶の香りが、風に運ばれて少し遠くにまで届く。香りはほんのりと甘く、心を落ち着けるような不思議な魅力があった。

「ユウさん、どうぞ」と、スカリーが優しくカップを差し出す。ユウは柔らかく微笑みながら、差し出されたカップをそっと受け取った。その手に触れる陶器のひんやりとした感触が、秋の冷えた空気と絶妙に調和している。少し蒸気が立ち上るそのカップは、まるで二人の間に漂う静かな温もりそのもののように感じられた。

スカリーはユウの表情を見つめながら、自分もカップを手に取り、一口含んだ。甘い香りが鼻腔をくすぐり、舌の上で広がる濃厚な甘さに思わず眉をひそめる。「あ…これは少し甘くしすぎたでしょうか？」彼の声には、どこか自信のなさが滲んでいた。

ユウは驚いたように一瞬スカリーを見つめたが、すぐににっこりと笑った。「甘いの好きだから、大丈夫だよ。」その声には、何かスカリーの不安を受け止めようとする優しさが含まれていた。

その言葉にスカリーはホッとしたように息をついたが、同時に小さな罪悪感も感じた。ふとしたことで相手に不便をかけたような気がして、肩の力が抜けるのを感じる。

「我輩の小さな失敗を、そんなにも優しく受け止めてくださるとは…本当に、貴方らしいですね。」スカリーは、自分でも驚くほど優しい声でそうつぶやいた。自分の言葉に少し顔が赤くなるのを感じ、急いで目を伏せる。

ユウは、スカリーの予想外の言葉に少し驚きつつも、どこか嬉しそうに微笑んだ。ほんの少しの甘さ、ほんの少しの不安、それでもすべてが心地よい空気として二人の間に流れていく。ユウは目の前のスカリーの顔を見つめ、カップの縁に触れた唇の感触が、まるで温かさをくれるように感じた。

「スカリーくん…ありがとう、美味しいよ。」ユウは少し照れくさい笑顔を浮かべ、ゆっくりとカップを置いた。その手のひらに残ったほんのりとした温もりが、心の中まで温かく広がっていく。

スカリーは頬を赤くして、視線を外す。「こちらこそ…ありがとうございます。」その声は、ほんの少し震えていたが、ユウにはそれがどこか可愛らしく思えた。

静かな午後の庭、微かな風の音と紅茶の香りが二人を包み込んでいる。何も特別なことは起きていない。ただ、二人の間に流れるこの時間が、まるで永遠のように感じられる。紅茶の甘さが口の中でゆっくりと広がり、二人の心の中で交わされた言葉が、何よりも深く、温かく染み込んでいく。

ユウはもう一度スカリーを見つめ、その目が優しさと少しの期待を湛えていることに気づく。手のひらに感じるスカリーの気配は、まるで遠くにいるはずの誰かと繋がっているような、不思議な感覚を与えていた。

スカリーもまた、ユウの瞳を見つめ返し、心の中で何かが少しずつ解けていくのを感じた。少し甘すぎる紅茶と一緒に、二人だけの静かな時間が、もっと特別なものに変わっていくような気がした。