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エー♀と荒鬼の寒い日の話。冬ボイス最高でしたね。



「さっっっっむ」
 外気の冷たさにぶるりと震えた自分の体を抱き締めるようにして呟く。
 季節はすっかり冬、あんなに暑い暑いと愚痴をこぼしていた数ヶ月前が懐かしいったらありゃしない。

 一方隣にいる荒鬼くんはといえば元気いっぱいでいつも通り、肉トレ終わりなのでなんなら暑いくらいらしい。正気か?

「この程度で寒がってるようじゃまだまだだな!!」
 そんなことを豪語しながら私の背中をバシバシ叩く荒鬼くんに対して、私はもうツッコむ気力すらない。
「寒いもんは寒いんだよ……」
 弱々しくそんなことを呟いた私の様子を気にしたのかしていないのかは不明だが、何かを考え込む素振りを見せたかと思うと突然彼の手が伸びてきてそのまま私の両頬を優しく包み込んだ。
 
 あまりの出来事に、言葉が出せず固まっているとそのまま顔が近付いてくる。
 チュッという小さなリップ音と共に頬から伝わる温もりが消えた。
 数秒経って自分の身に何が起こったのかを理解した瞬間、顔に一気に熱が集まっていくのを感じた。
 
「あ……あらき、くん?今何を……」
 恐る恐る名前を呼びつつ見上げれば彼は満足気な表情を浮かべており、まるで作戦成功とでも言いたげな表情だ。
「顔真っ赤だぜ、これで少しは熱くなったろ?」
 ニマニマしながら意地悪そうに笑う彼に何も言い返せず俯くことしかできなかった。
 確かに一気に体温上がったけども!そういう事じゃなくて!!
 
「つーかそんなに照れることねェだろ、何回もしてんのによ」
 その言葉と同時に頭をわしゃわしゃっと撫で回されてしまい余計に恥ずかしくなる。
 そりゃ恋人同士だしそういうこともしてるけど、それとこれとは別問題だと思う!
 でも私のこと考えて色々行動してくれた結果がこれというその事実だけでなんだか胸がいっぱいになってしまうわけで。
 
「……ありがと……好き……結婚しよ……」
「ハハッ、まだ早ェだろ。それに俺様の方が好きだぜ!」
 屈託のない笑顔でそう返されてしまっては何も言えなくなってしまう。あんまりわしゃわしゃ撫でないでよ、なんて小言もぐっと飲み込んだ。
 うぅ、悔しい……でもそういうところが好きなんだよなぁ……あー本当にずるいや……と思いつつ諦めて大人しく撫でられる事にしたのだった。
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