ライドカメンズ
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「ああああ荒鬼くん!絶対手離さないでね!?私死んじゃう死んじゃううわわわわわわわ」
「うるせェよ落ち着けって、死ぬわけねェだろーが」
「いーやーー!!怖いぃぃ!!」
私もやってみようかな、と軽い気持ちでインラインスケートを始めてみたものの、立ち上がることすらまともにできず涙目になって叫ぶ私を彼は呆れた目で見つめている。
「そんな目で見ないでぇ……」
「あァ?お前が転んで怪我しねェように支えてやってんだろうが」
口調こそ乱暴だけど私の体を支えてくれている手はとても優しく暖かい。荒鬼くんは本当に頼りになる彼氏だなぁ……。
一方私はというと、生まれたての子鹿の如くぷるぷる震えて立ち上がることだけで精一杯だ。
こんな状態で滑ったらきっとすぐに転倒してしまうだろう。でも仕方ないじゃん初めてなんだから!
私があまりにも情けなく悲鳴を上げるものだから、彼は少し呆れながらも優しくアドバイスしてくれる。
とてもありがたいけど荒鬼くんのアドバイスはとても感覚的すぎていまいちよく分からない。あと擬音が多い。彼なりに色々考えてくれているのはわかるけども。
生粋の運動音痴である私は泣き言を言いながらやっとのことで立ち上がり、ふらふら前に進むことだけで精一杯なのに、それでも荒鬼くんは文句一つ言わずずっと支え続けてくれる。
「ごめんね全然上達しなくて……」
「ハッ、気にすんな。最初は誰だってそんなもんだ」
そう言ってニカッと笑う彼にきゅんとする。ほんと、彼のこういうところが好きなんだと実感する。
彼の笑顔に見惚れていると突然耳元で囁かれた。
「……それにクロの転びそうになった時のリアクション面白ェしな」
「もう!ひどいなぁ!」
冗談めかしたような言い方だけど、その声音からは優しさを感じる。一緒に頑張ろうなといい笑顔で言われてしまえばなんとしても上達するしかないじゃないか。全くずるいんだから。
しばらく練習したので少し休憩することにした。ベンチに腰掛けると荒鬼くんがペットボトルを差し出してくる。
「ありがと」
それを受け取りごくごくと音を立てて飲むと一気に生き返った感じがする。
「いやー難しいなぁ」
「まぁ慣れてくりゃ出来るようになるだろ」
「そうだといいけど……」
そんな会話をしながらぼーっと空を見上げる。
今日は天気が良くて日差しがちょっと強いけど、吹き抜ける風は涼しくて気持ちがいい。風に吹かれて舞う紅葉を見ながらぼんやりしていると荒鬼くんが不意に呟いた。
「なんかこういうのいいな」
ぽつりと呟かれた言葉に首を傾げると、彼が照れくさそうに頬を掻く。
「そうだねー……2人でこうやってのんびりするのも幸せかも」
そういえば今年の紅葉は特に綺麗に色づいているような気がする。季節ごとに移ろいゆく景色はいいよなぁ……。特に紅葉の時期になると街全体が鮮やかに彩られる様子は見ていて飽きない。
そんなことを考えていたら自然と笑みが溢れていたらしく、それに気づいた荒鬼くんがこちらを見ていた。慌てて表情を取り繕うが遅かったようだ。彼はニヤリと笑って言う。
「なんだよ、何かいいことでもあったのか?」
「なんでもなーい!もう一回やろ!」
誤魔化すように勢いよく立ち上がり、再び滑り出す。やっぱりまだ慣れなくてよろよろしてるけど、さっきよりは上手く動けている気がした。
悪戦苦闘しつつも、ようやく1周して戻ってきた私に荒鬼くんが手を差し伸べてくれる。その手を取るとしっかりと握ってくれて、安心すると同時にドキドキしてしまう。
「頑張ったじゃねェか。偉いぞ」
わしゃわしゃと頭を撫でられると嬉しくてたまらない気持ちになる。あとちょっと飼い犬になった気分。
「おい顔緩んでんぞ」
「荒鬼くんの前だとほっぺたゆるゆるになっちゃうんだよねぇ」
へらりと緩んだ頬を押さえているとさらに頭をわしゃわしゃされる。荒鬼くんの愛情表現だと思うと、髪が崩れるなんて文句を言う気にはなれなかった。
そうしてひとしきりじゃれ合った後、再び滑り始めた。先程よりは大分慣れてきたので最初の頃よりスムーズに進むことができるようになった。
「荒鬼くん見て見てー!」
手をぶんぶん振ってアピールすると彼も手を振り返してくれる。それが嬉しくてまた頬が緩んでしまう。
調子に乗ってスピードを上げようとしたその時、ずるっと足が滑ってしまい、そのまま思いっきり尻もちをつく形となった。
幸いにも痛みはないものの、恥ずかしい姿を見られてしまった恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じた。
「おい大丈夫か!?」
慌てて駆け寄ってくる荒鬼くんを見て申し訳なさが込み上げてくる。これ以上心配させまいと立ち上がろうとするが足に力が入らずなかなか立ち上がれない。その様子を見た荒鬼くんがしゃがみ込み目線を合わせてきた。
「怪我してねェか?」
心配そうな声音を聞いてますます申し訳なくなると同時に嬉しさもあることに我ながら現金だなと思う。
彼の言葉にこくこくと頷くとホッとした表情を見せた。
差し出された手を掴み立ち上がるとそのまま手を引かれて近くのベンチに座らせられる。
「ったく気をつけろよな」
「ごめんなさい……ちょっと調子に乗りました……」
しゅんとして俯く私にため息をつく荒鬼くんだったが次の瞬間ふっと口元を緩める。不思議に思って顔を上げると優しい眼差しと目が合った。
「ま、そこがお前の可愛いところなんだけどな」
「か、可愛い?」
突然の褒め言葉に動揺してしまい上手く言葉が出てこない。荒鬼くんは構わず続ける。
「おう、そういうとこも含めて全部好きだぜ」
さらっと言われてしまい更に体温が上がるのが分かる。顔どころか全身が熱い。
「ひぇぇイケメンだ……好き……」
思わず口から零れ出た言葉に自分でも驚く。いや待って口にするつもりじゃなかったんだけど?!
彼も予想外だったのか一瞬きょとんとした表情を見せたあと、少し照れくさそうに目を逸らされた。それから意を決したように口を開く。
「……急にどうしたよ」
「荒鬼くんが好きすぎて口から溢れたというかなんというか……うん、とにかく私も大好き!」
自分で言っておいて恥ずかしくなり、彼の胸元に顔を埋める。
「顔赤いから見ちゃだめ!」
ぐりぐりと頭を押し付けながらそう言うと頭上から笑い声が聞こえた気がした。
笑われていると思うと恥ずかしいけど、それ以上に幸せだから良しとしようかな。
「お前は本当に素直だよなァ」
「荒鬼くんがかっこいいのも大好きなのも本当のことだからいいでしょー」
そう言いながらもう一度抱きつくと今度は優しく抱きしめてくれた。そして頭を撫でてくれる手の心地良さに目を細めつつ考える。
結局私たちは似た者同士なのかもしれないな。お互いのことを想い合っていて、それをちゃんと言葉にできるところとかそっくりなのかも。
ふふっと笑みを零すと荒鬼くんが不思議そうな顔をする。
「何笑ってんだ?」
「んーん、なんでもないよ」
しばらく甘えて満足したので彼から離れると、ものすごく不満げな顔をされた。
その顔すら愛しくて胸がきゅうっと締め付けられるような感覚がする。
「教えろっつーの」
じとりと睨みながら強引に顔を近づけてくる荒鬼くんの顔を手で押し退けながら抵抗する。
「ちょっ、近い!近いってば」
「んだよ嫌なのか?」
いや別にそういうわけじゃないんだけどね?ただ心の準備的なものが必要なわけで。
そう答える間もなく唇が重なる。ちょっぴりカサついた感触と荒鬼くんの息遣いだけが鮮明に感じられた。
それはほんの数秒の出来事だったけど、私にとっては何時間も経ったように思えたほど濃密な時間だった。
名残惜しさを感じながらゆっくりと離れていく荒鬼くんを見つめる。
その熱っぽい視線に応えるかのように再び重ねられる唇。今度は触れるだけの軽いキスだったがそれでも充分すぎるほどの幸福感に包まれた。
荒鬼くんはいつもこうだ。自分がしたいと思ったら迷わず行動に移す。
そういうところが好きだけれど、ここ人前!自分から抱きついて散々甘えた私が言えたことじゃないかもしれないけど、流石に場所くらいは考えてほしい。
「もー!いくら周りに人がいないからって、そういうことしないの!」
頬を膨らませながら抗議するもどこ吹く風といった様子で聞き流されてしまう。まったくしょうがない人だ。そんなところも含めて好きだけど!
「ほらそろそろ帰るよ!暗くなってきたしね」
気がつけば空は既に夕焼け色に染まりつつあり、だいぶ肌寒くなっていた。全然気が付かなかったなぁ……。
「そうだな。あんまり遅くなったら危ねェしな」
そう言って歩き出そうとする荒鬼くんの腕を引く。
振り返った荒鬼くんは不思議そうな顔をしている。そんな彼に向かって手を差し出した。
「……手、繋いで帰ろ?」
彼は一瞬驚いたような顔を見せたあとニッと笑って私の手を取り歩き始めた。まるで逃さないと言うかのように強く握られた手に安堵を覚えると同時に嬉しくなる。
こうして彼と手を繋いで歩く時間が何よりも幸せだと感じるのだ。これからもずっと一緒にいたいなと思いながら帰路についたのだった。
「うるせェよ落ち着けって、死ぬわけねェだろーが」
「いーやーー!!怖いぃぃ!!」
私もやってみようかな、と軽い気持ちでインラインスケートを始めてみたものの、立ち上がることすらまともにできず涙目になって叫ぶ私を彼は呆れた目で見つめている。
「そんな目で見ないでぇ……」
「あァ?お前が転んで怪我しねェように支えてやってんだろうが」
口調こそ乱暴だけど私の体を支えてくれている手はとても優しく暖かい。荒鬼くんは本当に頼りになる彼氏だなぁ……。
一方私はというと、生まれたての子鹿の如くぷるぷる震えて立ち上がることだけで精一杯だ。
こんな状態で滑ったらきっとすぐに転倒してしまうだろう。でも仕方ないじゃん初めてなんだから!
私があまりにも情けなく悲鳴を上げるものだから、彼は少し呆れながらも優しくアドバイスしてくれる。
とてもありがたいけど荒鬼くんのアドバイスはとても感覚的すぎていまいちよく分からない。あと擬音が多い。彼なりに色々考えてくれているのはわかるけども。
生粋の運動音痴である私は泣き言を言いながらやっとのことで立ち上がり、ふらふら前に進むことだけで精一杯なのに、それでも荒鬼くんは文句一つ言わずずっと支え続けてくれる。
「ごめんね全然上達しなくて……」
「ハッ、気にすんな。最初は誰だってそんなもんだ」
そう言ってニカッと笑う彼にきゅんとする。ほんと、彼のこういうところが好きなんだと実感する。
彼の笑顔に見惚れていると突然耳元で囁かれた。
「……それにクロの転びそうになった時のリアクション面白ェしな」
「もう!ひどいなぁ!」
冗談めかしたような言い方だけど、その声音からは優しさを感じる。一緒に頑張ろうなといい笑顔で言われてしまえばなんとしても上達するしかないじゃないか。全くずるいんだから。
しばらく練習したので少し休憩することにした。ベンチに腰掛けると荒鬼くんがペットボトルを差し出してくる。
「ありがと」
それを受け取りごくごくと音を立てて飲むと一気に生き返った感じがする。
「いやー難しいなぁ」
「まぁ慣れてくりゃ出来るようになるだろ」
「そうだといいけど……」
そんな会話をしながらぼーっと空を見上げる。
今日は天気が良くて日差しがちょっと強いけど、吹き抜ける風は涼しくて気持ちがいい。風に吹かれて舞う紅葉を見ながらぼんやりしていると荒鬼くんが不意に呟いた。
「なんかこういうのいいな」
ぽつりと呟かれた言葉に首を傾げると、彼が照れくさそうに頬を掻く。
「そうだねー……2人でこうやってのんびりするのも幸せかも」
そういえば今年の紅葉は特に綺麗に色づいているような気がする。季節ごとに移ろいゆく景色はいいよなぁ……。特に紅葉の時期になると街全体が鮮やかに彩られる様子は見ていて飽きない。
そんなことを考えていたら自然と笑みが溢れていたらしく、それに気づいた荒鬼くんがこちらを見ていた。慌てて表情を取り繕うが遅かったようだ。彼はニヤリと笑って言う。
「なんだよ、何かいいことでもあったのか?」
「なんでもなーい!もう一回やろ!」
誤魔化すように勢いよく立ち上がり、再び滑り出す。やっぱりまだ慣れなくてよろよろしてるけど、さっきよりは上手く動けている気がした。
悪戦苦闘しつつも、ようやく1周して戻ってきた私に荒鬼くんが手を差し伸べてくれる。その手を取るとしっかりと握ってくれて、安心すると同時にドキドキしてしまう。
「頑張ったじゃねェか。偉いぞ」
わしゃわしゃと頭を撫でられると嬉しくてたまらない気持ちになる。あとちょっと飼い犬になった気分。
「おい顔緩んでんぞ」
「荒鬼くんの前だとほっぺたゆるゆるになっちゃうんだよねぇ」
へらりと緩んだ頬を押さえているとさらに頭をわしゃわしゃされる。荒鬼くんの愛情表現だと思うと、髪が崩れるなんて文句を言う気にはなれなかった。
そうしてひとしきりじゃれ合った後、再び滑り始めた。先程よりは大分慣れてきたので最初の頃よりスムーズに進むことができるようになった。
「荒鬼くん見て見てー!」
手をぶんぶん振ってアピールすると彼も手を振り返してくれる。それが嬉しくてまた頬が緩んでしまう。
調子に乗ってスピードを上げようとしたその時、ずるっと足が滑ってしまい、そのまま思いっきり尻もちをつく形となった。
幸いにも痛みはないものの、恥ずかしい姿を見られてしまった恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じた。
「おい大丈夫か!?」
慌てて駆け寄ってくる荒鬼くんを見て申し訳なさが込み上げてくる。これ以上心配させまいと立ち上がろうとするが足に力が入らずなかなか立ち上がれない。その様子を見た荒鬼くんがしゃがみ込み目線を合わせてきた。
「怪我してねェか?」
心配そうな声音を聞いてますます申し訳なくなると同時に嬉しさもあることに我ながら現金だなと思う。
彼の言葉にこくこくと頷くとホッとした表情を見せた。
差し出された手を掴み立ち上がるとそのまま手を引かれて近くのベンチに座らせられる。
「ったく気をつけろよな」
「ごめんなさい……ちょっと調子に乗りました……」
しゅんとして俯く私にため息をつく荒鬼くんだったが次の瞬間ふっと口元を緩める。不思議に思って顔を上げると優しい眼差しと目が合った。
「ま、そこがお前の可愛いところなんだけどな」
「か、可愛い?」
突然の褒め言葉に動揺してしまい上手く言葉が出てこない。荒鬼くんは構わず続ける。
「おう、そういうとこも含めて全部好きだぜ」
さらっと言われてしまい更に体温が上がるのが分かる。顔どころか全身が熱い。
「ひぇぇイケメンだ……好き……」
思わず口から零れ出た言葉に自分でも驚く。いや待って口にするつもりじゃなかったんだけど?!
彼も予想外だったのか一瞬きょとんとした表情を見せたあと、少し照れくさそうに目を逸らされた。それから意を決したように口を開く。
「……急にどうしたよ」
「荒鬼くんが好きすぎて口から溢れたというかなんというか……うん、とにかく私も大好き!」
自分で言っておいて恥ずかしくなり、彼の胸元に顔を埋める。
「顔赤いから見ちゃだめ!」
ぐりぐりと頭を押し付けながらそう言うと頭上から笑い声が聞こえた気がした。
笑われていると思うと恥ずかしいけど、それ以上に幸せだから良しとしようかな。
「お前は本当に素直だよなァ」
「荒鬼くんがかっこいいのも大好きなのも本当のことだからいいでしょー」
そう言いながらもう一度抱きつくと今度は優しく抱きしめてくれた。そして頭を撫でてくれる手の心地良さに目を細めつつ考える。
結局私たちは似た者同士なのかもしれないな。お互いのことを想い合っていて、それをちゃんと言葉にできるところとかそっくりなのかも。
ふふっと笑みを零すと荒鬼くんが不思議そうな顔をする。
「何笑ってんだ?」
「んーん、なんでもないよ」
しばらく甘えて満足したので彼から離れると、ものすごく不満げな顔をされた。
その顔すら愛しくて胸がきゅうっと締め付けられるような感覚がする。
「教えろっつーの」
じとりと睨みながら強引に顔を近づけてくる荒鬼くんの顔を手で押し退けながら抵抗する。
「ちょっ、近い!近いってば」
「んだよ嫌なのか?」
いや別にそういうわけじゃないんだけどね?ただ心の準備的なものが必要なわけで。
そう答える間もなく唇が重なる。ちょっぴりカサついた感触と荒鬼くんの息遣いだけが鮮明に感じられた。
それはほんの数秒の出来事だったけど、私にとっては何時間も経ったように思えたほど濃密な時間だった。
名残惜しさを感じながらゆっくりと離れていく荒鬼くんを見つめる。
その熱っぽい視線に応えるかのように再び重ねられる唇。今度は触れるだけの軽いキスだったがそれでも充分すぎるほどの幸福感に包まれた。
荒鬼くんはいつもこうだ。自分がしたいと思ったら迷わず行動に移す。
そういうところが好きだけれど、ここ人前!自分から抱きついて散々甘えた私が言えたことじゃないかもしれないけど、流石に場所くらいは考えてほしい。
「もー!いくら周りに人がいないからって、そういうことしないの!」
頬を膨らませながら抗議するもどこ吹く風といった様子で聞き流されてしまう。まったくしょうがない人だ。そんなところも含めて好きだけど!
「ほらそろそろ帰るよ!暗くなってきたしね」
気がつけば空は既に夕焼け色に染まりつつあり、だいぶ肌寒くなっていた。全然気が付かなかったなぁ……。
「そうだな。あんまり遅くなったら危ねェしな」
そう言って歩き出そうとする荒鬼くんの腕を引く。
振り返った荒鬼くんは不思議そうな顔をしている。そんな彼に向かって手を差し出した。
「……手、繋いで帰ろ?」
彼は一瞬驚いたような顔を見せたあとニッと笑って私の手を取り歩き始めた。まるで逃さないと言うかのように強く握られた手に安堵を覚えると同時に嬉しくなる。
こうして彼と手を繋いで歩く時間が何よりも幸せだと感じるのだ。これからもずっと一緒にいたいなと思いながら帰路についたのだった。
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