神室町に不穏な空気が流れ始めたのは
この頃から
関西の大きな組織近江連合が、東城会にちょっかい出し始めたんや
と真島さんが言ってた

と言っても、一般人の私には特に影響はなかったんだけど東城会内は今とてもごたついてるらしく、真島さんもなかなかに忙しいみたい

家にもあまり帰ってこないし
帰ってきた時は血濡れだったり、少し怪我をしてたり…
極道らしい毎日を送ってる

｢久美も気を付けなアカンで｣

と言われたのが一週間前
私も帰りは組の車で送ってもらったりもしてたんだけど、いよいよ近江のチンピラが神室町に現れ始めたって頃…

｢姐さん、迎えに来ました！｣
『あ、すいません、いつも』
｢親父、なかなか帰れなくてめっちゃストレスマックスですよ｣
『ずっと本部なんですか？』
｢ですね、組の方は俺らで守ってます｣
『その…大きな喧嘩とかになっちゃうんでしょうか…』
｢大丈夫ですよ！｣

真島さんに口止めされてるんだろうな…

『もし、真島さんに伝えられたら…怪我とか気を付けて下さいって…お願いします』
｢はい！伝えておきます！｣

家に着いて、シャワーを浴びて
ここんとこずっと一人で夕飯を食べてるから
なんか作るのも面倒で冷蔵庫の中にあるものでいっかと冷蔵庫を開けてみる

…

なんにもない！
はぁ…
コンビニ行くか

夏も通り過ぎ秋らしくなって来たこの夜は少し肌寒く、適当に上着を羽織ってすぐ近くのコンビニまで歩いていく

コンビニで、ビールとなんとなくおツマミ気分だったからそんなものを少し買って
また家に戻るために急ぎ足で歩く

横断歩道手前で止まると

｢おい｣

振り返ろうとすると口を塞がれ腕を後ろで拘束された
持ってた袋が落ちて、買った缶ビールが袋から出て転がっていく
あまりの速さに抵抗も出来ないまま
お腹を殴られた
私は簡単に攫われてしまった…