男が私の腕を引っ張って自分の横の椅子に座らせる

「よーく見とけ、お前の男の最後だ｣

数人の男たちが真島さん目掛けてバットを振り下ろす
鈍い音がする

『んんーー！！！』

涙が…涙で真島さんの姿がよく見えなくなる
やめて！お願い…誰か！助けて…

「真島ぁーー！目の前で大事なもん奪ってやるよ！！」

男が私の髪を掴んで上に向かせ首にナイフを当てる

「ソイツに…っ…手ぇ出すな！」
「フフ…ハハハハハッ！」

ツツーっと首に何か流れる感触とピリっとした痛みを感じた

瞬間真島さんの目の色が変わる

「ええ加減にせぇーよ」

低くそう言うと、クルっと片手でバク転をして
腰から出したドスで周りの数人を切る

「うわぁ〜！」

あまりの速さに誰一人動けず倒れていく
少し慌てた男の手が緩んだ隙に
立ち上がって走る
髪の毛が少し束で抜けたけど、そんなこと気にしてる場合じゃない

「久美っ！こっちや！」
『んー！』

その時、入り口のドアがものすごい勢いで
バリバリっと割れて車が突っ込んできた

中から出てきたのは
桐生さんと冴島さん！

「兄弟、一人で楽しそやないか」
「あん？少しくらい恵んでやってもエエで？兄弟」
「兄さん、久美の事は任せとけ、思う存分暴れていいぞ」
「ヒヒッ…久々やなぁ〜楽しませてもらおか？」

そう言いながら口元の血を手の甲で拭う
その眼は
ランランと輝いてた


私は桐生さんに抱き抱えられ
隅の方へ連れていかれる
口の布を外してくれた

「大丈夫か？」
『はい…何ともないです』

外した布を首の傷にあてがってくれた

真島さんと冴島さんの大暴れを
映画のワンシーンのように見ていた

「あれが嶋野の狂犬だ」
『す、凄い…』
「お前の恋人だろ」
『恐れ多いです』
「楽しそうだろ？」
『ホントに…』