｢あの…｣
｢久美ちゃんの友達は、名前なんて言うんや？｣
｢あ、サエです｣
｢サエちゃんな｣
｢で、さっきの話の続きや、久美ちゃん一体どんな目にあったんや｣
『いや…それは…』

何でそんなに興味津々なのよ！

『私の不幸話なんて、面白くもなんともないですよ？』
｢面白がって聞いとるんやない｣
『組長さんなんですよね？そっちの方が刺激的なお話し沢山ありそう』
｢ククッ、んなもん聞きたいんか？｣
『少なくとも、私の話よりは』
｢エエで、でも先ずはそっちからや｣

はぁ…

サエがため息を吐く

｢真島さん、久美の口からなんて言わせられませんよ｣
｢あん？｣
『サエ！』
｢最っ低な男の話です｣

サエが話し出した

｢ホントに少し前まで、久美はシェルターにいたんです｣
｢シェルター？｣
｢はい、ＤVから逃げるために｣
｢ほぉん｣

『……』

｢相手の男は…ただのＤV野郎じゃなかったんです、久美の家族にまで…｣

ガクガクと震え出す
あ、ヤバいかも…

｢おい、大丈夫か？｣
『は、はい…大丈夫です』
｢もうエエで、大体わかったわ｣
『…』
｢ホントに最近、やっと1人で出歩けるようになったんですよ、久美｣
｢その男、どないなったんや？｣
｢捕まりましたよ｣
｢ほぉーか｣
｢でも、大した罪にならなくてすぐ出てきます｣
｢やろな｣

あれから、私は先の未来を考えずに生きてきた
明日が自分に来るかも分からない状況で生きてたから

｢ほなら、こないなヤクザ怖くてしゃーないんやないか？｣
『え？』
｢暴力に一番近い存在やで？｣
｢それなんですよ！それなのに久美興味持っちゃって！｣
｢アカンな｣
『そ、そんなこと…』
｢この街にいたら嫌でも目につくけどやな〜興味持ったらアカン｣
『…』