｢おどれら、ここが何処のシマか分かってやっとんのか？｣
｢ああん？｣
｢…っ！や、やべぇよ！狂犬だ！｣
｢おい！ビビんなよ！｣
｢聞いとんのや、わかってやっとるんか？｣
｢うっせぇーんだよ！｣

そう叫ぶと男が飛びかかってくる
一歩前に踏み出すと同時に拳が男の顔面にめり込む
鈍い音と共に男が吹っ飛んだ

｢フンッ、威勢だけじゃそんなもんやろな｣
｢す、すいませんでした！｣
もう1人はそう言うととっとと仲間を置いて逃げた

｢お嬢ちゃん、大丈夫か？｣
｢は、はい…それよりお姉さんが…｣
｢ああ、コイツはワシの知り合いやから任せとけ｣
｢ほれ、はよ家に帰り｣
｢は、はい…あの、ありがとうございました｣
｢ワシやなくて、そこの姉ちゃんに言いや｣
｢あの、ありがとうございました！｣

『あ、いえ…』

女の子はペコっと頭を下げると
小走りに駆けて行った

｢大丈夫か？｣
『真島さん…』
｢何やってんお前｣
『…』

なんか、悔しくて俯いた
何も言葉が出ない

｢男二人に敵うわけないやろが｣
『…だって……』
｢お巡りとか呼べや｣

確かにそうだったな

｢ったく｣
『すいません…』

と言い、顔を上げる

｢…っ！殴られたんか？｣

私の頬を見て真島さんが
目を見開く

『あ、大したことないです…』
｢大したことないわけないやろ！赤くなっとるやん｣

真島さんの革手袋に包まれた大きな手が
私の頬に触れる

『…っ！』

咄嗟にその手を振り払ってしまった

｢っ…す、すまん…｣
『あっ、すいません！』
｢まだ、怖いんやろ？｣
『…』
｢なら、あんな事したらアカン｣
｢な？｣
『はい…』

｢んじゃな｣

真島さんは、私の横を通り過ぎて行く
咄嗟にその腕を掴んでいた