それからと言うもの、秋山さんはよくお店に来るようになった
その度にお誘いを断らなきゃいけなくて
面倒くさい…

「ねぇ、久美ちゃん頼むよぉ」
『私、夜のお仕事には興味無いので…』
「一度だけ、一回やって見たらさ」

なんでこんなに執拗いの？

「久美ちゃーん、来たでぇ」
『あ、いらっしゃいませ』

真島さんが冴島さんと来店
そっちへ行こうとすると、秋山さんに手を掴まれた

『え？』
「俺、諦め悪いから」
『あ、あの』

「あーん？なんや金貸しやないか」
「ああ、真島さん、どうも」

え？知り合い？

「お前もここ来とんのか」
「はい、花ちゃんも凄く気に入ってるんで」
「ほぉ〜」

な、なんかヤバそうな雰囲気…

「そらエエけどな、久美には手を出すなや？」
「あはは、そんな事しませんよ」
「フンッ、お前は好かんわ」
「久美、ビールな」
『は、はい』

チラッと秋山さんを見ると、私の事を見て目で訴えてる！
気付かないふり気付かないふり…

そして、真島さんのテーブルへビールを持って行く
「久美、アイツは気ぃ付けーや」
『え？』
「金貸しや」
『あー…はい』
「兄弟、そらなんでもお前の女には手を出さんやろ」
「やと思うけどな…なーんか匂うんやな〜俺の勘がそう言っとる」
『勘…ですか』
「兄弟は、勘だけで生きてきたよーなもんや」
『フフッ、なんかわかります』
「あー？笑うなや久美！俺の勘をナメるんやないで？」
「久美に惚れたんも俺の勘がお前となら幸せになれるぞ〜言うてたからや」
「なんやそら」
『あはは、ならその勘かなり頼りになりますね！』
「せやろ〜」

なんていつものように楽しく話しているのを
少し離れた席から見つめていた男も微笑んでいた

仕事が終わり、裏口から出ると
そこに秋山さんがいた

『秋山さん？』
「久美ちゃんお疲れ」
ヒラヒラと手を振る
『どうしたんですか？こんなとこで』
「久美ちゃんの事待ってたんだよ」
『え？』

何故？

「いやぁ〜最初はさホントに良い接客するなぁ〜って本気でうちの店に引き抜こうと思ってたんだけど…」
『それはでも…おことわ―』
「好きになっちゃった」
『へ？』
「店に通って、仕事する姿見てたら…なんかその笑顔に…ね」
『あ、あの…』

ズィっと秋山さんが近付く

「知ってるよもちろん、真島さんの恋人でしょ？」
『は、はい…』
「でもさ、こう言うのってなんか、駄目だ！って思ってても止められないもんじゃない？」
『さ、さぁ…』
「だから、堂々と宣言しようと思って」

いやいやいや…

『あの…困ります…』
「そんな困った顔も可愛いね」

その手が私の顎を持ち上げる

『あ、あの！やめてください！』
「ホントに…好きなんだ…」

秋山さんの顔が迫ってくる

『いやっ…！』

なんとか顔を背ける
すると、腰に手を回して引き寄せられる

『ちょ、やめてくださいっ！』
「はぁ…相手が真島さんじゃなきゃな…喧嘩じゃ勝てそうもないしね」
『…』

ギュッと抱きしめられた

『ちょっと！』

なんとか藻掻いて逃げようとするけど
やっぱり男の力には敵わない

耳元で
「俺のものに…したい」
『…っ！』
『や、やめっ…』

バンっ！
と、壁に押し付けられる
秋山さんの胸を押して抵抗する
ズいっとかおを近づけて

「そのうち、俺のものにするよ」
『なにをっ…』

顔を背けると、首筋に
チュッとリップ音をさせてキスをされた

『っっ！』
「じゃ、またね、久美ちゃん」

そう言うと離れて通りへ消えていった…

なんなのあれ…

めんどくさい事になったなぁ…
お客さんで来たら無下に出来ないし
はぁ…