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2ー(35)どうしょうもない女
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1時45分
あのオヤジの誘い断れたんやろか
ちょい強引にやり過ぎたな…
なんて思うとったら、店の扉が開く
『ママ、また明日ね』
店から出てきた久美の所へ向かおうと
凭れていた壁から離れた時
「久美ちゃん」
声をかけたのは、さっきのオヤジや
なんや、断っとらんかったんか?
「あ、山口さん…」
「久美ちゃん酷いよ〜なんにも予定ないのにどうして断ったの?」
『いえ、あの、予定あるんですよホントに』
「どんな予定?ね?男じゃないよね?」
『え?』
「今日もたくさん可愛がってあげるって言ったじゃん」
「さ、行こう?」
オヤジは、久美の腕を掴んで連れていこうとする
なんかめっちゃイラッと来た
「待てや」
『ッ!』
「な、なんだ?お前」
「これからソイツと楽しむ予定の【男】やで?」
「な、なに?」
『ちょッ!』
「久美ちゃん、どういう事?俺の他にもいたの?」
「オッサン、今日からコイツはワシのもんや。文句あんなら真島組まで顔出せや」
「ヒィっ!」
オッサンは、前のめりで逃げて行った
なんか、前にもこんな事したような…
『ちょっと!』
「なんや」
『お客さん一人失ったじゃん!』
「ああ?」
『結構しょっちゅう来てお金落としてくれるお客さんだったのに』
「なんや、そんな事かいな」
『そんな事って!』
「んなもん俺がもっと何倍も金落としたるわ」
『は?』
「身体使うてまで引き止めとくほどの客やないで?あんなゲスいオッサン」
『…ッ…なんで』
「見とったらわかるわ」
『…』
「さ、行くで?」
『ちょっ!』
久美の手を引いて、行きつけのBARに連れていく
カウンターに座ると
「いつもので?」
とマスターに聞かれた
「お前、何飲む?」
『え?あ、同じもので』
「畏まりました」
『あの…』
「ん?」
『なんで…』
「なんや、ムカついたからや」
『む…』
「あんなクソオヤジに…」
『ん?』
「せやから、あんなクソオヤジに勿体ないやろが」
『フッ…フフッ…アハハハ!』
「あ〜?」
『今更でしょ、話したじゃんアタシの過去』
「…」
『どうせ、もう汚れちゃってんだから』
「ちゃう」
『?』
「汚れてなんかないで」
『フンッ、知らないからそんな事言えんのよ』
『あの時見た、あの川と同じなの』
「どうしたら綺麗になるか言うたな」
『…』
「綺麗な水だけ入れてきゃええねん、汚いもん入れなきゃそのうち綺麗になるっちゅうもんや」
『…』
「ホンマは、綺麗にしたいんやろ?」
「もう、やめぇ…あんな事」
「ワシが客仰山連れてったるわ」
『…なんで』
俺はタバコに火をつける
思いっきり吸って吐き出した煙は
直ぐに広がって消える
「もっと自分のこと大切にせい」
『ヤクザに言われてもな…』
「そらそうやなフンッ」
久美もタバコに火をつける
『ふぅ…アタシに出来る事なんて、そんなことくらいしかないの、ママに恩返ししたいんだもん』
「アホか、ママがそんなことで喜ぶわけないやろ」
『じゃあ、どうすればいいのよ』
「あんな?命助けた方はな、助けた奴が幸せにしとれば嬉しんや」
『…幸せ?』
「せや、笑っとりゃええねん」
『そんなことで?』
「そんな事やあらへんで?ちゃんと心の底から笑うんや。笑えるか?」
『…』
「ま、いきなりは出来んやろ。今までが今までやからな」
「俺がコレからは笑わせたる」
『は?』
「笑わせんのは得意や」
『フフッ』
「せやからもうやめろや」
『わかったよ!』
『ママが、望んでないなら…』
『ねぇ…』
「あ?」
『なんでそんなに良くしてくれるの?ヤクザだよね?』
「あのなぁ、ヤクザやからってみんな同じやないで?これでもワシは女と子供には優しいんや」
『へぇ〜』
「信じとらんな、ま、これから見ててみヒヒッ」
それから、久美はずっとママの話をしとった
家族が居らん久美には
ママが家族みたいなもんなんやろな
俺にとっての親父や兄弟みたいなもんか…
親父はちと違うかいな
別に親父の話したくならんしな
ママの話をする時は
ええ顔して笑っとる
それでええんやで?