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31ー(65) ひとりの部屋
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たった一日の出来事にしては濃すぎる日やったなぁ
ま、命に関わるもんでもなかったし病院に居るっちゅうことで俺も安心したのか信じれんくらいグッスリ寝れたわ
けど、朝起きて毎朝コーヒーを入れに来る久美が居らんのはやっぱりなんか落ち着かんわな
今日は午後に久美の必要なもん持ってく事にして午前中に昨日放っぽった仕事を片付けに食パンをかじって西田に電話する
「あ!親父!姐さんは!?」
「おい、お前なぁ〜俺の事より久美のことか〜?」
「あ…いや、その心配で…」
「まあそりゃそうやな、久美なら大丈夫や、手術になって入院しとる」
「え!手術!?」
「慌てるんやない、手術して健康になるんやろが」
「あ、そうっすよね!」
「今日午後から病院行くんやけど急ぎの仕事あったかのぅ」
「一応昨日親父の机に揃えておきましたんで、目を通して貰えれば」
相変わらずコイツはなんで極道やっとるんかな…
まあ、俺が強引に引き込んだんやが…
「わかった、んなら今から行くわ」
「迎えに行きます」
「おお」
痛みで目が覚める
ああ…でも昨日の痛みよりも全然マシだな
そっか
病院なんだ
ふと、昨日の出来事を思い出していた
またゴロちゃんに心配かけちゃったな
救急車を呼ぶときのオロオロしたゴロちゃんを思い出して少し顔がニヤける
ごめん…
自分的にはこれは婦人科系の何かだなと数ヶ月前から思ってた
それなのに病院に行こうとしなかったアタシが全面的に悪い
いつかこんなことになるなんて簡単に想像できたのに
それにしても足のマッサージ器?早く外してほしい…
今日ゴロちゃん来てくれるかな
看護師さんが来て検温と血圧を測っていく
傷跡も問題ないみたい
ああ…お腹におへそから一直線の傷
腫瘍が大きかったため少し大きめの傷になったらしい
まあ、自分のせいだし
ゴロちゃんに見られるのちょっと嫌だな
朝食の後に看護師さんに連れられて歩いてトイレに行く
看護師さんは、昨日の今日でもうこんなに歩けるなんて凄いよと励ましてくれた
んじゃ、早く帰れるのかななんて少し期待
部屋の窓から外を見てみるとこの病院かなり大きな病院なんだな
何階なんだろ結構高い
向かいに見える建物に見覚えがあった
そう言えば昨日ゴロちゃんが言ってた気がする
前に一緒に来たとこの向かいの病院やでって
ここの駐車場に車停めたんや
って
確かにあの坂道覚えてる
携帯を見てみるとやっぱり充電が無くなってる
何時頃に来るのかな〜
なんにもやることが無い、当たり前だけど
痛み止めを飲んでるからベッドに横になるとスーッと眠りに入った
仕事を片付けて病院へ向かう
たまたま兄弟が事務所に来て久美の話をしたら俺も行くわって着いてきよった
「そないになるまで我慢しとったんか久美は」
「ああ、病院嫌いも困ったもんや」
「んでもお前が言えば行ったんやないか?」
「せやな〜…あんな事やこんなことがありすぎてホンマちゃんと見とらんかった」
「ああ…確かにな」
「大したことなくて良かったやないか」
「ああ、ホンマにな」
車の中でそんな事を話しながらそれでも大丈夫やろか、なんて心配もしとった
顔を見るまではやっぱり安心出来ん
病院について久美の病室へ向かうエレベーターの中で昨日の執刀医にバッタリ会った
サラッと話ただけやが、腫瘍が大きかった事で悪性のパーセンテージは上がると言われた
急に怖くなって俯いていると兄弟に背中をバンッと叩かれる
「イッタ〜!」
「んな顔するんやない、久美が心配するやろ」
「わぁーっとる!」
「まだ検査結果が出たわけやない!シャキッとせぇ!」
ゴニョゴニョ言っとる俺に兄弟が喝を入れる
やっぱり持つべきものは兄弟やな〜
看護師に久美を呼んでもらってラウンジで話せる事になった
「あ!?もう歩けんのか!?」
覚束ないが点滴をしたまま棒をコロコロ転がし歩いてきた
『ゴローちゃん!冴島さん!もう歩けるんだよ〜凄いでしょ!』
昨日の事が嘘のように笑顔の久美だった
「痛みは?」
『うん、お腹掻っ捌いた傷は痛いけど昨日のに比べりゃなんてことないわヘヘッ』
「なんや、思うたより元気やな、真島が死んだようになっとったからどないかと心配したわ」
『死んだように?』
「ついそこまでくらーい顔しとったわ」
「余計なこと言うんやない!」
『ごめんね心配かけて…』
「ええ、ええ!元気になったんならそれが一番や」
『いや〜ホントどうなることかと』
「こっちのセリフや!」
『アハハ…そうだよね』
面会時間は20分と言われとったが
なんだかんだ1時間近く話し込んでしもうた
帰るときには少し寂しそうな顔をしとったがまた明日も来るでと言ったらパッと笑顔になった
ホンマかわええな
帰りの車の中で兄弟と
「こんな事でもないと大切さに気付かん事もある」
お互いにそんな事を話して兄弟も何やら遠くを見つめてた
部屋に帰ってきても静かすぎる
久美と住む前の一人の時のほうが長かったのに
すっかり二人の生活にどっぷりやったんやな
久美も病室で一人の時間つまらんやろな
ひとりの時って何してたんやろ…
早よ帰ってこんかな
それから一週間俺は病院に毎日久美の顔を見に行く
日に日に元気になっていくアイツを見れることが何より楽しみやった
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