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21ー(54)寂しい夜と涙
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「泣いてたの?」
『フフッ…おにぎりがあまりにも美味しくて』
「そんなに美味しいおにぎり僕にも一つ頂戴」
『良いですよ〜はいッ』
それをジーッと見つめた三島さんは
大きな口を開けてガブリと齧り付いた
普段の印象は、お上品なオジサンという感じだったから、そんな行動に少しビックリした
『アハハ、そんな無邪気に食べるんだ』
「おにぎりは、お上品に食べるものじゃないでしょ?」
『確かに!』
「うん、本当、泣きたくなるほど美味い!」
『おにぎり褒められてもなぁ〜』
「久美ちゃんの手料理が毎日食べられる人が羨ましいよ」
『フフッ』
今さっきの光景が浮かんでしまって
笑った顔が上手くできなかった
おにぎりを食べ終わって
「さ、送っていくよ?車待たせてるから」
『あ、大丈夫!歩いても帰れる所だし』
「でも、この時間の神室町は危ないよ?」
『長いことここで働いてるし、ホント大丈夫。ありがとう』
立ち上がって小さなバックにゴミを突っ込む
一緒に持ってきたお茶を一口飲んで
『じゃあ、またお店に来てくださいね』
「…」
何も答えてくれない三島さんにハテナ?となりながらも歩きだそうとした時
突然腕を捕まれグイッと引かれた
そのまま三島さんの体にスッポリと収まってしまう
何が何だかわからずとりあえず体制を直そうと
三島さんの腕に捕まって体を離した
すると、直ぐに腰に手が回されまたその距離を縮められた
『あ、あのぉ…』
「どうして泣いてたの?」
強く抱きしめられながら低い声で聞かれた
『あの、だから…おにぎりが⸺』
言葉は最後まで言えず
顎を掴まれて唇が塞がれた
『んんッ!!』
ドンッと直ぐにその胸を押して離れた
「ごめんねこんな事して…だけど…そんな顔してる久美ちゃん放っておけなくて」
『…』
「友達としてでもいいから、何か辛いことがあったなら愚痴って欲しいな」
『な、何でもないので…ホントに』
三島さんはグッと何かを耐えたような顔をした後、ニコッと笑った
「なら、今度何かあったら話してね」
『は、はい…』
『それじゃ…』
何だかよくわからない感情のまま少し早足で公園を出た
そのまま家に帰るのもなんとなく落ち着かなくて、コンビニによってお酒を買った
家に帰ってきたらシーンとした部屋にとてつもなく淋しさが込み上げた
久しぶりに感じた温もりがゴローちゃんじゃなかった事や、久しぶりに聞いた声が他の女の人に向けられてたものだったり…
袋からお酒を出すと、床に座ったまま飲んだ
わかってる
ゴローちゃんは、アタシ以外にそんな事をする人じゃない
だから、疑うなんてそれこそが裏切りになる
アタシのことも考えて忙しい毎日を頑張ってくれてる
寂しいなんて…言えない
言えない事が辛い
それに気付いたら、更に涙が溢れ出る
アタシにとっては久しぶりに見たゴローちゃんの顔
会いたくて柄にもないことしたから、こんな事になっちゃった
いつもみたいに平気な顔で過ごせばいいのに
カバンから携帯を出してみた
着信もメールのお知らせもないその二人がいい笑顔で笑う壁紙に涙がポタリポタリと落ちた