肉をひたすら焼く久美が兄弟に

『冴島さん』
「なんや？」
『ゴロちゃん、若い時ってどんなだったの？』
「なんでそんな事兄弟に聞くんや、俺に聞けばええやろ」
『だって、自分のいい事しか言わないじゃん』
「バレとるな」
「チッ」

「真島はな…喧嘩だけは一流やったわ｣

『だけは？』
「他のことはなーんも出来ん」
『なんも！？』
「なんもや」

「んな事ないやろ〜」
『喧嘩以外に得意なことは？』
「ん？…んん…ん〜｣
「ない」
『ブッ！』

『……ゴロちゃん人の事幸せに出来るじゃん』

「…」
「なんや、惚気か？」
『へへ、一番凄いことだと思うけどなぁ〜』
「せやな」
「やめやめぇ！」
『照れてる〜』
「お前〜喧嘩売っとんのか？」
『フフッ』

俺が久美の頭をワシャワシャとぐしゃぐしゃにする
そうすると、撫でられた犬みたいに嬉しそうな顔をする

「お前のそんな顔初めて見たわ」
「あ？」
「お前が、そんな目で人を見れるなんて知らんかったわ」
「な、何言っとんのや兄弟」
「お前も人を守る強さ身につけおったな…｣

「兄弟…」

『ゴロちゃんは、こんな…どうしようもないアタシの事大事にしてくれて、幸せを感じさせてくれて…』
『ずっと…恵まれなかったけど、だから本物の人と会えたんだと思う…普通じゃ見えないところまで見てくれたから…』

乱れた髪を手ぐしで直しながら久美がそんな事を言った

「兄弟は、そう言う奴や」
「ヒヒッ、特に久美にはな！」