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4−(37)確信
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ここんとこ嶋野の親父の言いつけで
カチコミ行ったりしとったから
久美の店に顔を出しとらんかった
「女に入れ込んでサボるんやないで?」
チッ…何でもお見通しってわけか
文句言われんのも腹立つから、暫くは大人しくヤクザやっとった
そんな時に、信じられん事が起こった
桐生ちゃんが、親殺して捕まった
んなわけあるか
アイツが殺しなんて…しかも自分の組の親を
でも、自分が殺った言うとるらしい
そうなったらもう決まりやな…
真相がどうであれ、アイツが殺った言うとるそれが真実になるわ
それからというもの、俺は喧嘩に飢えとった
やっぱり桐生ちゃんとやり合うのが一番楽しかったのぅ
『真島さん?』
振り向くと久美や
『こんな所で何してるの?フフッ』
「あ〜たまに一人になりたい時に来るんや」
『あ、そうなんだ。じゃ、お邪魔だね』
「ええで、お前は特別に」
『え〜?ホント?』
「お前もココ、特別な場所やろ?」
そう、ここはRebirthのビルの屋上
俺は前から時々ここで時間を潰す事があった
だから、もしかしたら久美が死のうとした時、止めとったんは俺だったのかもしれんな
『じゃあ…お言葉に甘えて』
「お前も時々来るんか?」
『うん、ここから見た景色…なんかたまに見たくなるの』
「飛ぶんやないで?」
『フフッ、わかってる』
『なんかあったの?』
「まあな」
『色々あるよねぇ、生きてると』
「せやな」
フワッと風が吹いた
風上にいた久美の香りが俺の所に届く
「ッッ!」
急に身体中の血が熱うなって、心臓が脈打つ
な、なんや?
『幸せって誰にでも平等に来るもんなのかなぁ…』
手すりに凭れ、風に髪がなびいた久美の姿を見てたらもう一人の影と重なった
そこは、こんな汚い街のビルの屋上なんかじゃなく、青く澄んだ空と海…
「久美…」
何度も何度も呼んだことのある名前
振り向いて、俺の好きな笑顔を見せてくれる
俺は、後ろから久美を抱きしめとった
『ま、真島さん!?』
「黙っとれ」
『ちょっ…』
久美の肩口に顔を埋め記憶があるその香りを吸い込む
振り向いた久美の唇を思わず奪った
『んッ…』
そのまま、俺の方を向かせて腰を引き寄せて
もっと深く口付ける
その唇は…探しとった唇やと確信した
『ん…はぁ…な、なに!?』
「お前…俺のもんやったわ」
『は!?』
「ずっと前からそうやった」
『何言ってんの?』
「お前は、忘れてしまったんか…」
『な、何?』
「まあええ、やっと見つけたわ!」
『全然良くないんだけど!』
「あ?」
『突然キスしたり、俺のもんだとか…なんなの?』
「ええよ、そのうちわかることやから」
そう言って、俺はその場を後にした
そっか…久美だ
蒼天堀で会ったのも、ここで偶然見つけたんも
アイツだったからや
キスした瞬間に、自分の中の空洞になっとった部分が埋まるような感覚があった
俺の勘が間違いないと言っとる
「やっと見つけたで…」
俺は空を見上げ、まだ屋上に居るであろう久美へ向けて呟いた
その時、屋上に置いていかれた久美は
思い出していた
あの時、ココから飛ぼうと決めたのは
ココに居た男に魅せられていたからだ
そう
神室町で、その姿はよく見ることがあった
喧嘩してる所もよく見た
美しく舞うように喧嘩をする
自分もあんなふうになれたら…
そしたら人生変わるんじゃないか
生まれ変わりがあるなら、今度はあんなふうに自信満々で生きたい
だから、あの人がよく来ていたココで飛ぼうと決めてた
それに、下の店の名前がRebirthだもんね
あの人は、あんなに堂々と見えるのに
ココに居る時は寂しそうだった
明と暗の両方をキチンと受け入れてるその背中を見て何故か涙が止まらなかった
『でも…蒼天堀のあの人が真島さんだったなんてね…』
『ホントは、あなたに…止めて欲しかったのかな…』
屋上から見下ろした先に、歩いているその男を
タバコの煙で隠してさっき触れた唇を
指でなぞってみた